9/理解の国で
「寒い…海上は寒い…」
フェニックス君の背で震える。流石に秋口の北国で上空遊覧は寒すぎた。
眼下には穏やかに広がる大海原。昨日越えてきた時は夜だからと思っていたが、日中でも容赦なく寒い。
「あっちに熱い画があんで」
グールの示す先にはふたつの人影。海岸線で手を繋いだり頬を触り合ったりキスをしたり──
「寒い!! 心が寒い!!!」
両腕を上げてエネルギーをチャージする。
フェニックス君が「背で騒ぐな!」と怒っているが気にしない。
「おい、何をする気だ」
「ほゎッ!?」
真に受けたシールに後ろからホールドされてチャージ中のエネルギーが頭上で暴発。
「なッ…!?」
バランスを崩したフェニックス君の短い悲鳴の後──
「ちょ…ッ、なにしてんのふたりとも!!」
「だってシールがっ」
「だってコイツがっ」
「だから背で騒ぐなっつったんだよ!!」
ぼっちゃぁ───ん!!!
「…最悪だ最悪だ…」
もこもこ毛布に包まって、ソファーの上で膝を抱えて震え続ける。海に落ちた上、件のバカップルに拾われてしまいました。
aとグールは今服を買いに行ってくれていて、シールはKの隣で機嫌悪く座っている。家主たちは温かいものを作ってきてくれると言って居なくなったから多分台所だ。
「シールそれ下気持ち悪くないの」
「脱げるかバカ」
上はあっさり脱いでる癖に。
「また風邪引かせちゃオーサマに申し訳が立たない、脱いじゃえ!」
「その行為の方を申し訳なく思え!!」
「えぇと──」
ソファーの上でシールを組み敷いて攻防していると、遠慮がちに声を掛けられた。顔を赤くして目を逸らすaが、紙袋を掲げて立っていた。
「あらお帰りaさん。これは、ええっと、ちょっと脱がせようとしただけで」
「えっ?」
「おっと。えーと、温めてあげようと??」
「じゃ、邪魔したね??」
泥沼化。
「ほい、襲われる前に服」
グールがシールに紙袋を差し出す。という事はこっちはKの服だ。aの紙袋を受け取って中を出す。
「グールそれ格好良いねぇ。いいなぁ」
「どーも」
黒の上着は見るからに生地が上質で、随分高そうだ。全体的に白っぽい奴なので黒が映える。でも多分あの下はいつものヨレヨレシャツなんだろうな。
Kのはモコモコのセーターだ。かわいい。あったか!
aも暖かそうな厚手の上着を羽織っている。
「グールに着せたら楽しそうなのはいっぱい有ったんだけど、シールが難しくてさ」
Kは今ここでパッと着替えちゃったけど、オージサマはソファーの陰でこそっと着替えたらしい。まぁKはこどもなので。こういうのも特権ですね。
「ああ、良いじゃん。普段と違う格好って…いいよね」
いつもとだいぶ印象の変わる服を着て、少し落ち着かない様子のシールもなかなか良い。
「わかるわかる! 好きな人を自分の好みの服で飾るのは楽しいよね!」
えーっと。突っ込み処がまず2つ。合計3つ程。
家主…バカップルの内のひとり、サクラさんが湯気の立つカップをお盆に乗せてやってきていた。
カップやお椀を合計6つ、テーブルに並べる。中身はクラムチャウダーのような物に見える。
「ありがとうございます、助かりました」
「いや~、この時季に海に落馬は厳しいでしょ。無事で良かったね」
もう少し冷たかったらショック死もあり得たと思う。本当無事で良かった。
「遠洋には人喰もいるから、気を付けてね」
もうひとりの家主、ボタンさんも現れた。
サメとかシャチみたいなヤツだろうか。見てみたい気はする。
「でさ、あんたたちはどうペアなの?」
サクラさんが、突然錯乱した言葉を吐いた。
「「は?」」
こう? それともこう? と、シールとK、aとグールを指したり、aとK、シールとグールを指したりする。
「じゃあ後半の方で」
「ノーペアです!」
痛い。拳骨を喰らってしまった。
まぁ実際、Kとaの組み合わせ以外は歳の差が広いので。犯罪になってしまいます。特にグールは多分20代だし。
「ふーん、怪しいのになぁ」
それでもそれ以上詮索はしてこなかった。
「てか服、レイセンのじゃん。金持ちだね」
空の紙袋とKたちの着ている服を見て、ボタンさんが呟く。どうやらブランド品らしい。
このセーターの編み模様も、シールのシャツのデザインも、何処か『波』を連想させる。
「やっぱり高価かったんだ…」
aが少し青ざめてグールを見ている。あぁ…うん。aもKと同様まだ金銭感覚が解らないらしい。グールは…あの表情から察するに、解ってたんだろうな。でも出資者がさらさら気にしてないから良いと思う。
「あーいいな! お金に糸目をつけず、好きな人に好きな服を着せる! ボタンにあんな服やこんな服を……」
サクラさんはぶつぶつ言いながらクネクネしている。それを聞いたボタンさんが、
「…サクラに…あんな服やこんな服……」
──ボタ…ッ
「!!?」
思わず二度見した。
が、ボタンさんは吹き掛けた赤いモノを全力で拭って涼しい表情を崩さない。
「大丈夫よ、なんでもないわ」
いやいやいや、跡!!手の甲と顔に思いっきり血痕残ってますので!!
サクラさんは「も~ボタンったら~」なんて嬉しそうにによによしてるけどそんな微笑ましい事態じゃない気がする!
「にーちゃーん!」
「あ」
聞こえてきた幼い声に、ボタンさんが顔を玄関の方へ向けた。直ぐに元気な少年が駆け込んできた。
「なんか拾ってきたって…聞いて……ぅゎ……」
うわ??
リビングを確認するなり固まってしまった少年は、今は顔を真っ赤にして俯いていた。
チラッと恐る恐る盗み見るように一瞬だけ視線を上げて、また慌てて俯いてしまう。
なるほど。
「グール、少年にモテるね…」
「まっったく嬉しない」
でしょうよ。
「あんたああいうのが好みなの」
「だってキレイじゃんか!」
呆れたようなボタンさんの言葉に少年は真っ赤になって吠え立てる。
しかしまぁ、そうだった。忘れてたけどグールはキレイなカオしてるんだった。
「じゃあにーちゃんはどれが好みなのさ!?」
そう言って少年はKたちへ向かって手を広げる。え、この中から選べとか酷じゃない?
「えぇ? うーん……あたしなら…」
一人ずつに順番に視線を向けていくボタンさん。全員を見終えると、にこっと表情を変えて振り返った。
「サクラだよ。決まってんじゃん」
「良かった~~! ドキドキしちゃったよ~」
CHA-BA-N!!
とんだ茶番だありがとうございました。
気が付いたら居なくなっていたグールを探して外へ出ると、奴は悠々と海岸沿いを散歩していた。
「ちょっと勝手にいなくならないでよ。どうかした?」
「どうもなんも…堪えられんわ、女同士でイチャイチャと…」
うん。今更だが、サクラさんもボタンさんも女の人だ。にーちゃんと呼ばれていたけど、翻訳の都合上で、そこに性別の意味合いは含まれていない。aは苦笑いで曖昧に同意した。Kは元々そういうのあんまり気にならないので、単にいちゃつきっぷりだけが目に余る感じですが。
「あれ、弟くんは一緒じゃなかった?」
「あー。鬱陶しかったんで追っ払った」
やっぱついて来てたのか。同じタイミングで姿を見なくなったのでそうかなぁとは思ったんだけど。追っ払われた後は何処へ行ったんだろう…まぁ地元民だし心配ないか。
「そういや、グール兄弟っている?」
「知らん」
「知らんって…」
流れでなんとなく尋ねただけだけど、そう即答されるとは。
「うん…シールは?」
少しイラっとしているKの肩を抑えて、aが逸らすようにシールに振った。
「…弟がひとり」
「「「え」」」
「なんだ『え』って」
いや。だって。絶対ひとりっこだと思ってた。
ここでいう「弟」の性別は判んないけど、どっちにしろ驚きだ。そう漏らすと「あたしも」「俺も」と声が上がる。うん。特に下が居るようには見えないよね。
「――…。まあ実質居ないようなもんだ」
王族だもんね。複雑な事情があるかも知れない。
「おまえらは兄弟おらんやろ」
「居るよ。上にふたり」
「アタシも兄がふたり」
ふたり揃って末っ子です。
「うわー」
「なによ『うわー』って」
「想像できへん。どんなんや」
どんなん…暫し考える。んー…
「さあ…関りが無いからよく解んない」
「アタシんとこもフツーに…フツーの兄だよ」
一般人だよ、取り敢えず。
「それよりさぁ、ビナーの海は青龍ちゃんの故郷かも知れないんだって?」
さっきの服のタグや紙袋に、「コルードの生まれる海」みたいな記述があった。字習ったのも遠い記憶になりつつあってあんまり自信ないけど。
「そうなんだ? 呼んでみるか」
言って、aが『穴』を開くと──
──ぎゃあああぁあぁス!!!
「うを!? 何怒り!??」
酷く興奮した状態の青龍ちゃんが出てきた。
すぐにハッとして
「しっ、失礼しました…!」
と頭を垂れてくる。同時に、朱い羽根がひらりと舞い落ちた。なるほど。フェニックス君との仲はやはり良くないままらしい。
「そうですね…確かにビナーには私たちの種は多いようですが、故郷というわけではありません」
一息吐いてから、青龍ちゃんはKたちの質問に答えてくれた。
「私はマスターの守護獣として生まれましたので、言うなればマスターの心の内が故郷…でしょうか」
aが「劣悪環境だな」とか言う。うるさい。挙句にグールも顎に手をやって視線を下げ、「おかしい…」とか呟く。
「なにが?」
「あの龍のマスターてKなんやろ?」
「うん」
「で、あの鳥のマスターがa」
「うん」
「そうなのか?」
「うん」
そこでシールが聞き返すのでそれにも頷いて、そういやどうしてグールが知ってるんだと気付いた。aが教えたんだろうけど…えぇぇ…知らない間にどんどん仲良くなってってんじゃん。嫉妬。それはともかく。
「で?」
「いや、おかしいやろ」
丁寧な青龍ちゃんがガサツなKから生まれて、不真面目なフェニックス君が真面目なaから生まれたというのが納得いかないらしい。失礼極まりない。aは「はは…」と力なく笑っている。
「しかし…」
もうその話は置いておいて、キラキラと煌めく海に目をやる。
「折角の海なのに泳げないとは」
「あー、それは確かに」
Kは泳ぎは得意ではないけど、浮かんだり潜ったりするのは好きだ。aは普通に上手に泳ぐし、身体を動かすことは全般的に好きだろう。シールやグールは泳げるのかしら。
そんなことを考えていたら、シールがにやりとしながら言った。
「安心しろ。ビナーのターミナルは海底だ」
「「「えっ」」」
いくつもの水泡がゆっくりと、あるいは素早く昇っていく。
「はあぁぁぁ…」
漏れ出すのは感嘆の息。
「これは…アクア通路…」
「よかった、寒中水泳じゃなくて」
海底に敷かれた通路を覆うのは驚くほどの強度を持った透明の素材。頭上を魚の群れが行き交い、遥か天上で海面が煌めく。
「耳が痛い」
「耳抜き耳抜き」
海面が視認できる程度とはいえ海底。
グールは気圧に敏感なようだ。そういえば、コクマではグールは塔の最上階まで来てなかった。ついて来ていたら体調を崩していたかも知れない。
「しかしコレすごいなぁ…強化ガラス?」
「特殊な法石だな。高圧耐性、衝撃にも強い」
しかも透度も高い。結構な分厚さだけど、キレイに透明だ。
ガラスに張り付いて外を見ていたら、
──どぷん
シールとふたり目を見張る。
「…うわあ…」
ものすごい影が横切った。
「地上…!漸く地上や…!」
は~~~~っと大きく息を吐いてグールが肩を落とす。どうやら気圧酔いしたらしい。けど、ちょっとKはそれどころじゃない。
「…あのねー、さっき海底ですげぇの見たんだよー」
「へー?」
aは素直に耳を傾ける。
「…でねー、今頭上にすごいの居るんだよー」
「─へ?」
ゆっくりと視線を上げるa。
もうソレの陰が落ちて、一帯を暗くしている。
「グランチェスカ……海底の禍……」
シールが呟く。
わざわい……ははぁ。嫌な予感しかしませんね。
引き返してボタンさんとサクラさんの元へ。ぐらんちぇの話を聞きに来た。
「あー、珍しいね。滅多に上がって来ないんだけど」
「姿を見せる時は悪い事が起こる時って言われてるね」
「おっとこれは……」
イヤなタイミングだ。完全にKたちが釣り上げたみたいに見える。
ドンドンドン、とノックの音。
「グランチェスカを連れてきた旅人を匿ってると聞いたぞ!」
「…だって」
あっさりした様子で玄関からこちらへと目線を変える家主のふたり。
「しゃーねぇ、行きますか」
「そうだね。お邪魔しました」
4人仲良く縛られて、波に囲まれた岩場で日光浴。人柱的な感じだと思う。Kとaが大人しく縛られた所為か、グールも抵抗しなかった。意外。動力不明のスピードボートで沖の岩場に放置され、ぐらんちぇの沙汰を待つばかり。なのだが。
「これいつまでこうしとけばいいの?」
「グランチェスカが贄を決めるまで?」
当のぐらんちぇはKたちの頭上を悠々と泳ぎ回るばかりで、近付いてくる気配もない。
「もう解いてえーか」
「いいんじゃない? 見張り居るワケじゃないし」
プツリと縄を切る。グールはたぶん自前の爪で。Kは刃物を召喚して。
立ち上がってうーんと伸びをする。岩場にベタ座りは結構キツかっ……
「ぎゃあッ!!?」
ぐらんちぇが突然こちらへ突っ込んできた!
K!? Kなの!? Kに決めたの!??
慌てて避けようとするが──
海の岩場で走るの、ダメぜったい。
滑った! 転ぶ──
世界がスローモーになる。
にたりと嗤うぐらんちぇの、大きな大きな口が迫───
「……いっ、てて……」
転んだ。
思ったのと違う衝撃。岩場に打ち付けた痛みではなく、ゴリゴリとした……
いやそれよりも。ぐらんちぇの襲撃が止まっている。ピタッと。直前で大きく口を開けたまま止まっている。
???
じっと見ていると、やがて口を閉じてまた悠々と泳ぎ出した。
「???」
見回す。グールは立ったままだから、立ち上がったのがお気に召さなかったワケじゃなさそうだ。
aが漸く自分の縄を解いて、低い姿勢のまま近寄ってきた。
「大丈夫?」
「なんとか!」
「じゃなくて、下」
下?
「……いい加減、退け」
あぁ。この固いクッションはシールか。
「ごめんごめん」
aがシールの縄を解いてやる。ふるふると頭を振りながら、シールは姿勢を正す。
と、再びぐらんちぇが突進してきた!
Kに!
「なんなの!?」
慌ててシールに飛び付いた。
すると。またしてもピタッと、ぐらんちぇは攻撃を止めた。
「護符!? なんらかの免罪符!!」
意味が解らないが、とにかくシールの極々近距離に居る間は襲われないらしい。
「なぁるほどなぁ。ヴァイスが懐く筈だ」
「「「!!?」」」
今度はおじいちゃんが空から降りてきた!
細い枯れ枝のような老人は、傍らに翼の生えたシャム猫を従えている。
誰かの知り合いかと首を巡らすも、皆ノーの顔をしている。
「儂はブラクザイア。普段は『曠真』と名乗っているが、お主らにはこう名乗ろう。こっちはレザンビークじゃ」
「ぁぁ…じゃあおまえが、この間ヴァイスをボロボロにした──」
シールがおじいちゃんの名乗りにそう返すと、aが「ひぇ…」と顔色を変えた。え、全然解らない。ヴァイスって何。誰。
おじいちゃんが持っていた杖を…杖?まぁいいや、それを岩場にコンッと、垂直に落とすように打ち付けると、一瞬だけ耳鳴りのような衝撃が走った。
「さて嬢ちゃん。もう手を離してやりなさい。大丈夫だから」
言われて、恐る恐るシールの首から腕を外す。
……襲ってこない。てか、完全に硬直している。ヒレは風にそよいだままで、辺りを見渡してみれば──
「波まで止まってる…」
「儂は時の支配者じゃからのぅ!」
おじいちゃんはフフンと胸を張る。
すごい。これは素直にすごい。時間よ止まれは流石にK達にもまだ出来ない。
「おじいちゃん、助けに来てくれたの?」
「おお、おじいちゃんか!では曠真爺と呼んで貰おうかの」
曠真爺はにこやかに笑って首を振った。
「見に来た」
何故かその一言で、少し寒気がした。
「グランチェスカは国を護ろうとしておるだけじゃ。お主が此処を去ればまた眠りに就く」
え。ナニソレ。Kが『禍』ってこと?
「疲れたー」
ぼふりと顔面からベッドに突っ伏す。
「あの爺、全然説明してくれないし」
曠真爺は本当にKたちを「見に来た」だけらしく、助け出された後も結局諸々謎のまま、彼は去っていった。シールと居ると襲われない理由に関しては、「そういう体質なんじゃろ」と訳の解らない返事をくれたが。
流石にボタンさんたちの家には戻れなかったので、少し離れた街に宿をとった。宿泊施設が多いと言うか、観光施設が整っている街だ。宿に食事処に温泉にお土産屋。ティフェレトの大通街とはまた違う、観光メインに栄えた街に見える。
さて。Kは温泉は興味ないのだが──
「そーいやーさー、下、酒場ついてたよね」
「あー。あったね」
受付の奥に広~い酒場がついていた。まぁ年齢的にお酒はともかくとして。
「ゲブラーのさ、祝杯あげなきゃ!」
「じゃあお財布に相談だ」
「…なるほど。手配しよう」
変な間はあったものの、快諾!
「やったー! Kはエビフライが好きです!」
「あるといいな」
あるでしょ! 流石にあるでしょ!……エビさえ存在すれば。
「城に戻ってからもパーティーが催されるだろうが、楽しめるものじゃないだろうからな」
「ひえ」
出来たら逃げたいような予定を聞かされた。食べて忘れることにしよう。
「わあやった酒!」
目の前に並ぶ酒瓶に興奮気味に手を合わせる。
ニホンでは法律的にまだ飲めない身だが、ビナーでは許されるのだろうか。
「飲んでいいのっ?」
期待に胸を膨らませて視線は酒瓶にホールド。ここで駄目だとは言わせはしない。
「ま、戦勝祝いだ。程々にしろよ」
「ふぅ、ちょっと回ってきた…」
aが火照った顔に手をやって一息吐く。
「あらaさん早いわね」
「Kほどほどにしとけよ」
一応母国では飲酒不可な年齢なんだから、と念を押される。だからこそでしょと笑って、Kはきょろきょろと辺りを見回した。
あそこでお姉さん口説いてるのはグールで、それはいいとして…aがそれを見つけた時の眼は恐かったけど…シールが見当たらない事に気付いてaの裾を引っ張った。
「aさん、シール居なくない?」
「え~? ……あぁ、ホントだ。トイレじゃない?」
「よね。かなぁ」
心配する程のことでもないとは思うけど…。何とはなしに気になって、立ち上がる。
「K? 何処行くの?」
「ちょいトイレ。あそこの馬鹿でも構ってあげてよ」
グールをアゴで指して、笑顔で席を立つ。
さて、行方不明者は…
──早々に、出入り口で発見された。
「うわ! 何倒れてんのこんなトコで!!」
慌てて傍にしゃがみ込む。テシテシと叩いてみるも反応は薄い。
「うわぁ~………」
流石に困って、近くに居たおじさんに声をかける。
「ちょっとすいません、このコいつからここに倒れてました?」
「へぇ?」
突然話し掛けられたおじさんは一瞬面喰っていたものの、快く考え始めてくれた。
「…っだなぁ…おい、誰か見てたか?」
声をかけられたおじさんの仲間たちは、顔を見合わせ考える。「さぁ」とか「見てねぇなぁ」とかいう言葉が飛び交う中、一人が「あ」と声をあげる。
「そういや暫らく兄ちゃんが出口に立ってるのは見たなぁ。気になって声かけたら『酔うから』とだけ言ってよ。気付いたら居なかったんだが…もしかして出てったんじゃなくて、倒れてたのかい」
「ありゃぁ、気の毒な事を」とか、おじさんたちはまた勝手に騒ぎ始める。
成程。…そういやぁ割とすぐに居なくなってた気がする…
「いや、ありがとうございました」
礼を言って、グールにでも運ばせようと考えていると、おじさんたちにジョッキを差し出される。
「まぁまぁ、兄ちゃんあんたじゃ運べないだろ。起きるまでおじさんたちと飲んでこうや!」
「いやぁ、でも一応アテは居るんで」
「そぉかい? まあ一杯!!」
笑顔で断るがおじさんも食い下がる。困ったKは暫し逡巡の後、諦めて笑った。
「じゃあとりあえず人呼んでくるんで、こいつ見ててあげてくれます?」
「あーらーさー……」
ん の姿が見当たらず、数歩歩いて足元を見下す。
「…………………」
あの少しの間に、何が。
テーブルの影で、aがグールに被さるようにして…いやどっちかって言うと押さえ付けるようにして、二人仲良く眠っていた。
「aさーん」
ゆさゆさ。揺すってみても意味のない呻き声しか出てこない。グールにシールを運んで貰おうと思っていたのに……三体の死体を前にして途方に暮れる。
「……むぅ」
とりあえず足元の二体を『穴』に突っ込んで、残りを回収しにおじさんたちの元へ向かった。
「……どうすんのこれ」
独り言は少ない方のKだが、その状況を前にどうしようもなく、とりあえず声に出して呟いてみた。
目の前に死体が三体。
aとグールは折り重なって倒れている。気持ち良さそうに爆睡しやがって…爆酔だ。
部屋はいつも通り二部屋。このままグールとaを同じ部屋に寝かせてもいいものだろうか…。aを引き摺って別室に転移すべきか。
暫らく思案して、結局全て放置する方向に決定した。三人をこの部屋に放置して一人別室を使わせて貰う事にする。そうすればaに危険も無いだろう……多分。
夜風が気持ち良さそうだったので、Kは部屋がある階である二階の渡り廊下を歩いていた。もう少し行くとテラスみたいなものがある。そこで月でも見ようと思っていた。
テラスには先客が居たようだ。月明かりに透けているその姿は。
「──…タクリタン?」
声に反応した影が、ゆっくりと正体を現す。
「──なんだ、貝空…」
そうだ。もうタクちゃんが現れる筈がない。
「どうしたの? っていうか…また勝手に出てきて…」
「べつに。月に呼ばれた」
「まぁ、満月でも三日月でもないけど確かにいい月だよね」
貝空は無愛想だ。タクちゃんみたいにふわりと微笑むことはないし、言葉も乱雑。人型をとればそっくりなのに、似た処は感じ難い。特に命じた訳でもないが、貝空自身普段あまり人型はとらないようだ。主人の心の機微を感じての事かもしれない。
特に会話もなく、ただ二人で月を見た。平凡な、見慣れつつある二つの月。白く温かく優しく輝く老月と、青く冷たく鋭く輝く煌月。質もあり方も違うふたつの光は、それでも似ていて、同じ名前が付けられた。
月──…。
「そういえばさぁ貝空、マスカルウィンに縛られてた時の記憶ってあるの?」
「あ? いや?」
「でもいろいろ知ってんじゃん?」
「俺の記憶じゃねぇな、多分」
あ、そっか。じゃあタクちゃんの……
「ねぇ」
「あ?」
「何処まで知ってるのか知らないけどさ、Kたち最初にね、タクちゃんにゲームを挑まれてるんだよ」
"ここから始まり、おまえたちが何処まで行けるか。見せて貰おう"
あれは、Kたちが諦めさえしないなら、還るまでずっと見守っててくれるってことだった。タクちゃんは、Kたちの大事な保護者だった。Kたちが還れるかどうか、その答えはまだ出ていない。
不意に、貝空が口を開いた。
「その答えは──」
「え?」
月明かりだけの青い闇の中。
星は昇る。
薄明かりの中に刻まれた笑み。
風が、言葉を攫う──
「おょ?」
部屋の戸を開けると、薄暗く星明りに照らされて誰かがベッドに腰掛けていた。
「…だれ?」
目を眇めて慎重に問う。手は取っ手を掴んだままだ。
「俺」
眉根を寄せながらも、その声に安心してKはそっとドアノブから手を離した。
「起きたか。ていうかこっち来ちゃったら駄目じゃん。あっち二人きりになっちゃうじゃんよ」
「俺に床で寝ろってのか?」
不服そうな声はするものの、灯りのない部屋では何も見えない。
「なんだあの二人遂に離れたの」
手探りで灯りを探す。
「あ、点けるな。障る」
「え、…しゃあないなぁ。見えないじゃん……うぉ」
何かに蹴躓きながら空いたベッドを目指す。
「じゃあ後でグール回収して来るわ」
大きく欠伸しながら辿り着いたベッドに倒れこむ。
「俺はベッドで寝られればいい」
ぼす、と恐らく彼もベッドに倒れ込んだのだろう音がする。
「あ」
全く、仕方がない。グールを回収に行こうと『穴』を開きかける。
「もう体調は万全か?」
「はぇ。あ、うん」
寝たんだと思ってたシールの声に大仰に驚いてしまった。
「アイツら羽目外し過ぎだろ。…おまえはちゃんと楽しめたか?」
「一応ね。でもシール居ないんだもん。まさかあんな所で倒れてるとは思わなかった」
楽しんだ量で言えばKが一番かも知れないと思いつつ、意外に起きちゃってるようなのでベッドに深く腰を降ろした。
「…どうにも弱くてな。みっともなくて悪かった」
「あ、いやいや。お酒ダメなら言えば良かったのに。…あー、Kの所為かな…無理に付き合わせたんならごめん」
酒だー♪って目輝かせてたのKだし。
「でもあんな所で倒れてちゃ、どんな目に遭ったか知れないよ。あのおじさんたちが悪い人たちじゃなくて本当良かった」
「…あー…、一応聞いておきたいんだが」
「何」
「何がどうなってた」
珍しく不明瞭な問いだ。恐らくそこには自身に対する恥じらいやその後の様子に対する不安が含まれているのだろう。掻い摘んで説明する。
「えーと、皆で飲んでて、シールがいないなぁって話になって、グールが酔って誰か口説いてるのをaさんが止めに行って、Kがシール探しに行こうとしたら出入口付近でシールが寝てて、aさんかグールに運んで貰おうとしたら二人で仲良く寝こけてやがって。仕方ないから近くのおじさんたちと一杯やってから皆纏めて持って帰ってきたんだよ、Kが」
最後強調。
「なんでそこで『仕方がないからおじさんたちと一杯』になるんだ」
「だって折角なのに皆寝ててつまんないじゃん。まあ死体が三つもあったから本当に一杯しか呑んでないんだけどね。シールもせめて部屋に戻ってるとかさ」
「だから、悪かった。運ばせた事にも礼を言う」
「あー、いいよその辺は。でも本当、気を付けなよシールは」
この子は絶対危ないと思うよ。
「ん、あぁあああ」
大きく伸びをして倒れ込む。流石に眠くなってきた。飲酒量はともかく、もう夜遅い。
「ふぁあ」
「明日もある、おまえももう寝ろ」
「あー。じゃあ、グール回収してくる…」
「爆睡してたぞ、そんな心配も要らんだろ」
「…ん、そぅ…まあいっか。じゃ、ここで。おやすみ、シール」
「ああ、おやすみ」
ああ、なんだか、良い気分…。今頃回り始めたのかな。闇に慣れた目にカーテンの向こうの明かりが眩しい。
そのままゆっくり目を閉じて、安息の紫幕が降りてきた…。
「おはよー! 起きてる?」
元気に扉を開け放つと、ごっと鈍い音がして何かが崩れ落ちた影が見えた。
「あ。K」
正面には拳を突き出したa。
「おはよう」
「───おはよう」
何事もなしと言わんばかりに手首を回して挨拶を返したaに、視線を落としたままもう一度挨拶をした。床で伸びているのはグール。
「…何があったの?」
「ちょっとね」
なんとも言えない気持ちで床で気持ち良さそうに寝続けているグールを見下していると、後からシールも顔を覗かせた。すぐに床に落ちているグールに気付いて眉を顰める。
「なにしてんだコイツは」
起こそうとしたのかは定かじゃないが、シールがしゃがみこんでグールに手を伸ばした。
「あっ、やめた方が…」
aが慌てた様子で警告を発するも、手遅れ。すぅっとグールの腕がシールへ延ばされ──
「──!? !!?」
ぎゅうっと、シールを強く抱き寄せた。
「なっ、 なッ!? 離せッ!」
「ぶはははははははははははははッ」
シールは必死に抵抗しているがグールは抱き枕を抱え込むようにホールドして離さない。ごめん爆笑が止まらない。
「寝惚けてるらしいんだよね…」
aが肩を震わせながら言う。笑ってるけどつまり、aもさっきコレを喰らったんだろう。やばい苦しい。蹲って地を叩きながら笑い続ける。
「笑ってないでコイツを退けろッ」
「その内口説き始めるよ」
「やべぇグール楽しいな」
シールが如何に暴れようとグールの拘束から逃れることは出来ない。こっちとしては面白いからもう少し見ていたいのだが。
「おまえらコレを『口説く』と言うのか。ハッ、文化の違いだな」
涙目のシールの服の中に、グールの手が入り込んでいる。あー、口説き始める前にコトを済ませちゃいそうだな。
「仕方ない、止めるか」
「で、今日はどうするの?」
「さって。どうするかねぇ」
グールはaに良い一撃を貰って目覚めが遠のいた。取り敢えずベッドに移してあげたが、もう暫く起きないだろう。シールはご立腹で部屋に戻ってしまった。まぁちょっと可哀想だったので暫くそっとしておくことにした。
そうしてグールが寝ている横でaと雑談をして過ごして暫く。
「…る…ぃ……」
「は?」
不明瞭な呻き声が聞こえてグールへ目を向ける。眉根を寄せて何か言っているが、覚醒している風でもない。寝言か?
「…るさ、い……だまれ…」
寝てんのに横でくっちゃべんなってこと? aがイラっとしたらしく、口を開きかけたところで―…
「うるさいッ、黙れって言ってるんだ!」
怒鳴りながら、勢いよく上半身を起こした。びっくりして言葉もない。て言うか標準語だったろ、今の。
目を見開いてじっと自分を見つめるKたちに気付いたグールは
「───…あ? どないしたん?」
頭を押さえつつもぼんやりした眼で首を傾げた。
「ただの寝惚けかよッ」
「あだだだだ、何すんねん!」
「ビビったっつーの!!」
「こらっ、やめぇ!」
ふたりでひとしきり殴る蹴るの暴行を加え、少し気が済んだところで距離を取る。
「いった…なんやねんなも~~…えぇ夢見とったのにしつこく呼びよって…挙句にコレかい」
「イイ夢って…」
「っていうか呼んでない」
aのキレ気味のセリフがなければKの邪推が駄々洩れになるところだった。危なかった。
対してグールは納得いかなさそうに首を捻る。
「いや、あんなうるさく──…」
「だから、夢でしょ?」
やだわこの寝惚っけー。グールは首を捻ったまま何処か遠くを見るように
「いや…あれは──」
海辺の街へ戻ってきた。ボタンさん達が居た街だ。シールはまだご機嫌が直っていなかった。ぶすぅっとしているが、諦めて欲しい。シールが居ないとKぐらんちぇに食べられてしまうので。
「サクラさーん、ボタンさーん」
呼びかけながら家の戸を叩くが、反応がない。留守だろうかと思いかけた時、かちゃりと開いた戸から初めてみる女の子が顔を半分覗かせた。
「──誰? サクラとボタンは今居ないよ。クルマを探しに行ってるわ」
クルマ?
「あなたたちがサクラたちの処に来てた『客』?」
その問いにひとつ肯くと、少女はふんわりした外見に似合わぬ鋭い瞳をこちらへ向けた。
「ならクルマを探してきて。あなたたちを追って出てったんだから」
「そっかぁ。ボタンさんの弟くんクルマくんなんだー」
4人はぼんやりと浜辺を歩く。
「…モテるねグール」
「俺の所為なんか…?」
そうなんじゃないかな。
「しかし探せったってなー」
Kたちを追って──というのならと、昨日のルートでぐらんちぇの岩場が見える浜まで来てみたが…
「居たぞ」
シールの視線を辿ると、確かに居た。少年がひとり、こちらへ走ってきている。彼もこちらに気付いたようだ。
「あっ、昨日の!」
ただその背後に、ただならぬモノを引き連れている。ただこちらへ走っていた少年は、明確にKたちの方へ走り寄ってきた。
「丁度良かった!」
やばい。いやアレはやばい。Kは顔が引き攣るのを感じた。aは口角が上がっていく。
「助けて!」
少年を追いかけているのは、クソデカい図体の真っ黒なうねり。バチバチと時折火花を散らして、明らかに雷属性であると示している。赤い眼をギラギラと輝かせ、切り裂いたような大きな口からは真っ赤な舌が覗く。
「何アレ~…黒龍?」
ぐらんちぇよりよっぽど禍々しい形をしている。aは臨戦態勢をとりながらも、「強そう!」とわくわくしてる。龍と思しき奴もこちらに気付き、邪魔立て許さじと牙を剥いてきた。いよいよ射程圏内。
「うわ、来るぞK!!」
「aさん嬉しそうね…」
いやまあ、乗り気ではないけれど。向かって来るならお相手しましょう。
「つ、強かった…!」
「じゃ、この子は──…驪っと」
aがぶっ飛ばして遂に意識を失った黒龍を玄獣化。強かった。そりゃあ玄霊ほどじゃないけど、かなり強かった。
「新たな召喚獣ゲット~」
「なんか…青龍ちゃんと相性悪いみたいだけど」
『穴』の中を覗きながらaが零す。
なんかケンカを始めたっぽい。同じ召喚獣同士仲良くして欲しいものです。
グールの後ろにぴったりくっついて戦闘を見守っていたクルマ君を振り返る。
「で? なんであんなのに追われてたの君」
「え…それは…」
クルマ少年は途端にキョドり、目を彷徨わせながら両手で自らの頬を覆った。
「呼ばれたって言うか…何となく歩いてたらいつの間にか…記憶が曖昧で──不気味」
「てゆーかなんでふらっと出てっちゃうのよ! 約束してたじゃんバカー!!」
どごっと。aを彷彿とさせる正拳突でクルマ君は吹っ飛ばされた。先程応対してくれた少女に。
「いやあの…覚えてた、覚えてたよ? それ迄に戻るつもりで…」
「うるさーい!」
おたおたと弁解するクルマ君を二度目のパンチが襲う。恐ろしい。
因みに少女はサクラさんの妹だそうだ。イセちゃんというらしい。
「ったく迷惑な」
「黒角に追われてたとか…マジで…」
呆れつつも安堵を隠し切れない様子でボタンさんとサクラさんは溜息を吐いた。あのままKたちが出会わなかったら、命は危なかったかも知れない。それはそれとして。
「ニゲルコルヌ?」
「さっきの竜だな」
「あー、驪」
黒龍と呼んでいたけど、黒角というのが種族名だそうだ。大差ない。
「クルマー、お礼言ったの?」
「あっまだ! ありがとうございました!!」
素直で元気で大変宜しい。とはいえ、Kもaも本来此処へ戻る気は無かったワケで。
「お礼ならグールかな」
「そうだね。うるさかったのグールだし」
aが悪い顔している。それをクルマ君がどう受け取るか解った上で、グールへの嫌がらせだ。
「え」
「クルマ君をユメに見たんだってさ? 不思議だねー?」
aに乗っかって、グールを肘でつつく。グールは大層不快そうにするが、真実なので強く反抗はしてこない。
「え…」
「!!!」
頬を赤らめたクルマ君を見て、イセちゃんが跳ねた。思いっきり頬を膨らませて、ぽかすかと無言のままクルマ君を殴り続ける。そう威力はないようで、腕で軽くガードしながら困惑しつつもクルマ君はその攻撃を受け続けている。
その脇で、グールはじぃっとボタンを見つめていた。
「 ? 何?」
サクラは警戒態勢だ。ぐるる、と身を低くしてグールに牙を剥いている。
──ねぇ、もう一度戻ってきてくれないかな?
少年がひとり危機なんだ
助けてくれると嬉しいな
ね、頼むよ ──
夢の中でうるさく呼びかけてきた人物の姿がボタンに重なる。よく似た顔。けれど、違う顔。
あれは何だったのか。
きょとんと自分をまっすぐ見つめ返すその顔をいくら眺めても、答えは出そうになかった。
「──何? クルマ嫁に貰ってくれるの?」
「要らん!」
街外れの山際から、街と海を見下ろして老人はひとり小さく笑った。
「なんとも、今代は血の濃い者が多い」
かたわらの猫を撫でる。猫はぐるぐると喉を鳴らした。
「なんとなく懐かしくなって、つい構ってしまうわい」
腰掛けていた岩から軽快に飛び降りる。
「さて。帰ろうかの、レザンや」
老人の姿が霧のように霞み、消える。代わりに現れた白い毛並みの大きな竜は、翼猫を伴って悠々と北の空へと飛んで行った。




