表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/47

初めての交渉

前回のあらすじ

とうぞくしゅうげきなう

なんか馬車に偉い人が載ってる

ふむ、詰んではいなかったようだ。しかし私としては自爆した方がよほど気が楽だっただろう。


私の見間違いでなければ、いや、

見間違いではないのは分かっているがどうしても認めたくないの事である。あれはやばい。


私の視界には二人の人型が映っている。

その人型達は何やら親し気に話した後こちらに向かってくる。

その様は母子のように見えなくもない。

見えなくはないのだがあれらがまっとうな人間であると私は思わない。


人体改造、それはこの帝国において禁術とされている。

倫理的な観点からとされているがそうではない。

たいていの場合、有用なレベルの人体改造を施すと死ぬのだが問題はそこではない。

有用なレベルの改造を施すことに成功したものはどこか精神的に壊れているのだ。

私の場合恐怖心の欠如、そしてたいていの人を駒としか見れなくなっている。

私の場合、これでもましな方なのだ。私はかなりいい素材を使って改造できたから。

だが、これが私のような特殊な場合以外の有用なレベルの人体改造を受けたものはどこかで暴走する。

有用なレベルの人体改造を受けたものが暴れるとなかなかに被害が出る。

だから禁術とされていうのだ。


閑話休題


とにかく私は自分の体を改造している。

その例として目が挙げられる。

およそ五十年ほど前に殺された始祖龍の目を使って改造した。

さすがに丸々は使えなかったがこの性能はすごいものです。


そしてこの事実を他の皇位継承権持ちの者達も知っているはず。

禁術を使ったという弱点があるからこそ暗殺などといった手段はとられないと思っていたが甘かった。


いや、そのことは置いといて。

私の魔力、調子のいい時は魂まで見えてしまう私の目は二人の化け物をとらえている。

大きい方の人型からは特にやば気なものを感じる。魔力なはずなのに魔力とは異質な何か。


それに先ほど、私の結界が壊されたその時、私は確かに見た。


刺客たちが消滅していく姿を、そして消滅した後には何も残らなかったのを。


消滅など普通ではない。

跡形もなく焼き尽くそうとも灰は残る。

他の属性でどうにかしようとも何らかの後は残るし、一瞬で消滅などありえない。

私などには到底わからない何か。

装いから判断するに魔女のようだ。おそらく小国なら国落としも可能な存在。


そして小さい方の人型。

あれはまったく分からない。

そこにいるはずなのに私の目では普通の視界しか見えない。

この辺りでは少し珍しい黒髪で整った顔立ちをしている。私が分かるのはそれだけ。

始祖龍の目を使って改造した私の目がそれだけしか見えないのだ。


どちらにしろまともな存在ではない。

そんな存在達が私の方に近づいてくる。

もしや、道中拾ったこの子が関連しているのか。

その幼い身に流れる膨大な魔力、そしてその魔力は人間とは感じが違う。

あまりにも無防備に寝ているものだから襲われてはいけないと取りあえず保護したがずっと寝ている存在。


よし、最初にこの子の事を説明するとしよう。








「こっこんにちは」

「・・・・・こんにちは」

なんとも常識的な挨拶を大きい方の人型がしてきたので驚いて返事に間が開いてしまった。

そうだ。やば気な存在だとしても普通の感性を持っている可能性もあるのだから。


「どういったご用件で?」

「えーっと、その、なんといいますか、あの・・・・・・

 どういうご用件ですか?」

あれ、会話が通じてない?

やはり普通の存在ではないのだろうか。そうだとしたら相手の逆鱗がどこにあるかわからないから困る。

そんなことを考えていると空中に糸が伸びてきて文字を形作る。


【交渉】

「あっ、そうです。交渉に来たんです。交渉してもいいですか?」

「・・・・・・はい」

なんなんだろう、この人型は。

ああ、糸は小さい方の人型が出している様だ。念糸の扱いはとても上手い。

どうやら小さい方の人型は魔術系の存在らしい。

そのなりから近接系の存在とは見えないから当たり前かもしれないが。


「それで交渉なんですけど、ペンダントください。」

そういって大きい方の人型が上に乗せてくれというように手を出す。



「ええい、姫様が咎めないから黙って聞いていればっ!!

 姫様はお前たちのような下賤の者が気安く会話できるような存在ではないのですよ!

 そのうえ、言うに事欠いてペンダントをよこせですって?

 このペンダントは高貴な者にしか」

 「やめなさい」

ちょっと、あまり相手を刺激するようなことはやめてほしい。

私が咎めないのを気づいているなら私が咎めない理由がある事も気付いてほしい。

どれだけやばい存在を相手にしているのか少しぐらいわかってほしい。


「いいえ、やめません。

 だいたい姫様が甘くするからこういう下賤な存在がつけあがるのです。

 そうやって」

「《風の元素。偽装するは礫。穿て。風弾。》」

魔術が発動しました。

風弾の名のとおり風が弾となり侍女の腹部をうがちます。

「ひぐっ」

そんな声をあげ侍女は崩れ落ちる。

「あ、ぐ、ひ・・・さま?」

「《風の元素。偽装するは礫。穿て。風弾。》」

まだ意識があったので追撃して意識を刈り取ります。


「侍女が失礼。もし必要であれば命を持って償わせるので、どうかご容赦を。」

侍女の非礼を慌てて謝罪する。

小国なら国落としが可能な存在に対して先ほどの対応はうかつすぎる。

私のような目を持たずとも刺客たち(侍女がただの賊だと思ってるのは知ってる)を

消滅さしたところを見ていれば明らかにやばい存在だと気付けるだろうに。

そもそもこんな人目がない所で自分たちより強い者の機嫌を損ねるなどありえない。

別に相手としたら私たちを殺して奪ってもあまり支障はないだろうし。

そういったリスクから考えると侍女の命一つですむならしょうがない、と判断するのは普通だろう。


「ひぃっ!」

だというのになぜかおびえられた。

大きい方の人型は小さい方の人型の後ろに隠れようとしている。

まあ、全然隠れれてないわけだが。むしろ隠れていない部分の方が大きい。

なにしろ身長が違いすぎる。


「なっなんなんですかあの人はっ!怖すぎですよ。なんか急にお付きの人を攻撃しだしましたし。

 狂ってますって。というよりあの人の目、変ですって。しかもそんな目でじーっとみてくるんですよ。

 無理ですよ。やっぱり私に交渉なんて無理だったんですよ。あきらめましょうよ。

 かわってくださいよー。」

なんだかとても失礼な事を言われてるような気がするがこちらから文句をつけることはできない。

そうしなければわざわざ侍女を沈めた意味がない。


その後しばらく小さい方による大きい方への説得が行われた。

私は完璧に放置されている。

交渉としてみたら私を放置しての相談(激励)は相手の交渉時の弱みとなるからいいのだけど。

なかなかの時間がたってから大きい方は私との交渉に戻る姿勢を見せた。

つまり小さい方の陰から出てきた。(元からあまり陰になってなかったけど)

そしてその腰は引けているわけだけど。


「そ、そのーですね。そのペンダントをもらえたらなー、って、思ってまして。

 どうにかもらえないかなー、って。ど、どうですか?」


なんだかこの様子を見ているとどうとでもなる気がする。

あまりにもやり込めすぎると後ろの小さい方が出てくるとは思うからある程度でしかないだろうけど。


「あの、その、やっぱり無理ですか?」

私が思考に沈んでいた間に相手は勝手に動揺している様だ。

城の狸ども、失礼、狸たちがこうも簡単な人物であればいいのだけど。

もう少し動揺させてから一気に畳みかけたいところだが。


ちら、と小さい方を見る。

特に何も表情を変えていない。

それがポーカーフェイス故のものなのか特に何も感じていないからなのか。

このような交渉が明らかに下手な存在に交渉を任せるという事は大きい方に経験を積ませたいという事。

そうであればこの明らかに交渉がうまくいってない状況に何も感じないという事はないはず。

となればポーカーフェイスとみるのが妥当だろう。

やはりあまりやりすぎるのはやめといたほうが妥当だろう。


「あの」

「命を助けてもらっておいて名前も名乗らず失礼を。私はアレイシアと言います。

 名前を聞かせてもらっても?」

あえて私人としての名を使った。

帝室のものとして助けてもらうのと個人として助けてもらうのとでは違いが大きい。

今回は帝室の内輪もめのような形である。

帝室の内輪もめで小さい方に傷を負わせたとなれば報復活動が帝室にまで及びかねない。

だからこそ私という個人を狙った刺客とのいざこざに巻き込まれたという形にしたかった。

報復活動の事を置いておいても、帝室のいざこざに一般人(とみられるだろう存在)

を巻き込んだというのは外聞が悪い。


後、相手がどれほど事情を知っているのかを図る意味もあった。


そして私が私人としての名を名乗れば相手はそれに何らかの事情があるのだろうとふつうは察する。

察して私を私人として対応してくれるのだが、



「あっ、はい。知ってます。シュペーレ・トゥレス・ヘルミオネ・アレイシア・マクシーン・モニカ

 ・マジーア・イスナーニ・ソーン・イル・サーシー・セクス・フィラ・フィーアさんですよね。

 さっき聞きました。私はアンニカと言います。よろしくお願いします。」


私は戦慄した。

私の名前のすべてを知っており、かつ覚えていて、しかもまったくよどまずに言えたのもそうだけど、

その空気の読め無さに。

交渉がしやすいとさっきは思ったけど、未熟な者なら未熟な者で面倒だ。


いけない、相手のペースに乗せられては。

「そちらの方はなんというお名前なのか聞いても?」


「えーっと・・・・・・・どう答えたらいいんですか?」

もう小さい方が交渉役をしたらいいのではないだろうか。

めんどくさい。


小さい方が前に出てくる。

【お初にお目にかかります。私の名は故有ってございません。

 帝室の方に名乗らせたにもかかわらず名乗れない非礼、どうかご容赦願います】

そういって胸に左手を当て礼をする。

「分かった。許す。名がなければ名乗れないのはどうしようもない」


名がないというのはさすがに嘘だろう。

となると名を名乗れない存在。密入国者の類の可能性が一番高いだろう。

他の可能性としては他国の王族、貴族、軍籍の者、犯罪者、そんなところだろう。


まあ、それはどうでもいいのだが。

何しろ私はどれにしろこの状況下では咎めることはできないのだから。

それから私は咎めることはできないのだがもう一つ非礼がある。

小さい方の存在は胸に手を当てて礼をする、という同格の者に対する礼をした。

しかし帝室である私に対して同格の者への礼をするというのは非礼に当たる。

帝室に対しては上位者へのの礼をしなければいけないのだ。

上位者への礼は片膝をついて右手を胸に当てる。

この礼には利き手を自由に動かせないようにしてあなたのするがままに任せます、という意味だ。

まあ、実際は胸に当てるだけだから利き手も自由に動かせるし、左手が利き手の者もいる。

とはいえ、そういう意味を含んでいるのも事実なわけで。



この小さい方おそらく上位者への礼を知っていてあえて同格の者への礼をした。

大きい方、アンニカがさっき私の名を知ったといっっていた。

二人しかいないのだから必然的にこの小さい方が教えたのだろう。

私の名は有名だが、有名ではない。

ヘルミオネという公人としての名前は有名だ。アレイシアという名前も少しは世に広まっている。

ただ、私の名前をすべて言える人となると結構限られる。

そんな私の名前を知っている人が上位の者への礼程度知らないわけはない。

つまり形式上であろうとも私を上位者としないと宣言したも同じ。


やはり小さい方は除外して大きい方とのみ交渉をした方がいいだろう。厄介すぎる。



「お互い名乗りも終わったことですし、交渉に戻りましょうか。」

私は意識してにっこりと大きい方の目をじっと見ながら笑った。

決して小さい方を見ないように注意しながら。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ