肉を得るために
翌日、果実を大量に採り、その後、身体の状態を確めつつ、ゆっくり日課を済ませた。
昨日のダメージは、まったく感じられず。
夢だったのかと、思うくらいだ。
荒い息をしながら、岩山を背にして、昨日の事を考えていた。
あれって、なんだったのだろう?
分かっている事は、
とにかく、大きくて、空を飛んでいた。
今まで、気がつかなかったのは、近辺に居ない物だったのかな?
たまたまここを通過しただけなのかな?
そう言えば、さっき岩山を登ったけど、やっぱり居なかったし。
きっと、そう言うことだね。
謎は尽きないが、この世界には、あんな物が存在しているって事だけ覚えておくことにした。
対策なんて、飛んでいるのを見かけたら木にでもしがみついて耐えるしか方法がないし。
たまたまなら、もう来ないかもしれないしね。
そう結論付けて、いったん棚上げした。
それより怪我をしたとしても回復する手段を得たのは大きい。
怪我=死、これが自然界の鉄則であると考えていた。
でもこれからは、怪我を恐れずに、攻めることが可能になった。
これからは、積極的に動ける。
真紀は、そう考え小動物を直接狙ってみることにした。
岩山から離れ、森の近くで寝転がり、振動感知能力最大で周囲を探った。
森の中は、沢山の生き物がいる。
日々の訓練で、寝転がれば中型の生き物なら、五十メートル範囲まで識別可能となっていた。
小型の生き物は三十メートル。
小さい虫では一メートルくらい。
まだまだ継続特訓が必要だ。
その中から、中型の動物が近くにいない小動物のみを探ると、二十メートル先に、一羽で居るウサギを発見。
真紀は、出来るだけ音をたてずに近寄り始めた。
ウサギは、周囲に木が無く、草が豊富に生えて居るところにいた。
時折、立ち上がり周囲を見回したあと、地面を掘るを繰り返していた。
ウサギが穴を掘るタイミングで、少しずつ近寄り。
ウサギとの間にある最後の木に潜んだ。
ウサギとの距離は五メートル。
手に持っているホウキのような武器のリーチは腕の長さ含め二メートル。
気を使って転ばずに踏み込める距離は二メートル。
合わせて四メートルが、今の真紀の間合いである。
あと、一メートル足りないが、真紀は、次に穴堀を始めた瞬間に踏み込んだ。
一歩目、踏み込んだ音を聞いたウサギが顔を上げた、二歩目、ウサギは背を向けた、三歩目が地面につく前に、精一杯ホウキを付き出した。
肉を突き刺す手応えにより、狩りの成功となった。
あっさり終わった狩に、緊張を解いた真紀は、ウサギを洞窟に持ち帰り、やったことのない、解体に取り掛かった。
慣れない手付きで、包帯包丁を使い、喉を切り裂き、逆さに吊るして血抜きをし、食べるところが判らない内蔵を取りだし皮をはぎ、肉以外は全て川に流し捨てた。
以前作った、かまどに火を付け、小さく切り分けた肉を小枝に突き刺して焼いて食べた。
この世界で初めて食べた肉の味は、美味しかった。
美味しかったが、保存する方法の無い、現状で狩りをして解体して肉にするまでの事を考えると、毎日は大変だと思ってしまった。
今は日も暮れて夜の時間、解体に半日以上かかってしまっていた。
「慣れるしかないか」
そう独り言を呟いて、残りの肉も焼き始めた。




