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孤独の先にあったもの

今はまだ真っ昼間である。

夜営の準備をするのはさすがに早すぎる。


木のカップに魔石から氷を出して更に水を出す。


よく冷えた水は心と身体を癒してくれるが、砦に向かう気力を持つまでにいたらない。


暫くそうしていたが、振動感知に人の反応を捉えた。森の中のようだ。


薬草採取だとしても、こんな距離まで来るのはアタシくらい。


森の驚異は魔物だけではない、肉食動物も巨大昆虫も待ち伏せしていて不意を突いてくる危険なエリアである。


そんな中を進んで来ているなんて、少し興味がわき見に行く事にした。


まっさらの魔石とソリを高い木にくくりつけて、森の中を進む人達がいる方向に向かった。


途中で、振動感知をすると戦闘中のようだ。


激しく動く振動が多数感じられる。


しかもこの振動は知っている。


アタシは森の中を最大速度で移動する。


戦場が見えた。


ゴブリンの集団と戦う『青い閃光』のみんなが居る。


木の上にキャサリンさんを狙うナイフを持ったゴブリンがいる。


キャサリンさんはまったく気がついていないようだ。


これはヤバいと思った瞬間には加速していた。


ゴブリンは奇声を上げて飛び降りる。


キャサリンさんはその声に振り向いてしまい、ナイフを持ったゴブリンが自分に向かって落ちてくる様を、金縛りにあったように見ているだけだ。


ゴブリンのナイフがキャサリンさんに届く寸前。


なんとか間に合ったアタシのハタキがゴブリンを貫く。


いくら体重が軽いと言っても、速度があれば力学的に速度の二乗で力は増大する。


ゴブリンの落下速度を遥かに上回るアタシの速度によってゴブリンをはじき飛ばした。


とうぜん、その衝撃はアタシにもダメージとなり回復包帯が発動する。


アタシはそのまま、戦場を通り抜けて、森の茂みに隠れて包帯を巻き直した。


今回は間違いなく裸をキャサリンさんに見られたであろう。


男に裸を見られるのは恥ずかしいが、女に見られるのも別の意味で恥ずかしい。


そう思うも戦闘はまだ続いている。大急ぎで回復包帯を出して巻き直す。


少し雑だが隠すところをしっかり巻ければそれでいい。


繁みから飛び出し、戦場に赴いた。



その後、ゴブリンの集団を殲滅出来たが、アランさんとケニーさんは、足を負傷していた。


森の中にいるので油断していた訳ではないが、ゴブリンの待ち伏せに合い。先手を取られた際にナイフで刺されてしまったのである。


アタシは二人を回復包帯で治療した。


包帯が光って消えることにより、キズが癒えていく事がわかる。



重傷を治療しおえたところで、ゴブリンから魔石を取り出し。


その場をすぐ離れる、間違いなく肉食動物がすぐに集まってくるからだ。


そのまま、全員無言で草原に出る。アタシが魔石を隠している場所である。


草原を出たところで、気が抜けたのか、キャサリンさんが座り込み、ジェニファーさんが介抱している。


二人とも全身キズとアザだらけになっていて、女性としてそれは不味くないかと思っていたら。



アランさんは、アタシを上から下までじっくり見て、途中目線が固まったが「怪我も無く無事でいて良かった」と安堵していた。



話しを聞くと宿屋の食堂で何があったのかを聞いて帰ってこないアタシを心配して探しに来てくれたらしい。


どうやら宿屋を出る時にぶつかりそうになったのはアランさん達ですぐに話しを聞いたが、

マントもホウキも荷物も残して行っていることからすぐに戻ってくると思っていたが翌日になっても戻らない。

ギルドにも来ていない。街中を探すと街のあちこちで、あの日の夜に見掛けたと言う情報はあるけど見つからない。


まさかと思い門兵に聞いたが当日の当番ではないから知らないと言い、当日の門兵は休暇で今日は居ないと、翌日やっと話しを聞ければ軽装で出ていったと。



軽装でも自己責任で出掛けたのだから、気には掛けるけど心配はしない。



だが今まで保護者であったアランさん達としては、宿を飛び出した勢いで砦まで飛び出したアタシが心配になってしまい。


アタシの事だから森の中に居るに違いないと、不馴れな森用の準備に時間が掛かり一昨日、やっと出発出来た。


森の中では、不意打ち待ち伏せだらけで、良い特訓になったと笑っていたが先程癒した足とは別に全身キズとアザだらけである。


アタシは「心配を掛けさせてしまって、ごめんなさい」としか言えなかったが、謝罪は受けて貰えなかった。


「マッキーさんは無傷ってことは、装備に自信があって砦から出たのであろう。

俺達は勝手に軽装では危ないと心配して、勝手に探しに来て、勝手に怪我をしただけだ。だから謝罪は必要はない。

準備の万全差は無傷のマッキーさんと俺達を見れば一目瞭然だろ」

と言い切られてしまった。


それならばと思い。

「アタシに会う為に、こんな森の中までわざわざ来てくれてありがとう。凄く嬉しいです」



今まで気が付かなかったけど、アランさんの話しを聞いて漸く気がついた。

砦に向かう足が鈍っていたのは、知り合いが飛び出して行ったと言っても実際は他人である。

アタシの事を誰も心配してくれていないのではないかと。


不安で足が鈍くなっていたことに。



アタシは不覚にも涙を流してしまった。



それを見たアランさんが慌ててキャサリンさんとジェニファーさんを呼んでいたが、アタシはあることを決心していた。


アランさんに呼ばれて来た二人が何かを言う前に、目の前で回復包帯をお尻から出して、二人に巻いた。一瞬光を放ちすぐに包帯ごと消え去った。


腰袋に入れてあった回復包帯はアランさんとケニーさんの治療に使いきってしまいもう無い。


突然のアタシの行動に二人は、顔を見合わせていたが次の瞬間。


「「あな(ん)た、怪我が治っているよ(わよ)」」


痛みもなくなり、腫れた顔も引きアザも消えて、美人さを取り戻した二人はアタシに問い質してきた。


アタシは回復魔法として包帯を産み出せる特殊スキルを持っていると簡単に説明した。


アランさんは驚愕の表情をしており。


ケニーさんは「やっぱり姉御は凄い」と言っている。


キャサリンさんは、だからあの時と口ごもっていた所をみると、やはり裸を見られていたらしい。


アランさんも、口がお尻と動いていたところを見ると、あの時の最速の一歩小枝叩きの時に見たらしい。


キャサリンさんは、アタシの事を凄い凄いと言っていたが、ふと真剣な表情をした。


何だろうと思いつい身構えてしまったが。


「マッキーさんが凄いのは分かったけど、その格好は女の子なんだから恥ずかしいよ。すぐに整えて来なさい」

と、アタシのお腹を指差した。


アタシは自分格好をあらためてみると、慌てて適当に巻いたからだが、上はなんとか隠れている程度。

下はそれでもしっかり隠した積もりではあったが、激しく動いたからよじれてしまったらしく、ヒモパン状態、おへそキラめく包帯スーパービギニ女となっていた。


出るところが無いので色気は皆無なのだが。


さすがのアタシもこれは恥ずかしくて、すぐに森の茂みに隠れた。


アランさんめ、さっき変な位置で一瞬視線が止まったのはおへそを見たからか、と頭の中でアランさんへ暴言を並び立てながら包帯を巻き直していた。




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