ニュース 2
リビングに降りてテレビを点ける
明るい音楽が流れ、画面には「モーニング・フラッシュ」の文字
キャスターの女性が笑顔でカメラに向かう
「おはようございます、モーニング・フラッシュのお時間です」
ニュース番組が始まる
「さて、今、全国的に問題となってきている人影騒動…」
適当な食べ物を冷蔵庫から漁りながら、横目でテレビを見つつ、食パンをトースターに放り込む
「今日は科学捜査研究所から、映像解析の専門家・新城さんにお越しいただきました」
カメラが横にパンし、スーツ姿の男が軽く会釈する
「よろしくお願いします」
キャスターがタブレットを手に、例の人影の映像をスタジオの大型モニターに映し出す
「こちらが、先日SNSで拡散された映像です
新城さん、この人影…何なんでしょう?」
新城はモニターを見つめながら、落ち着いた声で答える
「現時点では断定できませんが──
影の動きには、明確なパターンが確認されています」
スタジオが一瞬だけ静まる
キャスターが驚いたように眉を上げる
「パターン…ですか?」
新城は頷き、モニターに映る波形グラフを指す
「複数の映像を比較したところ、影の揺らぎがランダムではなく、一定の周期で繰り返されているんです
これは自然現象では、やや説明が難しい特徴です」
男性キャスターが興味深そうに身を乗り出す
「ということは…AIの誤認識とか、そういう可能性もあるんでしょうか?」
新城は一瞬渋い顔をするも、目を開く
「AI解析でも異常値が出ていますが、誤認識と断定するには情報が足りません
ただ──影にパターンがある、という点だけは確かです」
スタジオの空気が少しだけ重くなったよう
キャスターが笑顔を作りながら締める
「なるほど…まだまだ謎が多いということですね」
たまに音を外して、何度かやり直しをする音楽教師の、音楽の授業
今日も順調に音を外しつつも、ピアノを奏でていた
声楽テストの順番待ちの間、俺は「魔王」の歌詞を何度も目で追いながら、ドイツ語の暗記を必死でしていたが、その中でも、影の話題は止まらない
「パターンがあるってよ
やっぱAIじゃん、アルゴリズムだよ」
得意げに言う男子
すぐに、得意げに言った男子の隣にいた男子が反論する
「パターン=監視だよ
絶対、政府の陰謀だって」
男子は声を上げて笑う
「お前、陰謀論好きすぎ」
「お前はAI信じすぎ」
少しだけふくよかで、若い音楽教師が、ため息まじりで注意する
「あなたたち
お喋りしてないで、覚える事に集中!」
「はーい」
昼休み
屋上でフェンスを掴みながら、築地さんは遠くを見つめている
「パターンって…どうやって解析したんだろう
人影って、もっと…こう、曖昧なものだと思ってたけど
でももし…自然現象じゃないのだとしたら…それはそれで怖い
阿部くんは…どう思う?」
どう思う…って言われても…
視線をそらし、曖昧に応える
「俺には…よく分からない」
「そっか…
だよね…」




