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KのーとinS  作者: 炯斗
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--/形成の地で

「大まかに世界を分類した時、イェソドからゲブラー・ケセド辺りまでをイェッツェラーと呼ぶ」

「「「ふーん」」」

ホドに向かう道すがら、三人はシールの地理を受講していた。Kとaはともかく、何故グールまで初耳の顔をしているのか。

「ホド─ティフェレト間には世界最大の湿地帯がある。イェッツェラー大湿地帯は希少生物の宝庫だぞ」

「へー。何が居んの?」

そんな他愛もない会話を繰り返して進む内、Kは何かを感じて立ち止まり空を仰いだ。aたちは歩を止めたKに気付かず進んでいく。

「無事だったようだな」

「タクリタン!」

ふんわりと舞い降りたのはタクリタンだった。

「生きていて何より。オチガミに遭ったと聞いた」

「うん。でもオチガミ自体はそう…」

一番苦労させられたのは魔徒と化したaだった。そもそも無敵と称されるような人間が暴走したら手に負える訳がない。よく無事だったと思う。殴られた背中はまだ痛い。青痣もばっちり残っている。

それを聞いてタクリタンは笑った。彼の笑みはいつも微笑だ。ふんわりしていて綺麗だと思う。笑顔の綺麗な人は羨ましい。

「とにかく無事で何よりだ。こんな処で消えられてはつまらないからな」

「はは、そりゃ頑張るよ」

タクリタンはすっと目を細めた。

「今後もおそらく命にかかわるような困難が襲うだろう。それでも、テマーネを続けるか?」

「度合いにもよるけど、多分続ける」

本気で信じているワケではないが、一応、今の処唯一の『帰還への希望』だ。

「そうか。…幸い、イェッツェラーは水属性だ」

「…? どういう意味?」

「そのうち解る」

タクリタンはそれ以上説明する気はないようだ。仕方ないので、別の話題を振る。

「そういや、スクラグスとはどういう関係?」

「ラグ?」

愛称で呼び合う仲だった。

「あっちもタクちゃんって呼んでたし、親しそうだね?」

「ぁあ、スクラグスとは同期だからな」

「同期って…」

「人間社会では何と言うのか…そうだな、『幼馴染』、とかいう言葉があるだろう、確か」

「なるほど、ふーん」

カミサマにも幼い時期などあるのだろうか。付き合いが長い、という事だろう。

「すっごい仲良さそうだね」

「そうか? …そう言えば昔、『いつも一緒に居る』と言われた事があった」

ぼんやりと呟くカミサマ。

「自覚無しと」

「感覚が違うからな」

そういうものだろうか。

「さて──迎えが来たようだな」

タクリタンはチラッとKの背後へ目を遣った。

「おーい、Kー?」

遠くからaが走ってくる。そう言えば静かだと思ったが、本気で置いていかれていたとは。

視線を戻すと、タクリタンは既に消えていた。

「K、急に消えてるから驚いた。どうかした?」

「ううん、タクちゃんがいたから」

シールとグールの影はもう随分と遠くに見える。

「あんなトコまで行っちゃったの? ちょっと気付くの遅過ぎじゃない?」

aを引掴んで、イノクンで一気に追いついた。


「あ、待ってよ三人とも! ここらでお昼にしてから行こう。折角いい天気だしいい緑だし」

そんなこんなでお昼時。

ネツァクで買ってきた大きな黒パンを皆で齧る。因みにグールはパンは食べられないらしいので、自力で調達して貰った。しかし…生なんですか、グールちゃん。まあいいとして。

「シール? パンの丸齧りができないとか言わないよね?」

何故かシールはじっとパンを見つめており、齧る気配がない。

「言うか。そうじゃない」

ならば何故そうも不服そうにしているのか。

「…黒パンだな、と」

「はあ?」

「黒パンですよ?」

呟かれた一言が余りにも不可解で、aとふたり間抜けな声を出してしまった。グールは一人我関せずでうさこを齧っている。シールはじっとパンを見続けている。なんとなく解った気がした。

「シール、黒パン苦手か」

「え」

「…あんまり得意じゃないな」

目を逸らしながら答えるシール。それを信じ難そうに眺めるa。

「何か違う?」

「違う」

何でも好き嫌いなく食べられるaには、嫌いな物へのあの敏感さが理解出来ないのかも知れない。

「K平気だけど。確かに独特な感じあるんじゃない? でもネツァクのパン屋に並んでたの大抵黒かったよ」

「確かに。黒くなくても結局ライ麦パンだったしね」

しかしバラといい麦といい寒い処のイメージがある。見える範囲でネツァクに自生していた植物たちはちゃんと南国イメージに合うものばかりだった。こうした小さな違和感が『異世界感』を忘れずにいさせてくれる。

「じゃ、こっちにしなよ。黒くないよ。イェソドで買ったのの残りだけど」

「そうさせて貰う」

シールは素直に黒パンを放棄した。パン自体食べられないグールは本当にどうでも良さそうにうさこを平らげた。

「はい」

食事を終えたグールに、aが見事なタイミングでお茶を差し出す。

「サンキュ」

「…何、そこの永年連れ添った夫婦みたいな遣り取り」

「ぶ!」

とても気に入らない。咽せたaの背を呆れ顔で叩くグールとか本当に気に入らない。

「なんかむかつくー!」

「こらK! 食事中に暴れんな!」

「にゃーっ、だってaさんがぁー!」

暴れるKと諌めるa。傍観するシールと我関せずのグール。

今日も平和に過ぎていく気がした。


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