第六話 異変
ガルミリアの正門前――2人が到着した時には、すでに冒険者たちがゴブリンやワーウルフといったここ近辺に生息する魔物と戦っている姿があった。戦っていた冒険者はレスカと同様、この街の冒険者組合に属している証である腕章を付けている連中だった。
建造物より草原のような自然が多くある田舎のような街の規模からして、冒険者の人数は多い方だったが、対する魔物の数はその倍。量で押されれば多少の苦戦を強いられる。
だが本当の問題は【魔物の量】ではなかった。
「な、なんだこいつら…くっ!?」
一人の冒険者が6体の魔物に囲まれて、四方八方からの攻撃を盾で防いでる姿があった。
ユウがその違和感にようやく気が付いた。
ゴブリンが棍棒で攻撃をし終わったタイミングで、ワーウルフが横から飛び出して冒険者の隙を見計らって突進していた。
『連携…している』
ユウがボソッと呟いた言葉の通り…魔物がまるで冒険者たちの同じように、連携を取って戦闘を行っていたのだ。孤立した相手を囲んで確実に仕留めるというパーティー特有の動きをあの魔物たちが成し遂げていた。
本来どんな魔物だろうと、種族が違う魔物同士は一緒に戦うなんてありえないことだった
そんなことを考えていている間に、ダッ!と隣から走り出す音がした
「ユウ!考えている暇はねぇぞ!」
ユウはレスカの言葉でハッとした。他の冒険者も戦っていて乱戦状態の中、今あの人を助けられるのは自分たちしかいない。ボーっと考えている暇などなかった
思考を止めて、大剣を手に構えて飛び出した。
グジャッ!
レスカはとてつもない速度で冒険者の前方にいる魔物の懐に入って、そのまま一体目のゴブリンの頭目掛けて拳をまっすぐ突き出して粉砕した。何かが飛び散った音と共に、魔物は首がない状態でぶっ倒れた。ユウの目には一瞬で頭部が無くなった魔物の姿があり、やはりレスカの動きを目で追うことができなかった。
(…僕もあれくらい動ければ)
そう思ったのも束の間、ユウは冒険者の後方に向かって駆け寄り、両手で柄を握り締めてすぐさま黒い刀身を魔物目掛けて振り下ろした。
大剣が弧を描く。
不意にゴブリンの緑色の瞳が、笑っているように見えた。
――当たる。
そう思った瞬間、刃は何も捕らえずに地面を叩いた。衝撃が腕から肩へ、肩から背骨へ駆け上がり、視界が揺れる。
「っ……!」
顔を上げれば、ゴブリンは三歩先にいた。息一つ乱していない状態で。
二度目も、三度目も、同じだった。何度も振り下ろした大剣は全て空を切る音だけで相手にはまるで届かなかった。
「なんで…なんでかすりもしないんだ」
相手は洞窟で戦った時のゴブリンより機敏で、明らかに強かった。大剣を使い始めてから初の戦闘をするユウにとって、あまりにも分が悪かった。
そして剣を振る前に、ユウは結果に気が付いてしまった。この一撃も外れる。次の一撃も外れる。自分の動きは、最初からすべて読まれている。
悔しさを抑えるように、くちびるを血がにじむほど嚙みしめて再び大剣を振り下ろした。
「はあ!!!」
ゴォッッ!!
とてつもない鈍重な風切り音が響き、刃は敵のいた場所を通り越して地面を叩き割った。突然の轟音にレスカは戦闘中に一瞬振り向いた。
「ユウ…?」
レスカは土煙が立ち上っている方向をじっと見つめて、魔物とユウの姿を視界に収めた。だが、そこに魔物が倒れた姿はなかった。
「ギャギャ!!」
ゴブリンはまたもあっさりと大剣の射程圏外に立っていた。馬鹿にするように高らかに笑いながら、残った魔物に指で合図を出した。
すると冒険者の周りをいた魔物は冒険者たちから離れ始めた。
「な、なんだこいつら、急に――」
冒険者は困惑した表情でその動きを見ていた。
そして魔物たちがユウを囲うように立ちふさがった。ゴブリンの行動は、この3人の中で一番倒しやすい相手を標的にしようという意図が透けて見えていた。
「はは、そうか…僕が一番弱いってことか」
乾いた笑いしか出てこなかった。ユウはそこから何を思ったのか…ゆっくりと構えを解いて、大剣は右手に宙ぶらりんに握られているだけの状態になった。無防備な男が突っ立っている異様な光景だった。
ゴブリンは相手が諦めてたと思い、さらに嘲笑しまくった。




