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願いの結末

先程までの身体の軽さが無くなった。地面に引き寄せられる感覚がある。

どうやら身体に意識が戻ったようなので目を開く。


真っ暗?

夜では無いようだ、仰向けで寝ている空には星どころか雲も見えない。


あれ、アタシは今戦いに勝利したよね。

勝利を確信だなんてしてたから、それってダメなフラグだったのかしら。

まさかの最後の最後でアタシは逆転負けしたの?

不安がアタシを押し包むがアタシはアタシ。

何も変わった気がしない。

でも強いて言えば身体を締め付ける感触がないくらいだ。

これが闇魔の世界なら凄い解放感だ。

あんなに抵抗する必要はなかったのかしら。


それにしても此処は気持ちが良い。

ふわふわ糸のベッドの上で寝そべっているようだ。

暫く、気持ちの良いその肌触りを堪能する。


あれ?もしかして。

「えい」

足元を蹴飛ばしてみると、ぽっかり穴が開き日の光が注ぎ込む。


なんだ、洞窟の白い繭玉のベッドの中だったのか。

で、朝になったから目が覚めたと。

それにしても長い夢だったなあ。詳細まではっきり覚えている。

これはアタシの旅を暗示しているのかな。それだとちょっと恐いから逃げるときは徹底的に逃げないとね。

でもたっぷり眠れた様だから、目覚めスッキリだし気分爽快。

こんな朝は酸っぱいオレンジでさっぱりしたいけど取置きがあったかな。

無ければ取りに行かなきゃだね。

アタシは白い繭玉から外這い出る。


あれ?風景が違う。ここはどこなんだ。

さては蜘蛛君。あれだけ印象に残るように別れを演じておきながらアタシが寝ているうちに勝手に身体を使ってまた移動したのか。


でも周囲を良く見ると何だか覚えのある景色だ。


どこで見た景色なのかと思い出そうとして考えていると。


「小娘。いやマッキーよ、よく儂の試練に耐えきれたな。まずは誉めてやろう。って言うかホントに耐えきったのか?」


背後からいきなり高圧的に話しかけてきたと思ったら、軽い口調になった裸のじいさんは誰だっけって 世界の王か。


そうか、白い繭玉なんて懐かしいとこで目覚めたから勘違いしたけど、ここは岩山の頂上か。

そしてアタシは試練を耐えきったところだと。


私的急展開にあたふたしていると。


「ところでどうでも良いが、小娘ではなくマッキーよ。そのままで良いのか?」

そのまま?そのままって何のこと。


「異世界人は局部を隠すものではなかったか。ああ、そうか蜘蛛女は普通の異世界人ではないから隠さなくても良いのか。

でもヨミからは異世界人は裸を人には見せないものだと聞いていたのだが」


アタシは白い繭玉に逃げ込んだ。


そう言えば身体を締め付ける感触が無いと思っていたではないか。

なんでその時に確認しないの。アタシのバカ。

太陽の下、素っ裸を見せるなんて、どこのヌーディストビーチだ。ここは山の頂上だからヌーディストマウンテンか。そんなもの聞いたことがない。

恥ずかしいことこの上ない。

ちゃんと回復包帯が消えても裸を隠せるマントをかぶっていたのはずなのに。


それにしてもマントや籠手、すね当てはどこにいったのだろう。背負い袋もどうなったのかな。


そんな事を思いつつ、お尻から包帯を出して、いつものように巻いて包帯水着ルックになる。

最後に頭部ガード代わりの鉢巻きを結び気合いを入れ直す。


さっきのは無かったのよ。いい?アタシ。全ては夢。夢の中の出来事。

アタシは試練を耐えきったばかり、今から初めて堂々と出ていくところなのよ。

「よし」


アタシは格好を最後に確認してから外に飛び出し。

世界の王と向き合い。

「アタシは試練を耐えきったのだから、約束通りアタシの望みを聞いて欲しい」

堂々と胸をはって一息に言った。


「なるほど、やり直しをするのか、うむ分かった。ヨミも良くやり直しを要求して来ていたからな。裸を見たことは忘れよう。

では、確かモトイとか言うのだろ。では、」


頼むからそのセリフは心の中だけで言ってくれ。

アタシは穴があったら入りたい気分だ。


「マッキーよ、よく儂の試練に耐えきれたな。まずは誉めてやろう。って言うかホントに耐えきったのか?」


なんかさっき聞いたセリフだ。

誉めてくれたのは純粋に嬉しいのだけど何で疑問系なんだろ。


話しを聞くと、アタシは自分でマントを脱ぎ捨てたらしい。

そして闇に犯された肌が黒く染まっていった。

だけど身体が黒く染まりそうになった時に、服が光輝き、服が消えたと思ったら白い肌に戻った。

そして再び黒くなり始めて頭部まで黒く染まりかけた時に再び光輝き、頭飾りが消えて白い肌に戻ったそうだ。


どうやら三回に分けて襲ってきた痛みは、水着と鉢巻きで痛みを回復してくれていたみたいだ。

アタシは回復包帯のお陰で意識を保っていられたことになる。


そして今度こそ全身が黒く染まった時に、世界の王には理解出来ない事が起きたそうだ。


「真紀は強いです。全力で戦えです。絶対勝てるです。真紀の行動は見ていて面白いです。戦いの間は僕が身体を回復しておくです。だから頑張るです」

といきなりアタシが話し出したと思ったら、

お尻から糸を出し白い繭玉を作った。

そして中に入る時に「回復に邪魔です」と言って籠手とすね当てを外したそうだ。

世界の王が唖然としている間に白い繭玉に入っていったアタシは、日が七回昇った今、出てきたそうだ。


アタシも話しを聞いて唖然としたさ。

蜘蛛君たら消えずにちゃんとアタシの中で生きていたんだ。

アタシがアタシの記憶(心)との戦いに集中していたから蜘蛛君の記憶が分離して居たのかもしれないね。

ひとつの魂に二つの記憶(心)。

世界の王が理解できなくても当然か。


でも教えてなんかあげない。世界の王よ悩むがよい。


客観的に見ていた事を教えてくれていた世界の王には悪いがアタシが答えることは

「アタシはアタシ。それが耐えきった証拠だよ」


世界の王は暫くアタシを厳しい顔で見ていたが表情を緩めると。


「確かにマッキーは儂の試練に耐えきったようだ。さぁ願いを言え。儂に出来る事であれば叶えてやる。この惑星に住む生物の考える願い事を叶えるなんてたやすい。」



おおっ。何だか願い事を叶える竜みたい。

って良く考えればそのままじゃないか。

違いと言えば世界中を探し回らなくても試練に耐えればいいってところか。


アタシは願い事を伝えた。

「もう二度と異世界に干渉しないで下さい。

世界の王は暇潰しにやっていることは、異世界の世界を混乱させ、生きている人々は迷惑をこうむっています。

それにアタシやヨミさんのような辛い想いする人をこれ以上増やさないで下さい」


一息に伝えてから世界の王の目を見る。


世界の王もアタシを見る。

その表情は気持ち厳しそうに見える。

三千万年。世界の王の感覚からすれば三ヶ月程度だが。暇潰しとは言え楽しみを奪うような願いだ。

そう簡単には「良いよ」とは言えまい。


でも人からすれば膨大な年月だ。放置しておけばこの先何千万、何億の人が迷惑を受けるであろう。

だからアタシも折れるわけにはいかない。


アタシは折れない意思を乗せて世界の王を睨み付ける。

すると世界の王の表情が変わった。


元からしわくちゃな顔で分かりにくいところに気持ち厳しそうに眉間にシワを寄せていたように見えていたのだが。

シワが薄くなったあと、今度は良くわかる表情を始めた。

それは困惑、それも『お前、何言っているの』と簡単に読み取れるくらいの表情だ。


不味いかな。もしかして世界の王を怒らせてしまったのかしら?

でも約束だ。願いを言う為に耐えたのだから、叶えて貰わなきゃいけない。

願いは聞いたけど初めの約束では叶えるとは言っていないとでも言うつもりか?

反故にされたら堪らない。

「もう二度と異世界に干渉しないで下さい。お願い致します」

アタシはもう一度願いを伝えた。

そして世界の王は一言呟いた。


「それだけ?」


え?もしかしたら願い事は三つ言えたりするのかしら

昔話って殆どの場合は三つ言えたりするものだよね。

じゃあどうしようかな。

あと二つもあるし何にしようかな。

楽しいことを考えていると気分が良くなり、睨み付けるときに締めていた表情筋が緩んでしまう。


緩んだアタシの顔を見て世界の王は、申し訳なさそうな表情に変わり。

アタシの頑張りを無駄にする言葉を発した。


「異世界への干渉は飽きたから、もう数万年はしていない。それが願いなら叶えよう。もう儂は二度としないことを約束する。

と言っても、もうじき観測機器が回収出来るからな、そうしたらこの惑星からも出ていくことになる。そうすればどのみち干渉は出来なくなるがな」

その、もうじきが長いから願ったのだ、約束してくれたのは本当に嬉しい。

だけど既に飽きたからもうやっていないって。アタシが試練を受ける必要が有ったのかは甚だ疑問だ。


「だから本来は試練を受ける必要はなかった」


そうなのか。やっぱりただの骨折り損だったらしい。でもまぁ。元の世界との決別がしっかり出来たから損だけではなかったと思おう。


「だから、他に願いは無いか」


異世界不干渉の願いを無かったことにしてくれるんだ。


じゃあどうしようかな。


暫く考えてからアタシは閃いた事を伝えることにした。



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