23.異世界でも義兄妹は結婚できます!
「お呼びですか? 父上」
「ああ、そこに座りなさい」
休暇中のある日、キリアンは父の執務室に呼び出された。
ーー 話題は想像がつく。婚約の話だ。でも、今の僕には受け入れることができない。
「お前ももう家門の継承者なのだから、人生計画を立てないとな」
「はい、父上……」
「婚姻請願書が毎日のように届いてるぞ。 私が年齢や家柄を考慮した結果、この3名の令嬢が有力だが……他に希望する令嬢はいるのか? まず、お前から直接聞かないとな。一生添い遂げる令嬢なのだから」
婚姻請願書という名の書類が3枚テーブルの上に広げられた。
「……僕はまだ結婚したくありません」
「もちろん、政略結婚はできればさせたくない 。気になる令嬢がいれば、簡単なパーティーを開いて招待すれば良い 。 お前はシュバルツ家の長男で器量も良いし、若い令嬢が放っておかないだろう?」
キリアンは父の質問に答えず無言を貫く。
「まあ……婚約は人生の一大事だ。相手もいることだし、簡単には決めてはいけないな。しかし、あまり先延ばしもできない。少し考えてみてくれ」
「はい……」
「今日はもう休んでいいぞ」
「失礼します、 おやすみなさい」
キリアンが部屋をでようとした時、レオンが声をかけた。
「……義理の兄妹は、結婚できるぞ」
「!!」
キリアンは振り向かず、拳を握りしめ体を震わす。
彼はその言葉に抗わねばならない。
「俺は……ナユタの兄です!」
キリアンはそのまま父の顔を見ず、執務室を後にした。
「⋯⋯やはり、そうか」
レオンは息子の切ない感情を思いやる。
ーーしかし、キリアンも不毛だな。ナユタはリエル殿下一筋だ。それはそれであの娘の想いも叶うことはない。時間が解決してくれればいいが⋯⋯。
レオンはため息をついて、天井を見上げ目を閉じる。
そして、瞼の裏に映る亡き妻に問いかけた。
ーー子供たちは、幸せになれるのだろうか? ナーシャ、どう思う?
※ ※ ※
リエル皇子は鍛錬場で身体をにいじめていた。
「殿下、そろそろ休憩を取られては……」
稽古の相手をしている皇室騎士団員が進言する。
リエルは1時間ぶっ通しで、体を動かしていた。
肩で息をするほど、呼吸が乱れ、足元もふらついている。
「そこまでです! これ以上は逆にお体に触ります。 お止めください」
皇子をいさめる皇医。
騎士団員達は、口々に心配そうに小声でささやく。
「今日、殺気だってないか?」
「何かあったのかなあ⋯⋯」
「温厚な殿下が珍しい。 」
やっと、皇医の進言通り、リエルは休憩を取った。
皇子は水分を取りながら、鍛錬場のベンチで腰をかけて、皆の練習を眺めていた。
(なんでだろう……イライラする……)
目を閉じて、鳥のさえずりを耳に響かせる。
そして、ナユタの姿が思い浮かべた。
(あと5日あるなぁ……)
キリアンの休暇にあわせて、ナユタにも一週間休暇を与えた。
あんな事件のあった後だ。
未成年には心の安静が必要だろうと判断した。
もうこれ以上自分に関わると、彼女の命が脅かされるかもしれない。
そう思うと遠ざけるのが賢明なのに……。
婚約者候補の3人なんて、なんの感情もわかず断ることがでた。
侍女アリサに裏切られた時でさえ、ここまて動揺しなかった。
ニ日離れただけで、自分がおかしくなるなんて。
自覚はある。
義兄のキリアンでさえ、今一緒にいると思うと胸が痛い。
でも、自分は……「不吉第ニ皇子」とか呼ばれてる。
母マリアン側妃を亡くし、母のように慕っていたシュバルツ侯爵夫人も亡くした。
ヘブァン兄上の失踪事件まで引き起こしたとまで。
使用人や騎士も次々と姿を消す。
自分に関わると、何か起こるのではないか。そんな先入観まで自分自身が捕らわれている。
ーー 母上……ナーシャ夫人……僕はどうすれば幸せになれますか?
リエルは空を見上げ、悠々と舞っている鳥の群れを眺めた。
ーー 夜、リリィに癒してもらおう
彼は一つため息をついて、また一人剣術の稽古を始めた。
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