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1-16 弔い

「シャル! 無事だったのねー」

 抱きついてくるジーンを受け止めて、俺は一応人数を確認した。


「お前らも全員無事だったな」

「ああ、例の法則で帰りは魔物が1回出ただけ、しかもしょぼいウサ公だけだ」

 うんざりしたようにクラウスが言った。まあ今回は撤退だから、それでラッキーなわけだけど。


「こっちはなんとか倒したけど、実にしぶとかった。泣けてきたぜー」

「怪我は無いの?」

 心配そうにジーンが俺の体をチェックしてる。


「足が痛い。穴に落ちたんでな」

「穴?」

 ジェンカが不思議そうに聞く。俺がそんな穴に嵌るほど間抜けな人間じゃないのを知ってるから。


「ああ。最後に大技を使ったんで、深い退避壕を掘ったんだ」

 ジーンが回復させてくれている。愛情もこもっているからよく効くね。


 冗談抜きで回復魔法にはそういう要素もある。魔法の使い手や受け手の精神が影響するのだ。みるみるうちに痛みが消えて常態に復帰していく。


「本当にあれを倒されたんですか?」

 少女達は驚きと少々の疑念を込めて聞いてくる。


「死体は?」

 クラウスが聞いてきたので頭をポリポリかきながら見せてやった。


「すまん、てごわかったんで、このザマさ。金にはならんな」

 すっかり焼け焦げて、爆発で裂けてしまった奴の死体を出した。


「おっまえ、どうやったらこんなになるんだよ」

「うわあー」

 ジェンカも引いている。


「でも、実績にはなるわよ、Cランクプラスに続いてCランクを単独撃破ですもの」

 ジーンは冷静に受け止めている。恋人の出世には関心があって当然だ。


「凄い、あの手ごわい怪物を1人でやっつけたなんて」

 金髪少女も驚きを隠せないようだ。何しろ、彼女のパーティは壊滅だからな。


「あのう、私達をこのパーティに寄せてもらえないでしょうか。私は氷の強力な魔法スキルがありますし、彼女はとても優秀なシーフよ」


「よし、採用!」

 いきなりジェンカが断言した。


「おいこらジェンカ、勝手に決めるなよ。とはいえ、俺も乗り気だな。攻撃魔法使いが1人増えると遠距離攻撃が可能だ。しかもシーフがもう1人入ると安全性が増す。今日もジェンカがオーバーワークでかなり探査漏れしてたし」


「あれだけ出てこられたら、無理!」

 ジェンカが涙目で喚いた。拳を振り上げて抗議するのをクラウスが宥めている。無理もない、あれには全員が辟易した。


「俺も賛成だ。最近、シャルが前に出ずっぱりなんで後ろが手薄だ。ヒヤヒヤしてるよ。戦闘時にはアイカは下がって弓で後衛から攻撃しつつ魔法使いと賢者の護衛、シャルと俺がジーンの支援とレミーの援護を受けながら前衛、そして中衛ないし後方警戒あるいは遊撃なんかにジェンカが入れれば、相当楽になるし戦法にも幅が出る」


 この2人、アイカとレミーって言うんだな。もう1人のシーフが後方で弓を使えるか。かなりバランスがよくなるな。悪くないぞ。レミーの力はさっき見せてもらったしな。


「私も賛成ね。本来パーティは5~6人編成が効率いいのよ。私達は同じ村出身で、なまじ仲がいいから他のメンバーは入れにくいけど、この子達ならいいと思うの。こういう男女均等のパーティに男の人を入れると揉めるケースが多いのよね」


 ああ、知ってる。女の取り合いになるんだ。横恋慕する奴がいるんだよな。刃傷沙汰になる場合もあると聞いた。


 女の子が多い方が丸く収まるが、女の子が横恋慕する場合もある。それと戦闘力の問題もある。うちの方はそれのバランスがいいのだ。彼女達もいずれはどこかのパーティに所属しないといけないのだし。彼女達も魔物から助けた俺達を信頼してくれているだろう。


「一応俺達、2組のカップルなんで、それを承知しておいてくれたら」

「ええ、それは構いません。私達も連れ合いを見つけたら抜けることになると思いますから」


 2人も笑顔で答えてくれる。肉親を失って間もない彼女達だが、それでも人生は生きていかねばならない。そうでなければ、女の子などすぐ街角に立つ羽目になる。


「ああ、それは当然だ。うちだって子供ができたら、解散して冒険者はやめるつもりだ。あと、そうでなくても俺達はいずれ冒険者をやめて商売するつもりだ。それでもいいか?」


「商売されるのですか。でもそれもいいかもしれません。冒険者稼業なんて、いつまでもやるものじゃないですよね。今日はそれを痛感しました」


「あの……」

 そこへ、アイカが少し言い澱むような感じで言葉を発した。


「なんだい?」

「兄さん達を弔ってあげたかったのですが、む、無理ですよね」


「アイカ。気持ちはわかるけど、ここはダンジョンよ。もうきっと吸収されてしまっているわ。私だって悲しいけれど、もうどうしようもない。一応形見の品は持っているよね」


 アイカは頷きながらも涙を溢した。レミーはそれを抱きしめながら語った。

「私たちは、お互い3人兄妹で一緒に村を出たんです。今年、私達が成人するから、それまでお金を溜めながらこちらで待っていてくれて。それがこんな事になってしまって」


 俺も溜め息をついてから言った。

「まだ遺体が残っているなら、戻ってあげてもいいけど、これだけ時間が過ぎてしまうとなあ」


 レミーも、その美しいバイオレットの瞳を曇らせて悲しそうに頷いた。

「もし良かったら、俺達にも弔わせてもらえないか? ちょっと外国のやり方なんだが」


 俺はそう言って、俺はネットで洋型の簡易なお墓を買い物した。原料はダンジョンの石だ。これを使えばうまくすると吸収されないかもしれない。


 それと、お墓参りセットとお墓用の造花を購入した。そしてお墓を収納すると皆を誘った。

「下へ降りようか」


 平原ゾーンの端っこにお墓を置いて、お花を供えて線香を焚いた。

「お兄さんは何が好きだった?」


「兄さん達はお酒が好きでした。もう飲めないけれど」

「このお墓を使っている国では、そういう時はこうやってお供えをするんだ」


 俺はワンカップを人数分、4本買って置いてやった。そして、俺は墓の前で手を合わせた。他の人達も同じようにして彼らの死を悼んだ。そしてアイカとレミーは晴れて俺達のパーティメンバーになった。


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