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ねずみ〜ランドの恐怖

小川沿いに下り、大きな川にたどり着くのに、三日かかった。


大きな振動を感知したら、必要以上に警戒しながら大回りして歩いているのだから仕方がないけど。


さすがに三日も歩いているのに、振り返ると岩山が目の前にあるように見える距離しか離れていないだなんて、ペース遅すぎだよね。



その後は幅の広がった川沿いの獣道を、大きな振動を感知しても出来る限り小さく迂回しながら下る。


この辺りになると、中型サイズを感知したからと言って迂回なんてしていたら数が多すぎて進めなくなるので、無視して歩いていく。



殆どの反応は、知らない生き物の匂いだと気づいたからなのか、近づくと逃げて行ったが、逃げるどころか逆に接近してくる反応がある。


これは、危ないと感じて葉の生い茂った木に登り、息を潜めた。


待つこと十数秒で姿を現した。



それは、二足歩行をするネズミだ。



ネズミは、アタシが先程まで立っていた場所の匂いを嗅いだあと、周囲を見回していたが、上を見る事なく、アタシが来た方向に歩いて行った。



木の上だと、振動感知もうまく働かないので、数分待ってから、地上に降り立った。



二足歩行のネズミは、ラットマンと呼称しよう、先程のラットマンは、探知ギリギリまで離れていたが、前方から再びラットマンの反応が近づいている。


今度は、三頭である。


再び木を昇る事も考えたが、先程の様子から、鼻が効くみたいだ。


三対の目で調べられたら、アタシの匂いのついた、この木に隠れても見つかってしまいかねない。


右を見ると、十メートル先に比較的広いスペースがあるので、気を使い軽くジャンプ、下草を飛び越えた。


そして木の影に隠れる。


匂いを断ち切ったので、発見される可能性は下がったと思うが、息を潜めながら様子を伺う。


ラットマン達は、やはり木の下で立ち止まり、周囲を見回してから木を見上げて、同じように歩いて行った。



木に登って隠れていたら、やばかったなと思いつつ、元の場所にジャンプし先を歩いていると、またラットマンだ。


どうやら、この獣道はラットマンの通り道のようだ。



こんなに遭遇すると言うことは、近くにラットマンの巣があり、巡回警戒をしていると考えられる。


そう考えると戦闘は避けた方が良さそうだ、騒ぎの音が聞こえたら集まりかねない。



再びジャンプして隠れ、ラットマン達をやり過ごす。



そんなことを何回も繰り返して進むと、左斜め前方に、巨大な集団の反応を感知した。



どうやらラットマンの巣のようだ、小川沿いにコロニーを作っている。



これは大きく迂回しなければ危険だ。



探知ギリギリの範囲で迂回することにした。



何度か反応を確認していて気が付いたが、ラットマンの巣を中心として、放射状にラットマンが出発している。


当然ながら、帰ってくるラットマンも居て、ほとんどひっきりなしに出入りしている。



大きく迂回をしているつもりだか、二、三頭規模のラットマン小隊が、あちこちにいる。



見つからないように行動するのも限界かもしれない。



近辺はラットマン達のテリトリーとなっているのか、それとも狩りつくしたのか判らないが、ほとんど生き物がいない。



この辺りがテリトリーならば、見つかる事前提で駆け抜けた方が良いかもしれない。



そんなことを考えながらも振動感知をしていたら、ラットマン達の動きに変化があった。



二、三頭の小隊が合流して十頭規模の集団になった。


そして、アタシの後方から迫ってきた。


またジャンプして匂いを断ち切りつつ、木に登り隠れるか?それとも、駆け抜けるか?


どちらにも、リスクが存在する。


でも、落ち着いて考えている時間はない。



隠れて行動できなくなるリスクよりも、未知のリスクを取ろう。



駆け抜けることにした。



訓練を続け、能力を伸ばした結果、走っている最中の感知能力は周囲三メートル程。


識別は出来ないが、何かが居ることは感知出来る。


獣道を、駆け抜ける。


運悪く進行上に居たラットマンはホウキで払いのける。


払う速度は手加減なしのフルスピードだ。



駆け抜けざまに払った一撃は、一拍の後、手足の細いラットマンをバラバラにした。



真紀は、すでに駆け抜けているので、どうなったのか解っていないが、確かに当てたはずなのに、手応えの無さに疑問を感じていた。



次々に現れるラットマン達を、ホウキで払いまくっていたが、最後にラットマンを見かけてから、かなりの距離を駆け続けていた事に気づき、立ち止まった。


その場で感知を行ったが、追いかけてきていた集団は範囲外らしく反応はない。


他のラットマン達と思われる反応も遠く、どうやらテリトリーを抜け出せたようだ。



大きく息をついたとき、自分が緊張していた事に気が付いた。


震える自分の身体を、自分の腕で抱き締める。



怖かったよぉ、怖かったね。



アタシは大丈夫、今までも大丈夫だったのだから、これからも大丈夫だよ。



だから、アタシは頑張れるね。



恐怖でパニックを起こしそうだった自分を、なんとか落ち着かせることができた。



どうやら、この位置は、ラットマン達のテリトリーの外で、入ってこようと考える生き物もいない。


生物の空白地帯のようだ。


今日はここで夜営しよう。

そう決めた真紀は、準備に取り掛かった。



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