表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

3

 なのになんで私が何故、どうして?という思いが、頭の中を駆け巡る。

 帝になった瞬間から今日に至るまで、彼女の葛藤は続いている。

 何に生きる意味を見出すのか、照帝として?女性として?人として?ヒトカミとして?

 とにかく自分らしく生きようという思いは忘れずにいること。

 そんな想いすらも、帝という権威の前では、風前の灯となる。

 帝という位はモチベーションを保つのが難しい、そう桜は思った。


 今日も幕府のお偉方から、帝の認可を得るべくと山のような書状が届いている。

 何も考えず、印可(ハンコを押す)するだけでいいのだが、律儀な桜はいちいち目を通しながら印可を下す。

 なので、理不尽な書状を見る度に具合が悪くなったり、胃がチクチクと傷んだりするのだった。

 今も、簾の中で読む書状の大半がそんな類の物ばかりだった。



壱、幕府の財政危機につき、農民の年貢をあげることを裁可せし旨、何卒よろしく。


(まだ、年貢上げるのかい・・・)


弐、武士は士農工商で最上位の階級である為、今以上に特権を得る事の由、云々。


(知るか・・・どこまで増長するねん。武士)


参、将軍様腹痛、ゆえに見舞いの書状をよこすべく候。


(どんだけ、上様、上から目線)


 四、幕府財政難の為、禁裏(朝廷)への援助金減、及び節約する由。


(やってますよーだ。こちとら、カツカツじゃい)


 五、禁裏領地を明け渡す由。


(土地まで搾取するの?)


 

「ふう」


 思わず、桜は溜息をついてしまった。

 納得出来なくても、判は押さなければならないというこの理不尽さ、歯がゆさとあいまって、帝とは一体という疑問ばかりが頭をもたげる。


 さらに、六つ目の書状に、桜は我が目を疑った。


 六、将軍家高様と後桜町照帝様、御婚儀の御伺い。老中松平右京大夫輝高。


「はあ」


 どういう了見だろうか。

 現照帝と将軍の縁組!

 桜は全身から怒りが込み上げて来る。

 幕府の増長は甚だしい。

 桜は思わず、書状を破り捨てた。


「・・・陛下」


 普段は温厚そのものの桜が、ここまで激昂するのを見て、臣下の者達はただただ平伏するばかりだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ