10話
僕が落ち着いたのを見計らって、うさぎさんは僕の手をひいた。
人の手がこんなに暖かく感じたのも初めてだ。
ここに来てから初めてのことばかり起きる。
うさぎさんがとあるドアの前で止まる。
ここが他の人たちがいるところだろうか・・・。
コン、コンとうさぎさんがドアをノックする。
「どうぞー」
という声が聞こえた。
ドアを開けると、男の人が二人いた。
二人とも声が出ないって感じで驚いていた。
きっとここに新しい人が来るのはひどく珍しいことなんだろう。
「うさぎちゃん、その子、何?」
茶髪の少しチャラそうなホストみたいな人が聞く。
「あー、分かったぞ。リヒトの隠し子だな。あいつ無駄にモテるからなぁ・・・。隠し子の一人や二人いたっておかしくないと思ってたんだ」
うんうんと勝手に納得している人は、長髪でがっしりしていて、武士って感じだ。
そして僕は今気づいた。ここにいる人たちの顔面偏差値が無駄に高いことに。
「うさぎさん、僕、ここには場違いだと思います」
小声で伝える。
「大丈夫、ライくん、ものすごく綺麗だから」
まぶしい笑顔を向ける。
僕が固まっていると武士みたいな人が話しかけてきた。
「俺の名前は雅。お前、リヒトの隠し子なんだろ?整った顔だな。さすがあのリヒトの子」
なぁ、そう思わないか?雅さんがホストみたいな人に聞く。
ホストみたいな人は僕に顔を近づけてきた。
「俺の名前は琉。お前、可愛い顔してるね」
そう言った。
可愛い顔、可愛い顔、可愛い顔・・・・・・・。
気持ち悪い、気持ち悪い・・・・・・・・・・・・・。
琉さんが誰かの影と重なって見える。
目の前が真っ暗になった。