これはスキルなんだって
宿屋の親父に宿泊延長を伝え、料金を支払った。
一日四件づつネズミ駆除の依頼をこなしながら過ごす日々、指名依頼受注残はあと二十件。
一件につき平均二十匹は捕らえているので、一日の稼ぎは指名依頼料金含め銀貨一枚程。
少々忙しなくて大変だが、なかなかの稼ぎである。
ブラン砦の街は広いけど、こんなペースでネズミ駆除をしていけば、すぐに依頼が無くなるはずだよね。
そうしたら、星半分の依頼を受けるんだ。
だって、ネズミ駆除の依頼は星無し。どんなに受けても昇級はしないのだもの。でも指名依頼なので、表には出ないけどギルド内での評価は上がるらしいから。せっかくだし、評価で並よりも優とかの方が良いよね。内申書とかあるのかなぁ?
さて、今日もネズミ駆除のノルマをこなしてくるかな。
なんて、のんびり構えていた時期もありました。
ギルドに指名依頼を受注しに行った時に、受付さんから恐るべき計画が有ることを教えて貰った。
それは商業者ギルド所属店舗が金を出し合って、ネズミ駆除の依頼を出すと言う計画だ。
一見普通の依頼だと感じると思うけど、これが指名依頼となると、アタシにとっては凶悪なことになる。
ブラン砦は、西側に正門があり、入口前は守備隊の宿舎、次に冒険者ギルドが含まれてしまうが、低級商業エリアがあり、一般住居エリア、中級商業エリア、中級住居エリア、高級商業エリア、貴族住居エリアと、半分に切ったバームクーヘンの様に分かれている。
そうなると、一番奥側で川に近いエリアが貴族の住む場所なのだが、未開の地から、この砦を守るのが貴族だから納得な話ではある。
貴族エリア、高級商業エリアの生活廃棄物は川に捨てているので、かなり清潔である。したがってネズミは寄り付かない。
中級界層も清潔ではあるが、低級階層と下水が繋がっているので、ネズミがたまに現れて悪さをする。
真紀が駆除しているのは、この中級界層の中の低級階層よりだけなので、屋敷は数十棟しかない。
だからのんびりしていられたが今の話しは、中級商業エリアと低級商業エリアの協賛で依頼を出すような話だ。
今までこなした依頼の数十倍の広さになる。そんな広大なエリアなんて一人で対応なんて出来るはずはないのに、受付さんは「指名依頼じゃないの?うふふ」とか、のんきに言っていたので、ギルド支店長に面会を求めた。
商業ギルドから出た大規模ネズミ駆除の話しは、流石に支店長も人員が足りないことを理由に断ったとのことで一安心したが。
ずっと疑問に思われていたのであろう。ネズミが潜んでいる場所が何故分かるのか聞かれてしまった。
正直に言える事ではないので、森のネズミは生活に密着しているので何となく分かるのです。と適当に答えておいた。
すると「なるほどスキル持ちか」と、ファンタジーの定番なので意味は解るけど同じなのか確認する為に、惚けて聞いてみた。
この世界のスキルは、大きく分けて三種類あり、訓練によって身につく技のスキル、環境によって身につく修のスキル、そして産まれた時から身に付けている祖のスキル。
技のスキルは、反復訓練により身につけることが出来る。剣を振り続けることにより剣のスキルを得て、その後は教わる流派によってスキル技を身につけることが出来る。
修のスキルは、暗所作業をしていると夜目のスキルを得るとか、鍛冶をしていると耐熱のスキルを得るとか、環境依存でスキルを得る事が出来る。
祖のスキルは、先祖代々受け継がれるスキルで、その子孫に発現しやすい。殆どの人間が何かしら祖のスキルを持っているとも言われているが、何を持っているか調べられないので系譜がしっかりわかっている貴族階級の人々しか基本的に判らない。怪力、駿足、カリスマ等、訓練などでは身につけることが出来ないものだけが判明している。
話を聞くと、大別では二種類の様な気がするけど、この世界の基準で分けたのだからアタシが首を突っ込んだところで何にもならないだろう。
と言う訳で、アタシは修のスキル持ちってことね。
ネズミ限定の位置がわかるスキルを持っていると支店長は判断したのだね。
わざわざ否定して自分の能力をバラス必要はないから、納得顔をしておこう。
その後はネズミ駆除の指名依頼が多すぎて、星半分の依頼が受けられないと軽く苦情を伝えて、今日のノルマを果たしにギルドを離れた。




