学校の怪談 8
「影の動画、もう上がってる!」
「フェイクじゃね?」
「いや、私も見たって!」
#黒い影
#校庭の怪異
#フェイク動画
#AI生成じゃね?
SNSは影の写真や映像で埋め尽くされていく
どんどん…広まってる…
俺はスマホから目を離して、息を吐いた
廊下の窓からふっと外を眺める
すると、校門前の銅像の下に、黒い人影が立っていた
「また…!」
しかも、銅像と同じポーズを取っている
「ねえ!銅像の下に変な人影みたいなのいる!何あれ!?」
「やばー、同じポーズ取っててウケるんだけど!」
「近く行ってみようよ!」
目の前にいた女子二人がそう言って、はしゃぎながら、俺の横を通り過ぎていく
影はゆっくりと、俺の方へ顔を向けた
その瞬間──腕が激しく疼く
なんで…
なんなんだ…
一体何が…
「阿部くん!!」
「阿部くん、また人影が…!」
腕を押さえながら顔を上げると、築地さん、水天宮先輩が駆け寄って来た
「化学室に…人影が…!」
「オカ研の教室にも…!」
「影が動いて…!」
「動画がもうSNSに…!」
科学部やオカ研にも…
その瞬間、甲高い悲鳴が聞こえて、その方向に目を向ける
先ほどの女子二人が銅像前で、人影に迫られて動けなくなっている様子だった
築地さんが俺の手を掴む
「阿部くん…行こう!」
水天宮先輩も頷く
俺は息を吸い、校門へ向かって走り出した
校門に着くと、銅像の前は人だかり
「うわ…やば…これ何?」
「動いてる…」
「撮れ撮れ!」
「先生呼べよ!!」
その隙間から覗くと
生徒たちの中心に、それはいた
銅像の足元
黒い人影
築地さんが息を呑んだよう
「阿部くん、あれ…」
水天宮先輩が震える声で言う
「部室でさっき見たのと同じだ…」
影が一歩、前に出た
生徒たちが悲鳴を上げる
「やばい!」
「こっち来る!」
「逃げろ!」
…来る!
人影が飛びかかる
その瞬間──腕に痛みが走る
「っ…!!」
思わず膝をついた
築地さんが叫ぶ
「阿部くん!!」
その瞬間、足元が波紋を作るように歪み、眩い黒い光と共に、五芒星の模様が現れる
…また
空気が一瞬で重くなる
まるで深い水の底に沈んだような圧力
そして五芒星の中心から、黒い甲羅のシルエットが立ち上がった
この見た目…知ってる
もしかして…
水天宮先輩が驚いた声で叫ぶ
「あ、阿部くん!これって…
安倍晴明の式神、玄武!?」
玄武はゆっくりと立ち上がり、俺と人影の間に壁のように立ちはだかる
人影が伸ばした腕が、甲羅に触れた瞬間
バチッ
火花が散った
人影の腕が跳ね返り、弾かれる
玄武が低く唸るように震えた
その震えが俺の足元に伝わる
人影は一歩、後ずさった
その瞬間、玄武がさらに光を強め
ズンッ
床に水しぶきが広がる
人影の足元が沈むように歪み、黒い粒子を撒き散らしながら消えた
「消えた…」
「なんか、また地震みたいなの起きなかった?」
「一体なんなんだ…」
生徒たちのざわめきを聞きながら
安堵すると同時に、身体から力が抜けて膝をつく
「阿部くん、大丈夫?」
築地さんが心配そうに寄って来て、肩に優しく触れた
「大丈夫…」
水天宮先輩が、真剣な表情で言う
「阿部くん…
式神も使えるの…?」
俺は顔を上げて、ゆっくり立ち上がりながら、痛みの引いて来た腕を押さえた
「…そう、っぽいですね」
水天宮先輩は目を一瞬見開いた後、沈黙する
俺と、築地さん、水天宮先輩の間には、何とも言えない空気が広がっているように感じた




