対決!支店長 反撃
アタシは、どう答えるべきなのだろうか?
元の世界の事は秘密であるが、この際話してしまい過去にも同じような人物が居たか聞いた方がよいのだろうか?
だがこれは、信じられたら、元の世界の事を話さなければならないし、知識を独り占めしようとする誰かに行動を制限もしくは監禁されてしまう。
信じられなかったら、益々疑われて投獄、それこそ監禁だ。
それとも、本当はアントニオ・バーンさんの事を知っていて、知識はその時に得られたと嘘をつくべきであろうか?
こちらは、アントニオ・バーンさんの事は骨しか知らない、嘘をつき続ける事はきっと出来ないから、嘘つきのレッテルを貼られた上、更に本当は何者かと監禁、拷問コースだ。
アタシが言葉に窮していると。
「本当はアントニオ・バーンの娘なんだろ?そう考えればすべて辻褄があう」
アタシは話しの飛躍に再びついていけずに呆然としてしまった。
それを肯定と見たのか、支店長は再び話し出した。
纏めると、バーン家はセントラル王国の武門の貴族で規律を重んじており幼い頃から厳しく教育を施されることで有名らしい。
何世代か前に黒髪の女性を妻にした当主がおりセントラル王国の貴族の中では珍しく黒髪の人物を輩出する。
武器は槍を使い、アントニオもかなりの実力を持っており魔力、知識、教養、全てにおいてトップクラスだったと。
それを踏まえてアタシを見れば、ホウキも槍の一種だと思えば完全に当てはまると言う。
なんでそんなことを気にするのかと言うと。
ブラン砦ギルド支店では、通常業務通り他の雑多な情報と共に、アントニオ・バーンの死亡確認通知をギルド本部に回しただけであった。
捜索依頼が出されていない限り、ギルド本部に保管されていた書類に死亡の印が押されて倉庫に眠るだけであったのだが。
長年捜索依頼が出されていた事を覚えていた誰かが目にしてバーン家に報告したらしい。
亡くなったことを伝えただけならギリギリセーフであったのに、信憑性を上げるために報告書ごとバーン家に持ち込んだらしく、
ギルドカードを持ち込んだ十二歳の子供であるアタシへの問い合わせが本部を通して昨日届いた所だと。
話を聞いて、アタシは慌てて猛烈に全否定。
本当に知らないのに、血縁者にされてたまるか。
本部には報告しない、ここだけの話しでいいからとしつこく聞いてきたが認めてなるものか。
「アタシの父親はタロー以外に居ません!」と言い切った。
でも支店長は諦めずに尚、言い続けてきたので
全ての質問の返しの語尾を
「タローです。」
と返してやった。
「では、計算の知識は」
「果物が二十個取れました一日に二個食べたら何日食べられますか。タローです。答え十日。タローです。掛け算割り算は生活に密着しています。タローです。」
「では、槍の扱いは」
「アタシは、突くと、払うしか出来ません。タローです。」
「では、オークが原因だと解ったのは」
「アタシが森で、沢山の虫を罠で捕らえました。タローです。捕らえた虫を狙う食虫動物が沢山現れました。タローです。その食虫動物を狙う中型の動物が現れました。タローです。その中型の動物を狙う大型の動物が現れました。タローです。その後は血が血を呼ぶ狂乱の嵐が続きました。タローです。一旦崩れたバランスは中々戻らない。タローです。食物連鎖と言えば解ってもらえるかしら。タローです。それだけでも知っていれば、検討くらいつくはずだ。タローです。」
「では、人への対応は」
「お父さんは。タローです。からよく聞かされました。タローです。自分がされて嫌なことは、他人にもするな。タローです。と言い聞かされました。タローです。他人にはアタシがしてもらったら嬉しいことをすればいいのです。タローです。」
「はぁ。では、今俺に対してやっていることは」
「嫌がらせです。タローです。」
「自分はやられて嬉しいのか?」
「嫌です。タローです。自分が嫌なら、他人は嫌がるはずです。タローです。」
「嬢ちゃんは人の嫌がることは父親に止められているのではないのか?」
「時と場合によるのです。タローです。人の話しを聞かない奴には。タローです。相応の対応をするのです。タローです。」
「嬢ちゃんの名前は」
「マッキー。タローです。」
「俺の名前は」
「モーリス・オット支店長。タローです。」
「よく覚えていたな」
「記憶力は良い方です。タローです。」
「解ったよ。最後だ。マッキーの父親の名前は」
「タロー。タローです。」
「最後までそれか。お前の父親はタローだと、報告しておく。」
「ありがとうございます。タローです。」
「もういい。下がってくれ」
「失礼します。タローです。マッキー退出します。タローです。」
最後に一礼して、部屋を出る時に支店長が頭を抱えているのが見えてしまった。
この嫌がらせの概念を知っているアタシでさえ頭がくらくらするのだから、支店長の頭の中は今頃大変なことになっているに違いない。
今回は、流れで乗り切る事が出来たが再燃した時はどうなることやら。
すっかり暗くなっている窓の外を見て、早く宿に戻ろうとギルドの入り口に向かったら。
ロビーで心配そうな顔をしている四人の顔を見て、不謹慎だけど嬉しくなってしまった。
アタシは微笑みながら駆け寄り、みんなに
「ありがとう。タローです。」
と言ってしまった。
あ〜ぅ〜。




