2-27 ポップコーン・ラプソディ
「そこには押し寄せた大群衆がポップコーンを求めてニンスの如しであった」
クラウスが他人事のように言いながら、鼻歌交じりで串やトウモロコシを焼いている。ちなみにニンスというのはイナゴの事だ。オンサ村じゃよく食べたものだ。結構イケるよ?
「言っておくがクラウス。ニンスが求めるのはポップコーンだけじゃないからな? お前の屋台も人気商品だぞ」
「ゲ、マジで?」
「しっかり焼いておけよ」
そう言い残して、俺は綿菓子機を稼動させた。王族の子供がへばりついて見ている。
「わあ、雲みたい」
「綺麗~」
「美味しそう~」
おや、リュウはこっちがよかったのかな。
「本当に美味しそうですねー。さあ試食を」
「こらあ、アイカ。ポップコーン屋台で、あんなに人が並んでいるだろうが~。ほら、これをやるから!」
俺はアイカとリュウに小さめの綿菓子を渡して屋台に戻らせた。
「さあ、いらはい、いらはい。ドラゴン印の綿菓子だよ~」
ビニール袋は可愛いドラゴンの絵の奴をチョイスした。
こっちも人が集まってしまってヤバかったのだが、前に城に泊まった時に世話になった侍女さんが来てくれて売り子役をやってくれた。
「いや助かります」
「いえいえ、なんか楽しそう」
「みんなで楽しむのが御祭りですから~」
そんなこんなで、えらい騒ぎになってしまったが、お城の人達にも大好評でよかった事だ。
「ほお、これはなかなか盛況だな。だが、これをギルドでやらねばならない理由はなんだ?」
ギルマスは感心しながらも、やや首をかしげながら聞いてきた。
「そりゃあ俺が冒険者だからですよ。こういうのは会社、つまり所属している組織単位でやるんです。あとは行政単位とかでね。まだお試しなので、冒険者ギルドでやるのが筋ってもんです。それを国とか商業ギルドで見てもらって、来年大掛かりにやるかどうか決めたらいいわけで」
今日のイベントも1パーティでやるのは辛かったのだ。来年までにはクランを作らないと、色々対応できそうにない。
「そうか。じゃあ仕方が無い、やってみるか。あの国王達の様子を見るとやらないなんて、とても言えまい」
チラと見たら、チビっ子王子様と一緒にとても楽しそうにしている。
「ええ、何より宰相が承知しないでしょうね」
「じゃあ、明日ギルドに来い。屋台は他にもあるんだよな?」
「ええ、ちょっと人員不足で食い物屋台しか出せていません」
それから、実に夕方まで屋台を稼動して、結局全員お泊まりになったのであった。
「今日は立食パーティにしようか」
国王様の鶴の一言で、夕食はそう決まった。何か昼間の出来事に刺激を受けたらしい。
「楽しみですね~」
「シャルー、御飯楽しみなの~」
「よかったな、リュウ」
食いしん坊どもは大喜びだ。
まあ、他のメンバーだって美味しい物は嬉しいわけだけど。とりあえず、リュウのために可愛いアニメ皿を出してやった。
某有名国産陶器メーカーが超有名アニメのデザインで作った皿もあるのだが、プラスチックの奴にしておいた。どうせ落とすからな~。
「シャル、そのお皿いいなあ」
「リーファン王子、これは王族の子供が使うようなものではありませんよ?」
「リュウちゃんと御揃いがいいの~」
「そうでございますか。それでは」
とりあえず、どうせ他の王族の子も欲しがるので、それなりに数を出しておいた。プラスチックは、常時各種材料の買出しはしているので買い物に不自由はない。
「お箸って便利ですねえ」
切り分けられた料理とかを取り分けて、割り箸で食っているアイカがいた。確かに立ち食いにはぴったりだわ。
「まあね。じゃ俺も」
「じゃあ、練習しようかしら」
ジーンも使い始めた。
「シャル~、僕達もお箸ちょうだい」
「はいはい」
ミアイル君もお箸が気に入ったようだ。仲良しのハンナ王女と一緒にお箸で食べ始めた。もう面倒なので、箸入れに入れた割り箸を2箇所くらいに置いておいた。
次にアイカが狙いをつけたのは、骨付き肉というか、ブルムスのスペアリブだ。箸じゃ摘まみにくいだろうに、器用に摘み上げては齧っている。
すっかり骨の周りの肉の味を堪能しているようだ。王族の人だって、これは手掴みにしているというのに。
「お前なあ。日本人だって、それは手掴みで食うんだぞ」
「チッチッチイ。そんな物は修行の賜物ですよ、シャルも修行が足りないのでは」
アホか。俺も遠慮なく手づかみでいかせてもらった。紙ナプキンは出しておく。
「お、ジーン。これ美味いよ。さすが美味い物探知機のアイカだけの事はある」
「あら、本当。さすが『全知のアイカ』ねえ」
「いや、ジーン。シーフの能力とは関係ないと思うぞ?」
「まあ、それでもアイカについていけば美味しい物は食べられるのですがね」
レミーもブルムスのスペアリブに参加した。彼女も片手に箸を持っている。立ち食いパーティにおける箸の有効性は実利として現実主義者にも認められたようだ。
「リュウは?」
「あそこ」
よく見たら、おチビさん軍団と一緒にお料理巡りをしていたようだ。楽しそうだから放っておこう。
「さあ、アイカ。お次はどれだ?」
「あの肉に行きましょう~」
「肉ばっかりじゃねえか!」
「ここは王家御用達のいい肉ばかり使っているんです。市場にも出回らないような高級品なんですよー。白金貨持っていたって食べられないんですから」
そうだったのか。なんで、そんなことまで知っているんだろうな。そう思いつつも、俺達は優秀なガイドさんの後をぞろぞろと付いていくのだった。




