1-26 金に飽かせて
「おお、雁首揃ったな」
待ち構えていたギルマスが案内してくれた部屋には、高価な装備がぎっしり並んでいた。
俺はオリハルコンの山吹色の輝きに満ちた武器達を横目で見た。これは! 今ある白金貨の山も、いくらも持たないかもなあ。
「ギルマス、俺達もシャルと同じ家に引っ越したいんだが。あのバラクテスがシャルのところに遊びに来るらしいんで俺も小遣い稼ぎがしたいんだ」
ギルマスが破顔して、クラウスの肩をどやした。
「いい根性だ。そうだな、お前ら。バラクテスをソロで倒した奴には問答無用でCランクをくれてやろう」
「お、大盤振る舞いじゃないか。ついでにCランクが3人になったらCランクパーティにしてくれよ」
「それは駄目だ。Cランクが4人になったならCランクパーティでもいいだろう。だが、お前らは全員がCには上がれる実力はあるぞ。無理せずに鍛えていけ。Cランクがもう1人出たら、お前らならDランクパーティにしても大丈夫だろう」
やったぜ、交渉してみるもんだ。普通なら全員CランクでないとCランクパーティは名乗れない。俺が実質Cランクプラスで、ジェンカやレミーは今でも充分Dランクの実力はあるのだ。
俺とクラウスとレミーは高ランクまでいけると踏んでいる。アイカは攻撃力を高めて、近接の能力を鍛えたらいけるかもしれない。他の2人も可能性はあるのだ。
「それでは装備の話に移るぞ。今回はパーティとしての買い付けという事でいいんだな。まずは収納袋。最高級品が入荷した。これは前払いされているものだ。まだ要るようなら予約しておくが、どうする?」
ふーん、どうするかな。だが決めた。
「頼んでおこう。獲物袋として持っていてもいいし。今回の物は素材や商品専用にしたい」
「お前さ、一体どれだけ狩るつもりなんだ?」
クラウスは呆れたような顔で突っ込む。
「売り物にならない、あるいは売りたくないものを累積させる可能性があるんだ。素材として使えるかもしれない。深層に潜るようになったり、とんでもないラッシュに出合ったりする可能性もあるしな。予備の意味合いもある。あんまり何もかも突っ込んでおくと収拾がつかないというのもあるし」
「いいだろう。メンバーが増えたし、グレードアップの意味もある。他の収納袋はいるか? 白金貨2枚のギルドサイズが丁度4個入っているぞ」
「全部もらうよ。これで白金貨18枚か」
俺は、その都度金は渡していった。その方が面倒なくていい。アリシアさんが会計を務め、記録していってくれる。
「次に武器だな。オリハルコンの大剣と長剣、それに槍が入った。大剣は2本あるから、シャルも持っておけ。斬りあうのでなければ魔法剣は武器の大きい方が威力を増す。大剣は白金貨50枚、長剣は30枚だ。槍は80枚だがどうする?」
「全部もらうよ。槍は間合いが広がるからな、タンクの生存率が増す。つまりパーティの安全性が更に確保できる」
これでもう228枚が飛んだ。足りるかな。
「槍は少し習熟が必要だが、わしが少し手ほどきしてやろう。弱い魔物で練習するがいい」
それからギルマスは不思議な色合いをした弓を手に取りニヤリとした。あれ? その矢ってもしかして。
「これは魔法弓でダイダロスと呼ばれる特別なものだ。オリハルコン製の代物だが魔法で弦を引いてくれる。このオリハルコンの矢と組み合わせて使う。こいつはな、魔法剣の使い手が魔法を込められるという代物よ。矢は魔力を帯びているから壊れてしまう事はないので、回収すれば再利用は可能だ。弓は白金貨30枚だが、矢自体は高いぞ。特注しないと手に入らないし在庫は10本しかない。これが白金貨50枚だ」
そんな物は買うに決まっている。そうそう出るものじゃない。うちのパーティにはピッタリの性能だ。それにギルドは冒険者向けにお買い得な値段でこういう物を出してくれる。
引退した冒険者が後輩のために破格の値段で提供してくれる場合もあるのだ。俺の剣やジーンの杖なんかがそうだ。俺の剣はやっぱりギルマスが使っていた奴なんじゃないのかな。剣自体に指導力が満ち溢れている。だから城でも迷う事無く剣でバラクテスを斬った。
「買うよ。元々、その子の弓がメインの買い物だったんだ。普通の矢は撃てないのか?」
「普通の矢を使っても、相当飛距離が伸びるし、命中補正がある。威力も数倍にはなるだろう。そのあたりは本人の資質次第だ」
大当たりの代物だな。これでアイカのCランクは確定したも同然だ。本番でビビらねえように、たっぷり雑魚相手に練習させるか。これで白金貨308枚が飛んだが充分な価値がある。
「スタッフの出物はないかい? この前のほどでなくていいんだが。せっかく強力な魔法使いがいるんだ。普通ならジーンの杖をレミーに回したいとこだが、パーティの生存率を考えるとそれはしたくない。俺も最初に痛い教訓をもらった事だしね」
ギルマスは並んだスタッフの中から2本を選び出した。なんとオリハルコン製で凄い魔石がついている。おいおい、そんな物は残り金額じゃあ絶対に無理だぜ。俺の大剣はキャンセルしてもいいな。クラウスのもどちらかキャンセルでもいいかも。ここはレミーを強化したい。
「これはかつて高名な冒険者が使っていたものだ。ちょっと癖があってな。2本で使って初めて真の威力を発揮するという物だ。これの力を真に引き出すものにしか譲らんという遺言を残してこの世を去った。だから手間賃の白金貨1枚でいい。二刀流の魔法使い自体が滅多にお目にかかれない代物だからな。レミー、これはお前の物だ」
やったぜ。予想外の展開だ。ありがとう、名前も知らない大先輩。これでレミーもおそらくは最低でもCランク以上が確定だ。残り白金貨91枚。
「後は、オリハルコンを張ったミスリルの大盾。これが中古だが、まだビクともせんぞ。白金貨20枚だな」
「買った」
残り白金貨71枚。
「グラムの革で作ったローブ。非力な神官や魔法使いを守るためのものだ。2枚で白金貨10枚だ」
「もちろん買うさ」
愛するジーンの防御力を上げてくれる物だからな。持ってみたが案外と軽くて驚いた。これは簡単に剣で切れないし魔法も防ぐのだ。加工が特殊なんだろうな。いい値段がする分だけの性能はある。これで残り白金貨61枚か。
「後はそうだな。ミスリルのショートソードと短刀はどうだ? オリハルコンは貴重だから、あまり小さい武器は作られん。欲しければ作るしかないな」
「えーと、それはいくらになるんだい?」
「ショートソードが白金貨1枚で短刀が金貨50枚だ。この間は白金貨1枚だったが、あれは中古だからな」
うーん、ショートソードと短刀はサブウエポンで全員が持っていてもいいな。5組買うか。
「じゃあ5セットあるかな」
「ああ、在庫はあるぞ」
残り白金貨53.5枚か。
「あと、何かいい防具はないか?」
「戦士用のミスリルと魔物革で出来た軽量で頑丈な鎧がある。お前が着てもいいだろう。これは一つ5枚だが、2セットなら白金貨8枚に負けてやる。あと、シーフ用の同タイプの簡易な超軽量鎧が各白金貨1枚で合計白金貨10枚だ。こんなところじゃないか? 少しは活動資金も残しておきたいだろう」
これで残りが43.5枚か。
「あと、アイカ用のサブウエポンの弓がいくつか欲しい」
「そうだな。簡単な魔法弓があったはずだ。弦を引く力を軽減してくれるロングボウとか」
「それだ!」
これで万全だな。場面によって使いこなしてもらおう。
「あと威力を高めたショートボウの魔法弓か。確か、そいつはロングボウの遠距離狙撃とショートボウの速射が得意だったな。2つで白金貨1枚半だ」
「OK、ありがとうギルマス、今日はここまでだ。残りは1人白金貨7枚ずつで預かってくれ。レミーとアイカはそれでいいか?」
「はい、まだこの前の金貨が残ってますから。装備ありがとうございます」
「こ、こんなに貰っちゃっていいのかな」
2人は若干恐縮気味だったが、そのあたりは差別しない方針だ。この2人の能力には大きく期待している。特にアイカはダンジョンで威力を発揮してくれるだろう。次はジェンカの攻撃力アップが課題だな。
「金は受付でいつでも出してやる。他に何かあるか?」
そうだな。あ、これ確認しておくか。
「ギルマス。今度バラクテスが出た時にパーティで討伐しても、全員がCランクに上がれるか?」
「ソロなら文句なしだが、パーティだと他の実績もいるな。まあ、戦い方次第では即Dランクの案件ではある」
「わかった、ありがとう。明日から少し迷宮に潜るわ。みんなにも新装備に慣れてほしいし」
「そうか、気をつけていってこい。バラクテスが出たら仕留めておいてくれ」




