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7話
「お前さぁ、記憶ある?」
リヒトさんが思いだしたように言った。
「記憶・・・?何の、ですか?」
「あぁ、・・・里親のところにいた記憶」
悲しそうな顔をしてリヒトさんは言う。
「記憶・・・。一人目の人は僕が、その人が本当に愛してくれてるかを試すために馬鹿やったら捨てた人。二人目の人は・・・。二人目?ねぇ、リヒトさんどうしよう。僕、二人目の人の記憶が、ない」
オロオロしてしまう。記憶が、ない。なんでだろう。
「やっぱり、か。記憶がなくてよかったよ。あんなこと覚えてても辛いだけだ。思いださなくていい」
リヒトさんは何か知ってるみたいだった。
思いださなくていい、そう言われたけどやっぱり気になる。
でも、思いだそうとするとひどい頭痛が襲ってくる。
「おーい、うさぎ。ライにここの説明して来い。俺はちょっとタバコ吸ってくる。んじゃ、よろしく」
そう残して、リヒトさんはどこかに行ってしまった。