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KのーとinS  作者: 炯斗
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10/23

4/栄光の国で

何故こんな事になっているのか。

とにかくグールとふたり並んで長閑な街道を歩いている。ふたりきり…という訳でもないが、aもシールもいないのだ。

「あーもー!! お腹空いたー!」

「喧し、土でも喰っとけ!」

「土なんか食べたらジャリジャリして気持ち悪いでしょ!!」

自分から言っておいて「そんな問題か」と突っ込みを入れるグール。

現在a・シール組と逸れ、グールとふたりでホド国内を探索中だ。なかなかに最悪な組み合わせだと思う。さっきからずっと剣呑でスッキリしない空気が流れている。しかもシールと離れたKたちはお金を持っていない。

「はよあいつら探すぞ。ったく時越えしくじりやがって」

グールはそう言って大きく溜息を吐いた。

「できないのに文句言うなよ! 大体それじゃあKの技術不足みたいじゃん。アレはMP切れなの!」

結局自らのレベル不足を示している。

何故こんな事になっているのかというと、時越えに失敗して皆バラバラに弾き飛ばされてしまったからだ。生きていて良かったレベルである。しかしaたちの方はどうなっているか解らない。事故直後から連絡が付かなくなっていた。

目的地はターミナルなのだからそこに向かえば自ずと会える筈だ。という事でターミナルを目指しているのだが、問題がもうひとつ。

「そんな事より、何処なんココ!?」

「おまけに人身事故!!」

「やめてよ轢いたみたいな!!」

よよよと泣き崩れるグール。なんと一般人を巻き込んでしまったのだ。

「あーマジ最悪。アタシが何した言うん…」

顔は可愛いが地味な印象のお姉さんで、得体の知れない気品がある。左頬に薄く小さな模様があり、それがこの地方のおしゃれなのかどうかは判断しかねる。

「お姉さんごめん、とりあえず名前と住所教えて」

「家はテラメルコや。リンカの辺り。名前なんか教えられへん。好きに呼んだら」

「じゃあグーラーで」

「グーラー」は「グール」の女性変化だ。女性型の人喰を指す。特徴的な西言葉と、頬の模様。安易に同族かな、という判断だ。

「テラメルコ…ここ、カームベルトやろ?」

グーラーの出した地名と思しき単語にグールが反応を返す。

「さあ。Kにはさっぱり」

住んでいる土地の事も覚えられなかったのに、来た事もない世界の地理が解る訳がない。自慢じゃないがKは方向音痴だ。地図も読めない女だぞ、と開き直る。

「アンタもツェク・マーナ?」

グールの言葉《イントネーション》に反応してグーラーが顔を上げる。グールが肯くと暫し黙ってから

「最悪」

と、凄い形相で睨まれた。

「ぅ…」

グールもたじろいでいる。睨まれた理由は解らないが、一つ解った事もある。『も』と言ったのだから、やはりお姉さんも人喰いなのだろう。

「まぁそれで。Kたちホドの首都に用があるから…え~と」

グールに目を遣る。

「ホランダラット」

「そう」

そう、と言っておいてなんだが、記憶にない。ホドの首都はホランダラットか。記憶している内に叫びに近い声が飛んだ。

「何やて!?」

飛ぶように詰め寄ってきて、一気に捲くし立てる。

「真逆やんかテラメルコと! いきなり知らん土地に飛ばされて今度はホランダラットやて!? 何なん!? もう! はよ帰して!」

西言葉の迫力というか勢いに飲まれそうになる。

「別について来いとは…帰ったら?」

「無茶言うなぁ!? 二五〇〇㎞歩いて帰れて!?」

えーっと、徒歩だと時速四キロ。二五〇〇÷四は、六二五。六二五÷二四は二六…二七日。つまり歩いたら一ヶ月以上は優に掛かる計算だ。

「しょーがないなー。じゃ、用がすんだら送ってくからさー」

とはいえKに土地感はない。グールを見上げる。

「首都までどんくらい?」

「あーっと、ここがカームベルトやろ? …二五〇〇㎞?」

「えーっと、するとー、二半で飛んで-大体…一時間か」

ぶつぶつ言いながら地面に計算を書き込む。マッハ二.五で飛べば二五〇〇キロは大体一時間で行ける。フェニックス君の羽の大きさとフォルムを計算してみる。これならまあ大丈夫だろう。収まる収まる。千切れない千切れない。

「よし、行くぞっ」

「えっ!?」

急に立ち上がったKとその言葉に驚いてKを見たグーラーは、今度はフェニックスくんの姿に釘付けになる。

「乗って」

「「え?」」

グーラーは完全に困惑して、グールは不吉な予感でいっぱいな顔をして、フェニックス君によじり登る。ふたりがちゃんと乗ったのを確認して、Kはフェニックス君の背を叩いた。

「「えっ」」

ぎゃ─────!!

激しい雄叫びを残してボクらは風になった。


「着いた! ちょっと暖かくなったね」

ネツァクが暑い所だっただけに「涼しくなった」といった方が正しい気はする。振り返るとふたりは蒼い顔でよろめいている。一時間の高速空の旅はどうやら不評だったようだ。Kも本来乗物酔いはし易い方だが、操縦者は平気というヤツだろうか。

「何よ、今の」

吐き気を噛み殺したような顔で天を仰ぐグーラー。

「本ッ当気持ち悪い…一時間も…」

座り込んでしまった。その後ろでは、何やら街の様子が騒がしい。明らかに上級兵の格好をした人がたくさんいる。犯罪者でも探しているのだろうか。

いらっしゃったぞ、なんて聞こえたから、もしかするとお偉いさんの来訪に備えて街を整備でもしていたのかも知れない。

「…何アレ」

「さぁ。どっかのお嬢様でも逃げたかね?」

騒動に巻き込まれるとまた文句を言われるので、なるべく関わらないようにしないといけない。適当に答えて首を回すと、近くに居たお婆さんが近寄ってきた。

「あれは公爵家の連中だよ。どうやら縁談の決まったお姫様が逃げちまったんだとよ」

「へぇ」

予想はどうやら当たってしまったようだ。女の人は幾つになっても噂話が好きなもの。グーラーもそういった話はキライじゃないのか、楽しそうに応じた。

「そりゃあ相手は面目丸潰れやなぁ!」

欠片も思ってなさそうに可哀想にと付け足した。

Kは近付いてくる人に気付いた。兵の一人に見える。近付いてきていた男はグーラーの後ろで立ち止まる。あわわ。

「お解かりでしたら速やかに城へお帰り頂きたいものです。ザグサス様がお待ちになられている」

背後から声を掛けられて背筋が跳ねるグーラー。隙を突いてお婆さんは逃げていた。

「は…」

掛けられた言葉の意味が理解出来ずにいるグーラー。騒動の予感にKの胸は躍る。

漸く頭の働き始めたグーラーが叫んだ。

「はあ──!? 公爵令嬢──ッ!?」

大口を開けて自分を指差す。男は容赦なく彼女の手を掴んだ。

「付き合っている暇はありません。さあ」

「っ! ちょっと!! 人違いだっつの!!」

あ、それはよくない。

「ちょ、いたいっ」

「女の子に無理強いはいかんねー」

止めに入ろうとしたKより、意外にもグールが動く方が早かった。グールが一払いで男の手を解くと、グーラーはすぐにKたちの後ろに隠れた。恐かったらしい。

男はこちらへ厳しい視線を投げかけたが、グーラーの赤くなった手首に眼を移すと斜め下を向いて謝った。

「…申し訳ありません」

だがすぐに顔を上げてグーラーに向き直った。

「しかし今は時間がない。とにかく城へ」

「だからぁ~、アタシちゃうって…んんっ、人違いですって」

ホーマサス社会でツェク・マーナとバラすのは危険だ。ホーマサスにとってツェク・マーナは人喰い──恐ろしい敵でしかない。街中に虎が現れたら取り囲まれて討たれてしまう。その辺りを考慮して言葉を直そうとしたのだろうが、相手は何せグーラーを公爵令嬢だと思い込んでいる。

「ツェク・マーナの言葉など何処で覚えていらっしゃった。お止めなさい、人目がある」

「あーも~この際や! せやからアタシはツェク・マーナやねんッ。公主ちゃうの!!」

「ですから、冗談に付き合っている時間はない」

「きゃーっ! やっ、ちょっと~──ッ」

がしっと肩に担がれて強制連行されていくグーラー。人目が凄い事になっている。

「あー、面白くなりそうだねー。でもKたちはaさん探さないとだから…」

「ああ安心した。おまえのコトやからついてくとか言い出すかと思たわ」

Kは口を曲げる。本当は言いたかった。

その間にも男はグーラーを担いですたすたと行ってしまう。グーラーは涙目でKを睨んでいる。

「あんたら、責任とってくれる言うたやろ~」

恨みがましい目を向けられている。

「や、でも、人探し…」

「………」

無言のプレッシャーが凄い。グールと目を合わせる。こちらもすごい眼で見ている。

Kは逡巡の後、肩を落とした。

「解った解った、一応着いては行ってみるけど!」

何が出来るかは解らない。

盛大な溜め息を吐いたグールには気付かないフリをした。


◇◇◇


「ぎゃ──っ、何コレ──!!」

そんな叫び声でKとグールは公主サマのお部屋に召喚された。

「何だい大きな声で」

城に上がるに際し、グーラーの粘り勝ちで公主サマの側に居られる事になったKたちだったが、流石にTシャツジーパンは咎められてしまった。堅苦しい格好にお化粧までさせられている。Kは臙脂のドレス。ジャラジャラした首飾りにヒールの高い靴。何より化粧が非常に気持ちが悪い。顔が擦りたくて仕方がない。

グールは細かい刺繍の入ったサーコートを着せられている。美形はなんでも似合って羨ましい。格別に高そうな衣装だが、用意をしてくれた女中さんたちはだいぶ興奮気味だった。なんやかんやと盛り上がる内にこうなってしまっていた。片やグールは、女性陣に囲まれて嬉しいかと思いきや大変不機嫌だった。

今はグーラーの濁点付きの悲鳴に溜息を吐いていた。

何を驚く事があったのか、グーラーは涙目に近い。曰く。

「アタ、アタシちゃう、コレッ。何が起こっとるん!?」

鏡を指して青褪めている。

「大丈夫大丈夫、似合ってるよ」

「おー似合うてるー」

双方やる気なく持ち上げる。だが彼女が言いたいのはそういう事ではないらしい。

「ありがとっ、でもそやなくてな! この体、アタシのちゃうねん!」

「「は?」」

落ち着いて聞いてみると、こういう事だ。

まず紋が違う。位置は同じだが、模様が違うと言う。ツェク・マーナである徴ともいえる痣。男性は硬角紋といって少し固くなった半立体的な物だが、女性のそれは薄っすらとしたただの痣なのだそうな。紋が出る場所は個体により異なるらしい。

服も違った。巻き込まれた前後の記憶が曖昧なので思い違いかも知れないと口にはしなかったが、クリーム色のワンピースを着ていた筈が何時の間にか藤色になっていたと。

それに何より顔や体のバランスなどが違う。

転移事故に巻き込まれ動転していたとはいえ、気付かないものだろうか。

「そもそもその体からは」

ちょっと呆れていた処にグールが言った。

「人を喰っとる匂いがせぇへん。人喰わんのやったらそらただのホーマサスや」

ただの、というには美形が過ぎる。そういえば、グーラーは人喰にしては地味な造りだ。体が別物だから、という事なのだろうか。

「でも…この体にも紋あんで? 人喰うてへんて…」

確かに、紋があるのだからその体もツェク・マーナなのだろう。それとも、この国の風習でたまたま頬に入れ墨でも掘っているのか。

などと考えていると、グーラーにお迎えが来た。今から婚約者との逢瀬のお時間らしい。グーラーは舌打ちして「適当にぶっ壊してきてやる」と呟いた。その呟きまでは聞こえなかったようだが、即座にお迎えの人から叱咤が飛んだ。公主サマ(偽)はそれにまた暴言で返すと、イライラと大股で部屋を出て行った。


「ねーねーグール。ホントにホラン…えっとー…にあんの?」

卓上の不可思議なお菓子を楊枝で突付きながら尋ねる。ターミナルの所在地の話だ。

流石に見合いにまで着いてはいけないのでココでお留守番中なのである。

蜜柑似の果物を口に放り込みながらグールは答えた。

「ホランダラット。あの赤いのが言っとったで、『首都』やて」

「aが何で知ってんの?」

顔を上げる。グールは構わず蜜柑似の果物の筋を取っている。

「さあ? あいつに聞いたんちゃう」

つついていた餅に似た菓子は歯に詰まる。楊枝の使い道が変わる。

「ふ~ん…でもさぁ、さっき違う名前聞いた気がするんだけどな。しかも聞いた事あるような」

何だったか、確か酒の神にも似た感じの。

「ほら~、」

「はあー?」

グールにも考えさせようと楊枝を向けるが、蜜柑を抓んでそっぽを向かれた。

「…グールaさん居ないと態度悪いよね」

「喧し。こんなようけ餌が居てんのに喰われへんとか…」

それでさっきからご機嫌斜めだったらしい。納得した。大量のご馳走を目の前にお預け喰らっているわけだ。どうにも忘れがちだが、グールは人喰だ。イマイチ実感が沸かない。

「人って不味そうだけどなぁ。どうなの」

硬そうだし、栄養もなさそうだ。雑食動物だから、臭みもあるのではなかろうか。味が良さそうには思えない。

「そこらの動物とそんなに変わらんで。そりゃファングやらとは違うけどな。ただ喰うトコ少ないくらい違う」

ファングといえば、最初にシールを襲っていた大ウサギだ。食べられたらしい。しかも美味しいらしい言い振りだ。

「へぇ、じゃあなんで人狙って狩るんだい? ファング狩ったほうが有用じゃん?」

「まぁ、味で見りゃそうやけど。手間がちゃうし」

「ははぁ」

わざわざ闘ったりしなくても、色仕掛けでコロっと引っ掛かる人間を狙った方が労力が少ない、と。数も多いため獲り易いだろう。

「美味しいんだったらあのファング狩っときゃよかった」

「おまえ、ファングと戦った事あるん?」

漸くグールがこっちを向いた。

「あるよ? でも殺しはしなかったから」

「勿体な」

「知らなかったんだもん。次は狩ろう」




── side others ──

お断り会のつもりの公主(偽)と事後承諾会のつもりだった見合い相手・ザグサスは、顔を合わせた瞬間互いに異なった意味合いの驚いた顔を浮かべた。

「…公主は?」

「は?」

婚約者の思いの外整った顔に見惚れていた公主(偽)も、相手から出たその一言に意識を戻した。幾ら中身が違かろうと、この身体は紛れもなくホランダラット公主のものだ。

「ああ、失礼」

彼は唐突な質問を詫びて、尚且つ不服そうに呟いた。

「昨日まではそこそこ乗り気だったようなのに、替え玉とは…」

「何を仰います。彼女こそホドの公主ですよザグサス様」

従者にはバレていない。周囲は突然彼女が替え玉だと言い出したザグサスを奇怪な目で見ている。

「公主?」

反論なく黙り込んで小さく震えている公主に気付く。

「ほらザグサス様、謝って」

慌ててフォローしようとする従者には目もくれず、ザグサスは立ち上がる。

「では公主、二人で庭にでも」


「どうして泣く?」

その涙を隠す事もなく、公主はザグサスを振り返った。

「多分、嬉しくて」

「嬉しい? 替え玉がばれて?」

ザグサスには理解出来ない。突然公主と呼ばれ、この身体が公主であるからといって誰一人中身を疑わず、いや寧ろ、中身がなんであろうと公主の身体を持つ者が公主役をやらなくてはいけないと引き立てられ、此処で初めて、『中身』を見てくれる者がいた。それはまるで奇跡のようで。感情の整理も出来ないままに、ただ涙が流れた。




── side K ──

「あ、おかえりー。どうだった?」

「めっちゃ…えぇ」

公爵令嬢(偽)は、しっかり魅了を掛けられて帰ってきた。ハートが舞っている。グールも呆れ顔だ。

暫らくうっとりしていたグーラーだが、正気を取り戻すと同時に突然怒り出した。情緒不安定だ。

「あんなええ男が他人のもんやなんて!! しかも愛されてるコイツ~! くそーっ、このまま公主役続けてやるッ!」

随分良い男だったようだ。コレは見てみねばなるまい。

「次、夜会? 招待してよ。ってか紹介して」


「つまんねー」

皆が何を笑っているのか理解が出来ない。ホホホ、ウフフとご婦人方の笑い声が満ちる夜会場は、退屈極まりなかった。

「出たい言うたんはおまえやろ」

それはそうだが、ここまでつまらないとは思いもしなかった。Kにはダンスなど踊れないし、グールとふたりでほけぇーとしているしかない。

仕方ないので此処に来た目的を思い出してみる。きょろきょろと首を動かすとそれっぽい人物を発見した。

「あ。アレかい、え──っと………婚約者」

不機嫌そうな美丈夫が一人、人々の中から一つ分高い頭を突き出している。

「おまえ、記憶って知っとる?」

「失礼な! あ──っと、う──っと…ザク…ザクス…」

「ザグサス。やったと思うで」

舌打ちする。一回かそこら聞いただけで、会った事もない人の名前を覚えられるわけがない。

名前を呼ばれたのに気が付いたのか、視線を感じたからか、単に煩かったからか。件の彼がこちらを向いた。Kを視界に納めた刹那、目を見開いたように見えた。

「あ、こっち来る」

人込みを掻き分けてザグサスさんが寄ってくる。視線を逸らして逃げ出したい衝動を、グールを盾にする事で抑える。

ああ、勘違いではなかったようだ。Kの前で止まってしまった。

「あなたは、失礼ですがもしや」

Kはザグサスというこの男に覚えはない。話し掛けられる謂れはない筈だが。

「エケルット公の」

「ッ!」

何かが目の前に降って来た。

「シール!」

落ちてきたのはなんとシールだ。

「え、どうやって来たの? aさんは?」

「前話してた事が成功、って言って解るか」

青い顔で腰を押さえながらKを見上げている。

『前話してた事』とは。記憶を掘り返す。今シールは突如として眼前に開いた『穴』から出てきた。

「あの…」

a無しで一人で来た。そもそもKが『穴』を開いていないのに来られたという事は。思い当たった。いつだかaと話していた『自由転移』が成功したのだ。

「おい…」

何か目印になる物がある場所や一度行った事がある場所へ自由に転移出来ないだろうか、という話だ。

「あー! 『記憶』があるからね」

チラとグールに目を遣れば冷たい半眼で見返された。意図は伝わったようで何よりだ。

「……」

「それより腰…」

腰痛のシールに手を貸そうと近付くと──

「エケルット公!」

「おぶっ」

ザグサスさんに押し退けられた。なにも態々顔を押す事はないだろう。化粧が崩れたかも知れない。これを理由に落としてしまうか。

「久し振りですね………カムシャ公。久々の再開がこれで申し訳ない」

「いえいえ。どのような場でもお会いできれば光栄です」

どうやら知り合いだったらしい。


◇◇◇


── side a ──

「「…!」」

突然の落下と衝撃。地面に叩きつけられたふたりは息を詰まらせ、すぐには声も出せなかった。

「いっ……たぁ───っ。痛ぁ~──ッ」

aが声を取り戻し、シールも強かに打ち付けた腰を擦る。幸いにも何某かの上に落下したらしい。それが緩衝材になってくれた様なのだが、その緩衝材も凸凹していて所々痛い。

痛む腰を抑えながらもシールは顔を上げて状況を確認しようとする。

「ここは──…」

「ご、ゴミ捨て場よ? そこは…」

目の前には、両手にゴミ袋を携えた見知らぬ女性が困り顔で立っていた。


「………」

あのゴミ捨場は彼女の家のすぐ裏だったらしく、お招きに預かり腰の手当てをして貰った。

「えっと…大丈夫?」

背を丸めて傷心しているシールに、手当てをしてくれた女性が心配そうに言葉をかける。

「腰は男の命…」

ばこっ!

「ぃッ」

「心配ないです。ありがとうございます」

社交辞令的に微笑むaの後ろで、叩かれたシールは大きく溜息を吐いている。

あまりに落ち込んでいる様なので、自分で叩いておきながらaは少し心配になった。

「大丈夫? あんた幾つよ…」

「十六」

痛みに慣れていない王子様には相当きつかったらしい。

「帰ったぞー」

「はーい、お帰りなさい」

新婚夫婦のような遣り取りが聞こえてaは顔を上げる。入ってきたのは何とも可愛らしい顔をした、随分と華奢な青年だった。いや、まだ少年の域かも知れない。

「!」

彼は室内に客人を認めた瞬間顔色を変えた。

「おまえ、自分で狩ってきたん?」

「え?」

言われた女性はきょとんとするばかりで、意味を取りかねている。青年はじれったそうにaたちを指した。

「そこの男二人や! ほらな、やればできるやん!」

「えっと──…」

aはそっと立ち上がり、彼の頭を鷲掴んだ。届く距離だ。

「アタシが男に見えるのかな? お嬢ちゃん?」

ギリギリと締め付ける。

「ぎゃぁッ、いたたたたたたっ、痛い!こら放せッ!」

突き飛ばすように解放してやる。

「誰がお嬢ちゃんや! 気分悪いわ!」

お互い様だ。aが男に見えるのなら、彼は充分女に見える。

狩り云々の話からして彼はきっとツェク・マーナなのだろう。イントネーションも西訛りだ。だが、女性の方は訛りがない。

「んで結局おまえら何やねん!」

aとシールを指してまた怒鳴る。シールはいつの間にか出されていたお茶を悠々と啜っていた。

「その人たち、ゴミ捨て場に落ちてきたの。それで腰を痛めたみたいだったから…」

「落ちてきたぁ? 落馬でもしたんか?」

「ら、落馬?」

「まあそうだな」

馴染みない表現にaが怯む。飛竜からの落下も落馬扱いらしい。

「馬持ちか…」

馬とはやはり竜も指す。野生馬を飼い馴らすのは大変難しく、業者から購入するのが普通だ。かなりの高額となるので、結果、馬持ちという言葉は高身分の者か悪徳商人などの金持ちを指すようになった。

「で、ここは何処だ。テラメルコへ行きたいんだが」

考え込むように黙り込んだ青年に構わずシールが尋ねる。

「ああ、此処がテラメルコや。よかったな」

意外にもあっさり答える青年。

「此処が? どの辺りだ?」

「リンカ」

「リンカか。ソーまで遠くはないな」

解らない単語の羅列に置いてけぼりのaが口を開く。

「ソー? 首都?」

「首都はホランダラット」

「えーっ。やっべ~。アタシ、グールに首都にあるって言っちゃったよ…」

ターミナルは首都にあるものだとばかり思い込んでいた。そういえばネツァクではとても辺鄙な場所にあったっけと思い出しても、後の祭だ。

ちょっと、いや、かなり心配だ。早々に連絡を取らないととaは思った。




── side others ──

aたちのそんな会話の後ろで、女性の視線はシルータの髪留に奪われていた。幾重に羽ばたく翼。その鳥を模した紋章は。

「どうした?」

「えっ、ぁ…いいえ」

彼の名はシャーィというらしい。この家の主で、この『身体の』幼馴染。今日の朝突然意識が途絶えて、気が付いた時には私は違う身体になっていた。居た場所も格好も何もかも違う。これが何処かで習った『神の悪戯』という現象か、なんて何処か冷静に考えながら、決して取り乱す事はなかった。

寧ろ、夢の様に待ち望んだ機会だ。身分も柵もない、私を知っている人も誰一人としていない新しい生活。隣には『私』を大切に思ってくれる『私』の幼馴染。なるべくならこのままでいたい。

だから、私は彼に「記憶を失くしてしまった」と嘘を吐いた。記憶を失くしただけの、変わらず貴方の大切な幼馴染だと思わせたかった。

「おまえさぁ…ホンマに記憶失くしただけなん?」

「え…」

それなのに、彼には解ってしまうのか。

「あー、いや…なんちゅーか…」

言い辛そうにしている。やめて。そのまま飲み込んでおいて。その先は聞きたくない。私はまだ、このままでいたい。

「今のおまえって…なんかもう──別人やん。オレの知っとるおまえが欠片も見付からん」




── side a ──

「だめだ。気付かないぞK」

何とか連絡を取ろうとコンタクトを試みるのだが、幾ら呼んでもKが気付かないのでは意味がない。シールは小さく舌打ちして「使えん奴」と呟いた。

「しょうがない、迎えに行く?」

「めんどくせぇ。おまえ行ってきて」

行ってもどーせ戻って来んだし、と投遣りな態度で手を振っている。それを聞いて、aは唐突に話題を変えた。

「こないだKと話しててさ、自由転移できないかなって」

嫌な予感がシールに過る。

「はぁ?」

「ちょっとややこしいから説明省くけど、『中』から好きな場所にゲートを開けられたらいいんだって話で、『中』に人が入ってられるのかって処から実証したいんだよね」

ヴぉん、と低く振動する空間にシールが多少焦りを見せる。

「…おい……おまえ……」

次に何が来るかを予測して、完全に腰が引けている。

「アタシが行くともしもの時どうしようもないからさ」

その笑顔と共に、恐るべき闇が打ち寄せる。

「…ッ」

プライドに賭けて、シールが悲鳴を上げる事はなかった。


ぐるぐるぐるぐる。

コルードや荷物の山が流れていく。偶に何か判らない…解りたくもない…物体も流れていく。

「………」

ぐるぐるぐるぐる。

上の方にぽっかり開いた穴からa…恐らくa…が、覗き込んでいる。

「何か解るー?」

「…おまえがウニに見える」

「えー」

「音が安定しない」

耳元で聞こえたかと思ったら、次の瞬間には聞き取れない程遠くに感じたりする。それは聴覚だけではなくて。

「遠近法も通じん。早く出せ気持ちが悪い」

それでもaにはまだシールを解放する気は更々ないらしく、質問を続ける。

「外の様子は? 感覚とか視覚とか」

「…何も」

もう本当に気持ちが悪い。酔うとかそんなレベルの話じゃない。

「念じてみるとか何とかして見つけて。Kの居場所」

「このウニめ」

──マジでおまえが入ってみろ、くそ。

悪態を吐きながらも言われた通り念じて居場所を探ってみる。

──あーちくしょう気持ち悪ぃ。

  そもそもあのバカが時越え失敗なんぞするからこんな事に。何処行ったんだあいつら!!

「────見つけた」

「よし、じゃあ開くよ」

──多分こう、二重に内側から開く感じ…

aは目を瞑って集中する。取り敢えず、シールの存在が懸かっている。


◇◇◇


── side K ──

「…え? シールの知り合い?」

シールは無感動な表情で彼と挨拶をしてから、Kにも紹介してくれた。

「あぁ。彼はザグサス・カムシャ・スメシア。ゼクトゥーズ現王母の──甥だ」

後ろでお行儀良く頭を垂れて見せるカムシャ公。今の話からすると頭を下げられるような身分ではない。

シールは今度は彼の方を向いてKを紹介してくれる。

「こっちは新任のカルキストです」

「ああやはり。知っています、有名ですよ。しかし、二人だったのでは?」

「ああそうだ、aさんは?」

言われて漸く思い出し、穴に顔だけを突っ込んでaと会話する。

「よう、aさん。荷物届いたよ」

「K。そうか、成功だな」

「うん。で、aさんは来ないの?」

「悪い、今ちょっと立て込んでて…後で呼ぶから」

「そう、解った。気を付けとく」

穴を閉じて、振り返る。シールとグールにaは後から来る旨を伝えた。

「なんや、来ぉへんのか」

見るからにやる気の失せた顔だ。Kとしては大変面白くない反応である。

「凄いな、今のは何ですか」

「へっ? つ、通信です…?」

興奮した様子のカムシャ公に詰め寄られる。

カムシャ公は背が高い。Kには見慣れないその長身は、恐らく一八〇センチ近くあるだろう。グイグイくる態度も相まって恐怖を感じる。

「いや失礼しました。実は私はカルキストに大変興味がありまして」

爽やかに手を広げてみせるカムシャ公。やはりコワイ。

「ミーハーなのね」

そういえば存在を忘れていた。

現れた人物を見て、シールの眉が怪訝さを示した。かすかな変化だったが、乏しい表情筋でよくやった方だ。

「グーラー」

「一応私、婚約者なんですけど」

そうだそうだ、と心中野次を飛ばす。婚約者を放ってカルキストに感けるとは何事か。

「私はクィーリと婚約したんだ。貴女と婚約した覚えはない」

これはなかなか手厳しい。しかしつまり、中身が違う事を見抜いたという事だ。Kは少し彼を見直した。

「──まあ、そうだけど…」

何か巧い手はないかと必死に頭を回しているように見える。しかし思い付かなかったのか、手首でこめかみを叩きながら渋々退散していった。

「──で。何考えてんの、シール?」

「あ? いや。べつに」

「そう? あ、彼女はここの公主役だよ」

別にという割には怪訝そうだったので説明を加える。タイミング的に彼女の事だろう。

「役」

「うん」

もっと混乱するかと思ったが、意外にも怪訝さが薄らいだ気がする。

「役ってどういう意味? とか訊こうよ、ここは」

「大体見当はついた」

「エケルット公」

いつの間にか場を離れていたカムシャ公が帰ってきた。

「エケルット公、やはり彼らがマスカ」「カムシャ公。今それはちょっと」

「え、はぁ、解りました。すみません」

「いえ」

展開と視線から言って、『彼ら』とは恐らくKたちの事だ。シールはKたちに合わせてくれる事も多いが、黒紫城にお世話になっていた時もよく男性形で示されていた。最初の頃に聞いた『北では男女の区別がない』は、色恋の話だけじゃなく言葉の問題でもあったのだ。

それはともかく。今のはなんだか面白くない。散歩にでも行ってこよう。


何かついてきた。

「──あの」

歩みを止めて、そこまで言ってから思いっきり振り返る。

「鬱陶しいよ!!」

「お気になさらず」

する。これだけストレートに口にしたのに、顔色一つ変えずに「お気になさらず」とはどうした事か。

正面からカムシャ公に向かい、正式に文句をいう姿勢をとる。

「付いて来ないでよね。カルキストが珍しいならaさんにでも…わあぁっもう!」

「へ?」

Kとカムシャ公の間に突然人が現れた。位置もタイミングも完璧だ。あまりにも吃驚したので思わず苛付いたが、現れた人物を確認して落ち着きを取り戻す。

「え、あれ? aさん? あぁ、あーびっくりした。どうしたの。何で来た?」

確か後で呼ぶと言われていた筈だ。自由転移が完成したからもう相棒は必要ないのかも知れない。悲しい。

「えっと、届け物です」

aはKの正装姿をまじまじと見てから、「コレ」と隣に立つ『荷物』を手で示した。

「気持ちワル…何よ今のは…あ~ビックリした…」

知らない人だ。そこに居たのは厳しそうな顔をした地味系の、しかしよくみれば綺麗なお姉さん…。この系統には覚えがある。グーラーによく似ている。

「クィーリ…?」

「………」

挙がった声に目を遣る。カルキストの御業に感動して静かになっていた男…、ではないようだ。Kたちなどそっちのけで、感動の瞳はaの荷物であるその女性に注がれている。

「クィーリだろ?」

「──…はぁ」

それまで黙ってその瞳を受けていた女性が、諦めの溜息を吐いた。

「真っ先に会うのがあんたか。しょうがないなぁ」

カムシャ公の顔がパッと明るくなったのがわかった。

「クィーリッ!! やっぱり!」

「わっ、ばかっ」

「「おー」」

堪らず、といった風に思いっきり彼女を抱き締めるカムシャ公。クィーリと呼ばれた女性はあたふたしている。

Kとaは目を合わせ、双方苦笑いで逸らしあった。


邪魔が入らないように、公主の私室に集まった。

「神の悪戯、か」

「そうですね、珍しい事ですが…」

ケテルの王族たちは謎の単語を吐き頷きあう。全然解らないので、膝を叩いた。

「はいはい、説明してくださいよ」

さっきまでシールにべったりだったカムシャ公は今やクィーリさんとやらにべったりで──もう本当に物理的にべったりで──、解放されたシールは随分ほっとしているようにみえる。Kも一安心だ。ただ心穏やかじゃないのはグーラーだ。惚れた男がこの様では仕方あるまい。

チラと目を遣ると、aは怪訝な顔でグールを見ていた。特にグールに不自然な様子はない。

「神の悪戯ってのはだな、」「この世の神秘の一つですね。血筋や生まれ、暮らす土地や距離、面識、生星や加護神等に於いても全く関連のない二人の間で精神の交換が起こる現象です。あ、性別に関しても無関係です。私たちは意識しないものなのでつい忘れがちで。原因詳細は未だ解明されてはいませんが、同調説が有力です。全く同じタイミングで全く同じ感情を抱いた、等です。大体の事例では三ヶ月から三年で元に戻れるようですが、戻らなかった事例も報告されています。自然に戻るのを待つ他に今の処手はありません」

シールの台詞を奪って長々と説明してくれるカムシャ公。

「因みに魔風というのは大気中の魔力層の衝突により起こる突風に似た現象です。異なった属性の力が重なり合い摩擦を起こす事でその場に爆発的な力が生まれ弾けるのです。巻き込まれると一瞬にして遠く離れた場所に送られるそうです。一説によると力の暴発により空間に歪みが生じるためと言われます。ただしこちらは交換はしてくれませんので、今回とは関係ないようですね。似ているとは言っても彼女たちの体は確かに入れ替わっていますし」

かなり悔しいが、彼の説明には知りたい事は全て含まれているようだ。長かっただけの事はある。台詞をとられたシールは「まあそういう事だ」と感慨なく呟いた。

「うん、まあ…」

やはりKにはシールの説明くらいで丁度良い。

「つまり、ここの公主サマとグーラーが中身入れ替わっちゃったって事だよね。その、神の悪戯とやらで。で、顔も似てたと」

「そういう事ね。それより、一応色々聞いておきたいんだけどいいかしら」

そう言って公主サマ(真)がグーラーを見る。

「貴女がウェステラ?」

「………」

沈黙の後、グーラーは肯いた。

「そう。お互い大変な目に遭ったわね。これからの事だけど…」

公主サマ(真)は暫し目を閉じて、ゆっくりと開いた。

「このまま公主を続ける気はないかしら」

「…え?」

「私、貴女になりたいの」

──すげーこのお姫さま!

あまりの発言にKも目を開く。厚かましい我侭をよくもまあ堂々と言い切るものだ。

「クィーリ! 何を言うんだ、君の代わりなんか誰にもできるわけないだろう!」

「あんたはちょっと黙ってて」

「クィーリ!」

慌てたカムシャ公を叩きのめす公主サマ(真)。強い。

「あんた、何考えとるん?」

「私ね、シャーィの事本気なの。見た処貴女シャーィに気はないんでしょう? ならこのまま、交換生活を続けても支障はないんじゃないかしら?」

眉を顰めて黙り込むグーラー。

「…aさん」

「何」

小声で隣に呼びかける。

「どうなってんの?」

「…込み入ってるのよ」

ウンザリと肩を竦めるa。そこを聞きたいと言っているのに。

「クィーリっ、シャーィって誰だい!?」

取り乱したカムシャ公は、クィーリさんに手を伸ばし払い除けられる。

「申し訳ないのだけど、私は恋を知ってしまった。もうあなたとは一緒になれない」

厳しい顔でカムシャ公にそう告げる。それから、少し眉を下げた。

「…というのが私の気持ちなのだけれど。ホランダラットとカムシャの婚約は破棄できないわ。そして、公爵家の我々がツェク・マーナを伴侶に迎えるわけにもいかない」

それはつまり…。

「………」

カムシャ公は口を噤んだ。

「それでウェステラさん、どうなのかしら」

「…どう、て…」

グーラーことウェステラさんは恐らくイマイチ解っていない。ところでさっきから静かだが…あぁ、グールとシールは仲良く蜜柑を剥いている。完全に興味なしだ。仕方ないので口を挟む事にした。

「三年かそこらで元に戻っちゃうんでしょう? だからそれまで楽しもう、って提案されてるんだと思うよ。その後は、『諦めて』って」

「…ぁー、」

どうしたって、クィーリさんの言った通りだ。公爵家に人喰の血は入れられないし、婚約破棄は問題がある言い様だった。国交の問題はKには解らない。カムシャ公が静かになったのも、『いずれは手に入る』と確定したからだ。彼女が「破棄できない」と言ったのだから。

「…そやな、それもええかもな」

逡巡の末、ウェステラさんは折れた。

「そ、そ。なっちまったもんは楽しんだ者勝ちやしな」

「あれ、じゃあグールもその状況楽しめてます?」

首輪に指を絡ませる。

「それは別」

「て」

ぺしっと叩かれた手を振る。

グーラーは大きく溜息を吐いて首を振ると、勢い良く顔を上げた。

「よっしゃ、じゃあそれまでよろしゅうな! ザグサス」

「いいわね、私も負けないようにシャーィにアタックしましょうっと♪」

良い笑顔のふたりに目を遣ってから、aと目を合わせる。

「女の子って、逞しいねぇ」

「だな。気の毒にね、彼らも」

男たちに同情しつつ、なんかまぁ解決かなとKは肩を落とした。


それからターミナル参拝のついでに公主サマ(真)をシャーィとやらの元へ送り届け、aとシールが彼に詳細を説明しにいった。

「ね、グール」

「なんや」

「ターミナルやっぱ場所違ったね」

「せやったな」

シャーィの家を横目に、ふたりの帰りをグールと共に門外で待つ。

「何かツェク・マーナいっぱい出てきたけど…地味だよね」

確かに良く見れば美人だったが、ふたりとも地味だった。グールが特別にキレイ顔なのかとも思ったが…

「あれは女やし。他ではどうか知らへんけど、俺らは男だけしか狩りせぇへんから」

女の人は狩りをしないから、人目を引くような外見をする必要はない、と。そうして地味になったのだろうか。


「あれ、公主サマ? Kたちにまだ何か?」

「ごめんなさいね、たいしたお構いもできないで…」

シャーィが嫌がるからと家に上げて貰えないKとグールに気を使って出てきてくれたらしい。

「全然大丈夫。そういや、クィーリさん知ってた? シールってさ…」

「ええ、ケテル王家の関係者ね。随分上の方なんでしょう?」

「あ、うん。彼はゼクトゥズのオージサマだよ」

「え」

恐らく髪留で察したのだろうが、詳細な身分までは判らなかったようだ。目を見開いた彼女に悪戯に笑ってみせる。

「あの子放浪癖あるから」

「なるほど。だから貴女たちのような特殊な護衛が付いているのね」

護衛というか。逆にシールがKたちの案内係だ。

「因みに、カムシャ公と血近いらしいよ」

「…え」

「本人気にしてないみたいだったけど」

「そ、そう」

よかったわ、とも、悪い事したわ、とも言えない公主サマ。だがこちらとしては安心した。知っていてあの暴言悪態だったら救われない。

「と、とにかく、そろそろ失礼するわね。御免なさい」

「あ、いえいえ。それじゃあ良い入れ替わり生活を」

入れ違いで出てきたaたちと合流して、Kたちはホランダラットの公主邸に戻った。


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