一攫千金は冒険者の夢
包帯を巻き直し、いつもの包帯水着女に戻ったところで、砦から出た後のアタシの話しをした。
ドラゴンの話しをした時に、珍しくケニーさんが食いついてきた。
「姉御が見たドラゴンの話しは聞いたことがあるぞ……」
どうやら砦が出来る以前から度々目撃されているらしい。存在は知っていても何処から来て何をしているのか、そして何処に去ったのかさっぱり分からない、謎の巨大生物と呼ばれていたらしい。
アタシが詳細なサイズとドラゴンと言ったのが気に入ったらしく「ドラゴン、ドラゴン」と興奮しながら連呼している。
なんでオークを襲ったのだろうと言う問いについ口を滑らして「美味しいからじゃないかな」と言ってしまった事に、アランさんとキャサリンさんは食べたことがあるんだと引いていたが、ジェニファーさんは目を輝かせていた。
美味しいは正義と分かってくれる仲間が居たと嬉しかったりして。
土魔法で魔石を加工することが出来たことは、話さなかった。
信用していない訳ではないが、無用なトラブルに巻き込みかねない。
その後、木の上にくくりつけておいた魔石の山を見せた。
ドラゴンが踏み殺した分を運良く回収できただけだから隠す必要は無い。
一攫千金を狙う冒険者としたら、必ず夢に見るような宝の山に、四人が生唾を飲み込んでいた。
巨大魔石と彫刻済み魔石は見せていないから、オークの普通魔石約五百個と強化固体の魔石約五十個ある。
普通サイズは銀貨十枚、強化固体は銀貨五十枚から金貨一枚まで評価が変わるから良くわからないけど、
ざっと計算した所で金貨八十枚、レートは物価で想定しただけだが銀貨一枚が一万円相当だから日本円で約八千万円を一度の冒険で得た事になる。
この半分を『青い閃光』に渡すことを約束した。
突然の提案に、何もしていないから受け取れないと頑なに拒否していたが、
クランを解消していないから冒険報酬の半分は『青い閃光』にもあると言うこと、
回復魔法の事は誰にも話さない口止め料も含まれていると言うこと、
何より心配してここまで来てくれた事が嬉しいと言うことを伝えて。
受け取ることを承知させた。
その後、アランさんとケニーさんも回復包帯を巻いたら、自慢の古傷まで消えたとアランさんが残念がっていたが、キャサリンさんは嬉しそうだ、宿に戻ったら二人きりで見せ合いでもなんでもどうぞ。
そこにジェニファーさんが「何でか知らねぇが腹がへった」と。
回復させるとお腹が空く事を忘れていた。
「少し待ってね」とアタシはウサギを狩ってきて解体し、久しぶりに賑やかな食事をした。
その後、魔石入りの土嚢袋はアランさんとケニーさんに持ってもらったので、ソリはブレードを残して解体して夕暮れまで草原を歩き、砦まであと半日の所で夜営の準備をした。
その時に聞いたのだが、おじいさんは翌日の午後に、勇者パーティと砦から出たそうだ。
翌朝になっても戻らないアタシを根性無しと馬鹿にしつつ、心配している様だったらしい。
アタシの荷物は、宿屋の親父が預かっているので、心配しなくて良いと言うことだった。
宿屋では、忙しい時間帯を除いてマリアンヌさんとエリーさんが、アタシのレシピを見ながらジャムモドキを作っていて。
販売試作用を食べさせて貰ったと、ケニーさんとジェニファーさんが言っていた。
アタシが作ったジャムモドキと比べるとエグ味が顔を出している分劣るが、十分美味しかったそうだ。
予想では浸ける温度が高いか、浸ける時間が長すぎなんだろう。
戻ったらレクチャーするべきだな。
そんな話しをしながら今夜は三交代で不寝番をした。
翌日は何事も無く昼過ぎに砦にたどり着いた。
門兵にギルドカードを見せて入門する際「オークの直近での脅威は無くなりました。のちほど冒険者ギルドより報告いたします」と伝言をお願いして冒険者ギルドに向かった。
ギルドの扉を開くと、オーク討伐に参加していた顔は知っているけど名前は知らない冒険者がたまたま居てアタシを見るなり
「心配掛けなすんな。みんな大騒ぎだぞ。特に朝に集まっていた連中は自分達のせいかもと落ち込んでいたぞ。でも何はともあれ、おかえり」
と言ってくれた事にまた堪えきれず涙を溢してしまった。
その後はさすがにアランさんに任せる訳にはいかないので、アタシ自身が動いて支店長に報告し、オークの魔石を渡し。
それから支店長と一緒に守護騎士団隊長に報告に上がり、アタシの想像であるが間違いないと思われる、ドラゴンとオークの関係を話した。
ドラゴンの意味を聞かれた時に「人間には、どうしようもない生物」と、どっかで聞いた様なセリフを思い出して伝えた。
その日から、謎の巨大生物の名称はドラゴンとなった。
その後、ギルドに戻りオークの魔石の換金額とオークの大群のその後の情報料及び謎の巨大生物の生態に関する情報料も含み。
金貨百二十枚が支払われた。日本円で一億二千万円だ。一昔前の宝くじと同じくらいである。
アタシが半分は「青い閃光」に渡して欲しいと伝えて、アランさんは冒険者ギルド預かりにして欲しいと口座を開いた。
冒険者ギルドの口座は、開いた場所だけでしか入出金が出来ない預かり所みたいなサービスである。
したがって拠点を決めて長期間稼ぐ場合でしか使われないので、アタシみたいな旅人では利用しづらい。
アタシの分の金貨六十枚は、商人ギルドのアタシ宛に振り込んで下さいと伝えた。
こんな大金、地方支店で賄えるかと心配になったが、そもそも討伐時に支払う予定だった金だったから問題ないと。
しかも討伐時では不足していた魔石も必要数確保出来たから本店での覚えも良くなるし、特別報奨を支払う必要がない分、大黒字らしい。
冒険者ギルドもやっぱり商いなんだなと、アタシは思った。




