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鳥囲まれた不吉第二皇子 【改稿版】  作者: 夢野少尉
第ニ章 騎士として

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33/33

32.アンナの一生はアンナのもの

 ナユタは自室でネズミの姿になり、皇后の部屋に向かった。

 彼女は激しく後悔する。


 ーーあの中級騎士は「人間(ナユタ)」ではなく、「モモイロノトリ(リリィ)」を監視してたんだ! アンナを(リリィ)と勘違いして、アンナが犠牲になったんだ! 


 皇后の部屋に向かう途中、メイド達が口々に先程の事件を噂する。


「リエル殿下が大切にされている鳥が狙われたんですって」

「別の鳥だったんでしょ? 良かったわねーー」

「でも、殿下はやっぱりショックを受けられたみたいよ」


 ネズミに化けているリリィは、複雑な心境になるが皇后の部屋を目指して走る。

 部屋の扉前の護衛騎士の足元をすり抜け、扉の下の隙間をくぐり侵入。


 すると、あの監視をしていた騎士が⋯⋯いた!


 アリシア皇后が一方的にその騎士を非難している。


「あなたはターゲットの小鳥一羽さえ処分できないの?」

「申し訳ございません……モモイロノトリはあまり区別する特徴がなく……」

「いいわけは聞きたくないわ !  もう下がりなさい !  顔も見たくないっっ!」


 バシンッーー!!


 皇后は持っていた扇子を床に叩きつけた。


「はい! 失礼いたします!」


 中級騎士は皇后の激昂に慌てて退出した。

 ネズミのリリィも彼の後を追うように、部屋の扉の下から廊下に出る。 その後、リリィは自室でネズミから小鳥に戻った。


 ※ 

 一時間後。

 リリィの姿でリエルを窓の外の小枝から観察。

 彼は塞ぎ込み考えを巡らせてるようだ。


『リリィ また皇子様見てるの?』


 背後から、仲間の声がする。ハンナだ!


『ハ、ハンナ⋯⋯』

『どうしたの、何かあった?』

『アンナが⋯⋯死んじゃって⋯⋯』

『ああ、聞いたわよ。 人間に殺されちゃったんでしょ?』


 リリィは、あまりにも淡々と応えるハンナに驚く。


『私と間違えられて、殺されちゃって……私のせいでっっ!』


 リリィは興奮気味にピィピィと鳴く。

 ハンナはきょとんとしていた。


『殺したのはリリィなの?』

『な、何故私が? 違うわよっ! 私と間違えられて殺されたのよっ! 皇子様の心を傷つけるために⋯⋯』

『ちょっと待って!』


 リリィが捲し立てると、ハンナが鳴き声でリリィの訴えを遮った。


『アンナはあくまでも人間に襲われて命を絶った 。それだけよ。 あなたのせいではないわ』

『ハンナ⋯⋯』

『私たちは常に死と隣り合わせで生きている野生動物よ 。生きるか死ぬか』

『で、でも⋯⋯』

『感情にこんなに振り回されている時点で、あなたは人間になったのよ、内面も』


 リリィは息をのむ。


 ハンナの言う通りだ。「怒り」で頭が真っ白になるなんて。アンナの亡骸を見た瞬間、全身の血が沸騰しているようだった。


『カンナのこと覚えてる? あの子もフクロウに襲われて死んだじゃない? そのときはあんたも淡々としてた。それが今はどう? 確かに原因はあんたかもしれないけど、そこまで取り乱すことはないわ 。生きるも死ぬも私たちにとっては日常なのよ』


 ナユタは返す言葉がなかった。自分はもう心も人間になってしまっている。


『それに、あんたのせいでアンナが死んだとか失礼よ 。アンナはあんたのために生きたわけでもないわ 。アンナの一生はアンナのものよ』


 リリィは鳴き声もあげることができない。

 鳥の姿だが涙が出そうになる。


『私はあんたが鳥でも人間でも気に入ってるのよ。 もし自分が死んで、誰かがここまで傷ついてくれるのは幸せかもね 』

『……ハンナ』

『またご飯もらいに来るわ』

『しばらく皇居は危ないから、シュバルツ家でお喋りしよう』


 リリィが提案した。 


『了解 ! じゃあ、お互い敵には気を付けましょうね』

『ありがとう、ハンナ』


 ハンナはリリィをおいて飛び立っていった。

 その後、リリィは皇后と話してた中級騎士を空から偵察し、情報を集め始めた。

 同僚の騎士との会話を、ひっそりと背後の木陰から聞き耳を立てる。

 今夜、彼は町に飲みに行くようだ。

 リリィは集めた情報をまとめて、一人つぶやいた。


『パトシュナ子爵27歳。 既婚者。一歳の息子の父親か⋯⋯今夜は忙しくなるわね』


 リリィは空を見上げ、ナユタになるために自室へと飛び立った。

 

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