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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第ニ章 騎士として

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36.いい雰囲気だったのに、お父様が邪魔をする

 ナユタはリエル皇子と騎士二人が会話する様子を、木陰から眺めていた。


(何を話していたのかな? )


 パトシュナ子爵とパーヤルが去った後。

 そっと後ろからリエルに声をかける。


「リエル殿下に御挨拶申し上げます」

「あぁ、ナユタ、来たのか」

「昨日は、皇家のご会食いかがでしたか? 有意義な時間を過ごせましたか?」

「そうだな 。自分の考えは伝わったと思う」


 ナユタは、リエルが何か吹っ切れたように感じた。


「先程、騎士二人と話されてましたね」

「あぁ……彼らも思うところがあったのだろう」

「犯人でしょうか?」

「僕も同じようなものだ」

「はあ?」


 ナユタは、また皇子が感傷的的になっていると察知する。


「殿下の何が彼らと同じなのですか?」

「⋯⋯良かったと思ったんだ」

「良かった?」

「リリィじゃなくて」


 リエルは、そこまで口にして下を向く。

 何かに悔いているようだ。


亡骸(なきがら)の鳥を、リリィとは別の鳥だとわかった時⋯⋯リリィじゃなくて良かったと!」


 彼の少し興奮して荒げた声が響く。


「死んだのがリリィじゃなくて良かったと、思ってしまったんだ!」


 瞬間。

 風の音だけが二人をかすめる。


 ナユタは目をぱちくりさせた。


「⋯⋯普通じゃないですか?」

「いや、こんな考えが争いを生むんだ」


 リエルは言葉を続ける。


「傷ついたり死ぬのが、自分じゃないから家族じゃないから友じゃないから⋯⋯これが戦争が回避できない原因なんだよ 。 この国の皇子として、人の傷みがわかる人間でないと」


「それに⋯⋯今回の黒幕を絶たないと、またこういうことが繰り返される 。彼らは罪を着せられたにすぎない」


 彼はただ自分を責める言葉を続ける。 

 そんなリエルに、ナユタはやはり自分の選んだ人に間違いはなかったと確信した。


「とても人間(・・)らしい考え方ですね」

「⋯⋯ナユタ?」

「自分と大切な人や動物が無事で喜ぶなんて、いたって正常です。 殿下はもう少し負担を軽くしてください」

「⋯⋯そうかな」

「ただ、私はそんな殿下が好きです」


 突然のナユタの告白に、リエルは目を見開いた。


「いつも皆を良くしようと悩む殿下が大好きです」


 リエルは顔から火が出るかのように、真っ赤になった。

 ナユタは彼の両手を包み強く握る。


「ち、ちょっと急に……っっ」

「ふふ……慌てる皇子様もかわいいです」


 ナユタは自身も照れながらも、自分の気持ちを素直に伝えた。

 思わず、告白してしまった。

 心臓がどくんどくんとうるさく響く。


 その時ーー


「ナユターー! ここにいたのか!  アルパスのクッキー持ってきたぞーー!」


 父のレオンが大声でナユタの名前を叫びながら駆け寄る。

 その瞬間、二人は手を離しうつむいた。


「ほら、これを見ろ ! メイドが一時間並んで買ったんだぞ!  菓子メーカーはアルパスでいいんだろ? これだろ?」


 ナユタは思わずた息をついた。


「はあ~~、お父様は本当に空気を読めない天才ですね!」

「な、なぜ怒ってるんだっっ! 娘の機嫌取るのに必死なんだぞ、父親ってのは!」

「アルパスだろうがカルパスだろうが、お父様は今とても罪深いことをされました」

「あ、リエル殿下に御挨拶申し上げます」


 レオンはやっとリエル皇子の存在に気がつく。


「これは失敬、二人きりだったのか」


 とたんに、レオンがニヤニヤし始めた。


「下品な笑顔です、お父様」

「私とリエル皇子とどっちが大事……」

「わざとそういう質問して傷つきたいのですね……悪趣味です」


 思春期の少女と父親のやり取りに、リエル皇子は自然と笑顔みがこぼれた。


(僕には味方の数は少ないが、絶対的な味方がいる。)


 リエルはまだナユタの告白の余韻に浸りながら、言い合う父娘を眺めていた。


 ※ ※ ※


「もうリリィとは会わない方がいいと思ったんだ」


 リエルの部屋のテーブルの上。

 夜のピンクの小鳥とリエルの小さなお茶会。

 木の実をついばみながら、リリィは皇子の話を聞く。


「リリィは僕の弱点なんだよ。僕の騎士達が優秀で、なかなか僕自身を消せないから、愛するものを消す方向にシフトしたんだ」


(あ、愛するもの……)


 リリィはバタバタと羽を動かし、顔を覆い、リエルの背中を羽でバンバン叩く。


「鳥も照れるのか……とゆーか殺されるかどうかの切羽詰まった話してるんだけど」


 リリィはピィピィ鳴いて、『私は強いから大丈夫』 と伝えた。


「⋯⋯何か一生懸命お喋りしてくれてるの? かわいいね」


(か、かわいい⋯⋯っっ)


 リリィはまたバタバタ動き、リエルをバンバン叩いた。


「これずっと繰り返すの⋯⋯?」


 リエルはけらけら笑いながら、リリィの頭をなでた。


「でも、決めたんだ。 僕はもう逃げたくない。 僕を狙う奴らの思い通りにさせたくない 。リリィは僕が守るから、今まで通り一緒に寝よう」


(い、一緒に寝、ね……っっ! )


 リリィはゆでダコのように真っ赤になり、後ろに倒れた。


(人間だったら、鼻血を出していたかも……)


「ちょっっ! リリィッ! しっかりっっ!」


(皇子様⋯⋯絶対確信犯でしょ、これ)


 リリィは倒れながら、リエルを恨めしそうに睨んでいた。

最後までお読みいただきありがとうございます


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