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ノスタルジア アタシも幸せだよ(完)

アタシは草原を飛んでいる。

岩山からクレーター脇の窪みに作った臨時の家まで帰るためだ。


なんで飛んでいるのかと言うと天にも昇る最高の気分だからだ。

そんな気分なら本当に飛んじゃぇって、そう思って実行してしまうアタシってば単純だと思うけどね。

だって本当に最高の気分なんだもん。


世界の王から他の願いはないかと問われた時に思いついたのは携帯電話のこと。

思えば元の世界のアタシは、携帯電話を無くしてから何もかも悪い方に転がり、

吹っ切れるまでは引き隠りに拍車がかかり転落の一途を辿っていっていたはず。

二十代の一番大事な時期を、半分引き隠っていた上に男性恐怖症もあり出会ってもアタシから逃げる。

そんなんで良い人生を歩けるわけがない。


だから雑貨屋で買った携帯電話を修理してくれることを願ったの。

ぜったいにこの携帯電話はアタシの無くしたものだと思って。


世界の王は遥かに発達した世界の宇宙人である。

元の世界の機器は骨董品であると言い切れるほどのね。

願いを伝えてから影魔法でしまっていた携帯電話を取り出して渡すと。


「これを直せば良いのだな。造作でもないことだ。着いてこい」

と連れてこられたのは、なんと宇宙船。


この岩山はカモフラージュを兼ねた水の浄化システムであった。

流石に汚染された水をそのまま惑星に垂れ流すのではなく。少しでも浄化しようと建設した物であったそうだ。

長い年月で貯まった高濃度の汚染物質はある時を境に無害な物質に分解され始めた。

一億年に一度ある大量の魔元素の流入である。

なんでそうなったのかは世界の王も研究したが不明であったので、本国のアカデミーに丸投げしたそうだ。

そして実験と研究の結果。

汚染水を浄化する装置が作られたそうだ。

まだ宇宙船に載せられるほど小型化は出来ていないが水は貴重な消耗品では無くなったそうだ。

発見者である世界の王は宇宙人なら誰しもが知る超有名人何だとさ。

名前を聞いたが、理解できない。音にすれば『ベロチュウ』としか聞こえないのだが、アタシが発音しても違うらしく何度も言い直された。

でも満足出来る発音にはならず『世界の王』のままで良いということになった。


話しを戻して。

大量に流入してきた魔元素は汚染物質を包み込み浄化し魔元素の塊となった。

魔元素の塊ことアタシの持つ黒い石ころがスキルを与えてくれてから砂になると言うか砂を出すのは、魔元素の塊に含まれる浄化された汚染物質だったらしい。

元は汚染物質と言っても無害ならいいや。


世界の王とアタシは岩山の一角に隠されていたエレベーターで地下に潜る。

そして何の物質で出来ているか分からないが全体が明るく光る廊下を歩き。世界の王が修繕部屋と言っていた部屋に入る。

そこには半円のカバーが付いている装置が置いてありカバーが開くと携帯電話をそこにおいた。

世界の王はただ立っているだけだったので並んで立っていると、携帯電話は一瞬消えて直ぐに現れた。

世界の王は携帯電話を取り出すと「ショボい機械だ」と言いながらアタシに渡してきた。

手に取り携帯電話を見る。

それはクッション袋に入れていた当時そのままの傷ひとつない姿であった。

アタシは二つ折りの携帯電話を開き電源ボタンを長押しする。


それは簡単に起動した。


懐かしい起動画面を見続けていると液晶画面に時計が表示された。

当時の携帯電話には壁紙機能はないのでとてもシンプルである。

時刻は『0時02分』忘れもしない日付が変わるまで見続けて諦めてクッション袋に入れて鞄に放り込んだ時間だ。

電池はフル充電表示、電波状態は当たり前の圏外表示。

でもこれはアタシの携帯電話ではない可能性が高まった。

だって未読メール有りの表示があったのだから。

アタシのテンションは駄々下がりである。

友達の居ないアタシにメールなんて着ている筈がないのだから。

でもこの携帯電話の持ち主である、元の世界の人はどんなメールをやり取りしていたのだろう。

他人のプライベートを覗きたくなる衝動に駆られる。

恋人とのやり取り?旅行や遊びのお誘い?毎日が充実している楽しいやり取りをしているのかも。

見てみたい。でも人のプライバシーを覗くなんて、それでも見てみたい。


せめぎあう二つの気持ちに挟まれたが、今のアタシは異世界人。

元の世界とは縁が切れた存在。


見ることを諦めた。


そして静かに携帯電話を閉じようとした時に世界の王が教えてくれた。

「その機械の持ち主は『糸紡真紀』と言うらしいぞ、データにそう書いてあったからな。残念だがマッキーの持ち物ではなかったな。

まあ気を落とすな。また見つけたら持ってくるがよい。その程度の機械の修繕など容易いからな」


今、世界の王は『糸紡真紀』と言った?

本当にこの携帯電話はアタシのなのか。

それならなんでメールがあるの


すべての理由は着信メールを見ればわかる。

アタシは当時の手順に従って受信箱を見たが知らないアドレスだ。

また迷惑メールかと残念に思いながらも開封し書かれていた内容を読んだ。


『真紀誕生日オメ

恵子だよ。

一日遅れでメンゴ

彼氏が束縛系で電話帳のメアド消された上に私のメアドも変えさせられてた。束縛しすぎだっちゅうの。彼と別れたから今はフリーだよ。真紀が行けなかった旅行でみんな事故で携帯水没したから連絡取れずに困ってたよ。久し振りにみんなで集まろうと計画中。来週会わない?連絡ヨロ』


確かに旅行のお誘いがあった。でも旅費を工面できずに泣く泣く諦めたはずだ。そう言えば覚えていないけどその年からデーモンなんとかメールが届き始めたような気がする。

そうかアタシは友達を無くしてなんかいなかったんだ。

恵子は最後まで『あけおめ』メールを送ってくれてた人。

そう言えば『メリクリ 彼氏と一緒(ハート)』と送ってきてたから羨ましく思った記憶がある。

アタシの友達が少なすぎてメアドが分からなくなっていただけだったんだ。

その事実を知り、アタシはこぼれ落ちる涙を止めることが出来なかった。


連絡が無いのは元気な証拠。

そう考えてメールの返信が無くなってから自分から他の手段。手紙とか最後まで連絡の取れた恵子に聞くとかしなかった。

アタシが疑問に感じた時に一歩踏み出していれば違う人生があったのかもしれない。

そこまで理解した時、自分の積極性の無さに泣きながら笑うしかなかった。


その後、アタシは世界の王に携帯電話を預けて三千万年後にアタシ自身ではなく、携帯電話を元の世界のアタシに返して欲しいとごねた。

それは子供のように駄々をこねまくった。

世界の王は渋々受け取り送ることを約束してくれた。


その瞬間。様々な記憶が脳裏を過ぎていく。

元のアタシの知らない記憶だ。

みんなで集まってメアドを再交換して、その後も仕事の合間にあちこち遊び回り、友達の彼氏の友達を紹介されて、始めは男性恐怖症で距離を置いてしまっていた。

友達の説得もあり、その誠実さに安心感を覚え受け入れて付き合い、プロポーズ、結婚、新居、出産、長男長女の育児に泣かされたが不自由の無い家庭。


幸せな日々の記憶。


そして仕事ではなく、下の子を幼稚園に連れていくところで途絶えた。


その後の記憶は変わらない、この世界での記憶だ。

携帯電話を無くさなくとも、この世界に来ることは変わっていないらしい。

不思議なことに試練で体験した内容も同じだ。


元の世界での記憶は携帯電話が見つかっていた記憶なのに、この世界での記憶の始まりは携帯電話が見つかっていない記憶になっている。


元の世界とこの世界では事象が混ざっているらしい。

その証拠と言えば、アタシは二つの人生の記憶を持っているからだ。

普通に考えてもありえないのだが、そもそもアタシの記憶はコピーだ。

しかも蜘蛛君の記憶もある。この身体も魔元素の塊によって作られた何億年も生きていける身体なのだから高々十五年の記憶が増えたところで問題ないのかもしれない。


よく過去を変えると言うとタイムパラドックスがとか言われるが、そもそも存在が違うのだから問題になり得なかったのかもしれない。


世界の王に「約束を守ってくれてありがとう」と言うとキョトンとしていたが。「儂は約束を違えたことは無いぞ」と、胸をはりつつアレをぶらぶらさせながら答えてきた。

知能が発達してとんでもない科学力を持っていても羞恥心やデリカシーは持っていないのかもしれない。


そんな些細な事は置いといて。


携帯電話が有る無し、そんな小さな事柄がその後の人生を左右する。

元の世界でのアタシは友達から連絡を貰えないイラナイ人だと思ってた。

でも本当はそんなことは無かった、新しい記憶が全てを物語っているからだ。


そして幸せ一杯な最高の気分で岩山から飛び立ち今に至る。


元の世界のアタシに子育ては任せた。幸せな日々を続けてほしい。

この世界のアタシもたくさんの友達がいて幸せだからね。

しかも未完の冒険がアタシを待っている。

って言っても、遺留品と言う荷物を届けるだけの冒険だ。

この荷物が届く事によってアタシの様に幸せな気持ちにになる人がいると良いな。

荷物の有る無しだけで人生が変わるかもだしね。


クレーターが見えてきた。

空を飛んでいるのは目立つから山奥の川を越えたら、そこからは歩いて行こう。


マッキーの冒険は、まだ始まったばかりである。


〜Fin〜


ほぼ毎朝8時に投稿を続けていたマッキーの冒険。

ここで一区切りとさせて頂きます。


初執筆初投稿が長編と言う冒険をしでかしたのに、毎日200人以上の読者様に読んで頂けている。

その事が嬉しくて4ヶ月の間、携帯電話のボタンを押し続け、最後まで押しきる事が出来ました。

読者の皆様、ありがとうございます。


状態:完結 にしました。

でも本文の通り。マッキーの冒険はまだ続きがあります。

筆者は今回のことで、頭で考えている事を文章にするということがいかに大変な事なのだと知りました。

結論、筆者の文は趣味の域を越えられません。


それでもお付き合い頂けることを願って続投します。

今後、毎日更新は出来ないと思いますが、

次の完結までマッキーの冒険を筆者と一緒に見守って頂きたく、

宜しくお願い致します。



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