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 その後、再び将軍家から降嫁催促の使者が、紫辰殿に訪れた。

 何食わぬ顔で前回と同じ内容を読み上げる使者。

 御簾の内側で苦虫をつぶしたような表情を浮かべる桜は、使者の言上を途中で止めた。


「将軍家に朕の意向は伝わっておらぬのか」


「?と言いますと」


 使者は表情を曇らせる。

 全く事情は知らないようだ。


「・・・よい、続けて」


 桜の憤りは頂点に達していた。

 やがて、使者はすべての口上を終えた。


「この件、再度承った。が、そちらが朕の降嫁を望むのなら、それ相応の事をしてもらわねばなるまい・・・そうだな将軍自らが、紫辰殿にお見えになられて、拝謁するというのは・・・どうか」


 将軍自ら上洛し拝謁するという事は、支配者である将軍家にとって受け入れることの出来ない要請である。

 ともすれば、朝廷側の反逆ととらえられても仕方がない。


「陛下!」


 血相を変えた内前が叫ぶ。


「よい。しかとそう伝えよ」


 桜は言い捨て、御簾の向こうから消えた。



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