魔術師の杖
翌朝、いつものように準備運動を終えた頃に、宿屋の親父が、朝飯が出来たぞと言いに来た。
その時にアランさん達の事を聞いたが、男共二人は酩酊状態だったらしい。
キャサリンさんがアランさんを、ジェニファーさんがケニーさんをそれぞれ介抱しながら部屋に連れて行ったそうだ。
その後は知らんと言っていたが、そう言うことなんだろう。
朝御飯を食べてからギルドに行き、昨日の分も消化しようと午前中から指名依頼を受注してネズミ駆除を三件完了、午後も指名依頼を受注しようとギルドに立ち寄ったところ、アランさん達がロビーにいた。
何やら真剣な表情で話し合っていたので、軽く頭を下げて受付に行こうとしたら呼び止められた。
昨日のお礼と言うことで、金貨一枚を渡された。
こんなに受け取れないと返そうとしたけど、本当なら四人分の命の代金なので、もっと払うべきなのだけど。何かの時にパーテイとして貯めていた資金はこれだけしかなくて逆に申し訳ないと謝っていた。
ここはギルドのロビー。
周囲は関係者の目があり、あまり言い争うのは良く無いと考えて、素直に受けとることにした。
周囲のアランさん達を見る雰囲気も悪く、先程の話から察するに、明らかに謝礼不足なんだろうと思い。
「アタシは山奥から出てきてばかりの田舎者なの。この砦に来てからまだ十日くらい。
まだまだ解らないことがいっぱいあるから、不足分は情報量として色々教えてください」と、
周りに聞こえるように話した。
アランさん達は、満面な笑みを浮かべて了承してくれた。
話を聞いていた周囲の人達も情報は金成り、それなら納得だと言うばかりに視線が緩くなった。
なので、周囲に見せつけるように、立て続けに質問を投げ掛けた。
技のスキルってどんなのがあるのか?魔術ってどんな風に使うのか?魔術師の杖ってどんな効果があるのか?
周りの人達は明らかに、そんな低レベルの質問から教えないといけないのか?これはたいへんだ。アラン達頑張れよ。と、同情的な雰囲気に変わった。
アランさんに外に出ようとアイコンタクトしたら、わかってくれた見たいで「話が長くなりそうだから、何か飲みながらにしよう」と席を立ってくれた。
ギルドから外に出て曲がり角を曲がったところで、大きく息を吐き。
「これで良かったのかな?」
と、アランさん達に言ったら。アランさんは「ありがとう」と言ってくれたが、アランさん以外の三人は話が判らなかったようで戸惑っていた。
細かい説明は任せて、喫茶店に入り。アタシは軽食を注文し、昼は宿で済ませていたアランさん達は飲み物だけを注文した。
飲み物が届いたところでケニーさんが技スキルの説明をし始めたので、止めさせて、アランさん達はこれからどうするのかを聞いたら。
今後は四人で活動する。
剣士の二人は、集団でないならゴブリンに武器など無くても倒せる。
魔術師の二人は杖が高価なので、砦内で職を見つけて稼ぐ事にした。
と言うことみたいだ。
それならばと思い。アランさん達に待っていて貰い、アタシは宿にある物を取りに行ってきた。
その間に、アランさんは三人にギルドでの話の顛末を語っていたらしい。
アタシが戻ってきた瞬間「そんな裏の意味のある会話をしていたのか。俺には、まったく理解できをかった。」とケニーさんに何故か凄まれてしまった。
気を取り直して、宿から持ってきた二本の杖を、アタシは使わないからと前置きして、キャサリンさんとジェニファーさんに渡した。
これは、アランさん達に会う前にオークに殺られてしまった、赤い閃光パーテイの魔術師が持っていた杖である。
戦場に持って行っていたのだから、それなりに威力のあるものに違いない。と言っても、オークに対してはまったく歯が立たなかったので、高級品と言うこともないだろう。
使わないからあげると言っても、きっと拒否されるだろうから。
二本で一日銅貨十枚で貸しますと言ってみた。
杖を見つめる四対の目。
アランさんが確認するように聞いてきたので、赤い閃光さん達の持ち物でしたと答えたら、四人は息を飲んだ。
どうやらこの杖は、砦で売られている杖の中では、最大級の威力を誇るらしい。
普通に買えば、金貨十枚と聞いて、逆にアタシが唖然とした。
だって、オークに効かなかったのだよ。それなのに、最大級だなんて。
その後、面倒だけど三枚の紙に条件を書いてそれぞれサインした、アタシとアランさんとで一枚ずつ、後でギルドに一枚預けた。
そんなことをしていたら、もう夕方。
慌てて指名依頼を一件受注して、完了させた。
昨日、結果的にサボってしまった分を無事に取り戻せたのでひと安心。
ギルドに戻り一日の完了報告と、借用書を一枚預かって貰った。
宿に戻ると、デジャブを感じた。
アランさん達が真剣な表情で話しているからだ。
話し合いの邪魔はしたくないので、昼と同じ様に軽く頭を下げて部屋に戻ろうとすると、呼び止められた。
今度は何?と思いつつ、話を聞きに近づいた。
真紀の一日はまだ続きそうだ。




