よくある話
雨上がりの朝、空は雲に覆われていたが、真紀は日課を済ませて、朝食代わりのリンゴを食べていた。
食べながらも考えることは、本のことだ。
ノーアイデア、ノー栄養。
まてよ、アイデアを英単語にするとidea。
そのまま読んでしまうとイデア。
ノーイデアでは、意味が判らない。
英語で私はIである。
だからアイデアと読める。
もしかしたら。
EIYOUは、エイヨウでは無くて、エイユウ?
そうすると、の 英雄って事?
箱から本を取り出して、表紙を読む。
Nが重なっているからおかしな事になっていたが、読み取ることができた。
『でんせつのえいゆう』
伝説の英雄?これって日本語なの?
本を開き読み始める。
英語=英単語って目で見ていたからアルファベットの羅列にしか見えなかったが、ごちゃ混ぜローマ字表記として見ると読めるし、意味がわかる!
慣れない表記で、読みづらかったがページ数は少なかったので、小一時間で読み終えた。
書かれていた内容は、英雄譚としては良くある話であった。
我々人類は、この地に何千年もの間、平和に暮らしていた。
ある日突然、ゼニトルマンと言う男が現れて、我は紳士だ、この地は我の物だ、と宣言した。
この地の王は、兵士を集め、訳の判らない事を言う男を捕らえようとしたが、逃げられてしまった。
だがすぐに、沢山の異形な生物を引き連れ、この地の村や町を滅ぼしていった。
兵士達の抵抗むなしく、王都は異形な生物に包囲された。
その時、あまり仲の良くなかった周辺種族を引き連れた英雄が、救援に現れた。
英雄は黒い石の力を使い、周辺種族はそれぞれ固有の力を使い、兵士は武具の力を使い、力を合わせて戦い、ゼニトルマンを討ち取った。
それ以後は、一致団結し周辺種族と共に歩み続け、今の平和がある。
めでたし。めでたし。
何か児童向けの内容であったが、いくつかわかったことがある。
それは、元の世界とは違い、知的生命体は一種では無く多種である。
もしかしたら、肌の色で分けているだけかも知れないが。
肌の色によって、固有の力なんて出せないだろうから、種族が違うだろうと考えた方がすっきりする。
ある程度以上発達した文明、王都、町、村がある。
あと、これは余計だが
ゼニトルマンはジェントルマンと言ったのを聞き間違えたと妄想できる。
まぁ、行動を考えるとゼニトルマンで正解だと思うけど。
そして重要なのは、英雄は黒い石を使っていたと言うことだ。
本文を何度も読み返したが、黒い石と書かれているのは、この一文の中だけである。
アタシの持っている黒い石ころと同じ物なのだろうか?
だとしたら、何の能力を得て、ゼニトルマンを討ち取ったのか?
そんな事を考えつつ、本を見ていると、表紙が背表紙と比べると厚いような気がした。
何気に爪を立てて見ると捲れそうだ。
慎重に、はがしてみると、そこに書かれていたのは。
英雄石を探せ。
ただ一文のみ。
解消しない疑問を残しながら、もう一冊取り出す。
こちらは、字が潰れていて読めないところが多い。
だが、どうやら遺言書のようだ。
文頭には、『この書を見つけた人、申し訳ないがセントラル王国中央区バーン家に届けて欲しい。きっと謝礼が貰えるはずだ』から始まり。
その後は、岩山探索中に、縦穴から落ちてしまい動けなくなり死を待つだけだと、沢山の人の名前と思い出話、あと謝罪が書かれている。
最後に、『妻マリア苦労を掛けて済まない。いつまでも愛している』と書いてあったから遺言書だと思ったが。
内容の殆どが遺言書では無く、まるで暴露本のようだ。
……一部読めなくても問題ない。
そう考え二冊とも箱に戻した。
真紀は、自分の生きた証を残す事を目的にして旅をしようと考えていた。
生きた証とは何か、自分の存在を誰かに見せつけること。
この本を届ければ、自分の存在を見せつけることが可能だ。
自分の目的と一致する。
どこにあるか判らないが、セントラル王国を目指そう。
曖昧だった目的に目標が追加されたのであった。




