隣国とドラゴン
王都からうちの領地まで徒歩だと1ヶ月。さらにうちの領地から隣国までは徒歩で10日。さらに隣国の王都までは徒歩20日。嫌いなやつと長期間過ごすのは嫌だ。私には特殊な移動手段がある。使わない手はない。
まず、転移魔法で国境まで跳んだ。魔法って便利だね!
「ありえない…」
アイザックの顔色が悪い。大丈夫か?転移酔い?
「ああ、この人数をここまで安定して運ぶとかありえないとぼやいてます」
なるほど。大変どうでもいいが、ルイル君がアイザックの分までしゃべるせいで余計アイザックが無口になってる気がする。
「さて、では…」
ドラン君にいただいた竜笛を吹いた。人間にはフスー!とかビュー!としか聞こえないらしいが、私はキイイイイ!!と聴こえるので、ちょっと苦手である。これを吹けば相当離れていても聴こえるし、笛によって音が違うんだそうな。別名『竜の主の証』と言うらしい。竜が生涯の主と認めたものに渡すものだったらしいが、知らないで机の引き出しのこやしになってました。つい最近マオ君から教えてもらってからは使ってます。ドラン君、超嬉しそうでした。なんかごめん。
「ぎゃああああ!?」
「…………!?」
ドラン君にビビるアイザックとルイル君。ルイル君はビビりすぎ。ルイスとシルスは慣れてるから平然としてます。
「ドラン君、隣国の王都まで運んでくんない?」
「ちょ!?何普通に話してんですか!?ドラゴンですよ、ドラゴン!!」
「あ、ドラゴンのドラン君です。ドラン君、あっちのでかいのが筋肉ゴリラことアイザックで、あっちがルイルだよ」
「…ふむ、筋肉ゴリラとルイルか」
「アイザック様に明確な悪気ある紹介ありがとうございます!知り合いなの!?何平然とドラゴンと話してんの!?」
ルイル、敬語を忘れてるよ(笑)私はもう慣れたからなんとも思わないけど、新鮮な反応だなぁ。
「………………」
アイザックも真っ青だ。ビビってるな。ざまぁ。
「知り合いではない。このお方に忠誠を誓っている。主は俺を素手で倒した猛者だ」
「「「……………」」」
シルス、ルイル、アイザックが固まった。そういやあ、シルスはあの場に居なかったね。
「エルシィ、かっこよかったよ」
ルイスが照れながら誉めてくれた。えへへ、嬉しいなぁ。
「エルシィ、説明!説明を要求する!」
「まーじーで!?マジで!?どうなってんスか、エルシィさまああ!?いちゃついてる場合じゃねえよ!つうか素手でドラゴン倒した女にかっこいいって言えるルイス様がすげぇわ!!」
「ありえない…」
主にシルスとルイルが騒ぐので、仕方なくドラゴンを素手で倒した事件を話した。
「「「ありえねええぇぇ!!」」」
叫ぶ男3人。いや、でも実際のお話ですから。
「いや、テンションが上がったからさぁ」
「問題はそこじゃねえわ!どこの世界にドラゴンを素手で倒す女がいるんだよ!!」
「ここにいます!!」
「元気一杯に返事すんなぁぁ!!」
シルスに叱られました。理不尽だ。聞かれたから答えたのに。いじけたら、ルイスがよしよししてくれた。天使だな。
「とりあえず、ドラゴンは却下だ。隣国の状況がわからんのだから、下手に刺激するのは避けるべきだ」
アイザックがまともに却下した。仕方ないか…と諦めかけたら、ルイスが挙手した。
「…ずっと考えていたのですが、急いだ方がよいかと思います」
「何故だ」
「僕らが育てた隣国にいると思われるスライムが、そろそろ空腹になるかもしれません」
「…?」
「僕らが育てたスライムは固有種でして、素手でドラゴンを倒したエルシィと手合わせができる実力を持っています」
「「「は?」」」
「おまけに、僕らの魔力を毎日食べてましたから、かなり大食漢です。普通の魔法使いではあの子を満たせない」
「…つまり」
「お腹を空かせたスライムが人を食べる前になんとかしたいです」
「「「……………」」」
予想外に切羽詰まった事態に、男達は固まった。
「つまり、俺の出番か!!」
ドラン君は嬉しそうです。
「ぎゃああああ!」
「うおおおおお!」
ドラン君の背中に私とルイス。
右足にシルス。左足にルイル。
「………………!!(白目)」」
そして、口にアイザック。
背中には認めた人間しか乗せたくないとドラン君がごねた結果です。
「え、エルシィ…近いよ」
「んー?」
私は現在ルイスの後で彼を支えつつイタズラしています。ルイスいい匂い…
「ひあ!?」
いかん、ついスリスリしてしまった。
「あ、ごめん。いい匂いだし、ルイスがぬくいからつい…」
「…ちょっとならいいよ」
目を潤ませながら許可するルイス。天使がいたよ!!
「なら遠慮なく!」
「あっ!?ああん!耳はらめぇ!」
耳をはむはむしたら、ルイスが落ちそうになりました。危ない危ない。私がしっかり支えてやらねば。お腹をしっかり抱いて密着した。
「エルシィ、近すぎ!」
「いや、落ちたら困るし」
「エルシィがイタズラしなきゃ落ちないから!!」
「……ルイスが好きすぎて、つい…」
しょんぼりしたら、ルイスがためらいつつ話した。目は潤み、耳まで赤くして、色気がはんぱない。
「お、降りたら……してもいいから…」
「マジで!?やったあ!」
「人が死にそうな時にイチャイチャイチャイチャしてんじゃねぇぇ!!」
ルイル君が多分泣き叫んだ。
「「すいません」」
イチャイチャは強制終了となりました。
ドラン君は無事に隣国へ到着。つうか、城の屋上に着陸したのに誰も来ないんだけど?
そして………
「……………」
「………………」
「………………」
「…………ふっ…フヒッ………」
「………………(怒り)」
アイザックはよだれまみれでした。したたってました。
「正直すまんかった!!」
タオルを差し出す私。
「…あー、着替えは俺が出すよ」
荷物から着替えを出してあげるシルス。
「………お湯、出そっか」
魔法で簡易風呂を用意したルイス。
「ぶひゃ………ふっひぐ………」
そして、隅っこでマナーモードなルイル君。君は本当にアイザックの護衛なの?アイザックが嫌いなの??
ルイル君はよくわからないと思いました。
なぜでしょう。書いてて楽しくなってきました。アイザックが悲惨だからなのかなんなのか…
うん。やたら楽しいです!




