↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/134

緑色した旨い奴の恐怖

朝焼けの中、アタシは麦畑の真ん中を貫くように延びる道を歩く。


先日見た砦に近い方は実りの穂が出始めていた。


砦から離れれば離れる程、成長が著しい。


こちらの世界の麦の栽培方法は、元の世界とは少し違うようだ。



だからと言って困るわけでもないし、まだまだ続く麦畑を見ながら歩く。



朝日が完全に上った頃、麦畑を抜けた。


ここから先は山裾にそって道が続いている。


前方から多数頭立ての立派な馬車と警護の騎馬に囲まれた集団が遠くにちらりとだが見えた。


この場合の選択肢は一つしかない、気がつかれる前に隠れるだ。



アタシはすぐに森に入った。



あんな立派な馬車だ、間違いなく貴族だろう。



中には良い貴族も居るだろうが、ファンタジー小説を読んでいるアタシからしたら、関わったら最後漏れなく厄介事に巻き込まれるのが落ちだ。


しかもこの先にあるのは砦だけである。砦に用事がある貴族に関わったら間違いなく砦に戻ることになる。


出ていってすぐに戻るだなんて、どんな罰ゲームだ。恥ずかしいことこの上ない。


なんて妄想をしながら森の中を進む。

振動感知が働いているので、木陰に何か潜んでいるのではないかと心配することなく進めるのが利点だ。


馬車は六頭立てであった、構成からしてよっぽど重たいのであろう。


お馬さん、お疲れ様である。


馬車とすれ違ったがすぐに戻らずに暫く森を歩いてから道に戻る、フラグを立てないように気を付けなければならないからだ。


通りすぎたと思ってすぐに森から出たら、勘の鋭い護衛が待っていて誰何されるに違いあるまい。


そしてブラン砦の冒険者だと言い訳しても、なぜか疑われて強制連行されて巻き込まれる事になる。そんな落ちは分かっているのだよ。


振り向けば騎馬が一騎、砦の方向に走っていくのが見える。


きっと「気のせいだったか?」とか言っているに違いない。


アタシの危機回避能力をなめるな。こんなの砂糖の様に甘いフラグだ。


対策はバッチリである。



転移魔法でいきなり現れるとか、いきなり空から降ってくるとかない限り隙は無いのよ。



と、その時。


空から何かが降ってきた。

しまった、そんな事を思わせること自体がフラグだったみたいだ。


つい身体が反射的に動いてしまった。


久し振りの登場に油断していたからだが、何とかギリギリで蜘蛛糸発射を抑えることが出来た。



今目の前に居る、緑色した大きいヤツ。


そう久し振りに現れたのはバッタ君である。



それも今までに見たことが無いくらい巨大なバッタ君。全長は一メートルを越えている。


ここまで大きいといくら草食であっても怖いものなので、どうとでも動けるように身構えるが、バッタ君はピクリとも動かない。


それもその筈、すでに死んでいるのだから。



バッタ君の状態を見ながら考える。


空から降ってきたと言うことはどういう事なのだろう。


バッタ君が飛んできて、力尽きたのなら、羽根を開いていても良いはずなのに閉じたままだ。


とすると、飛んできた訳ではない。



って事は、まさか。



アタシは、そこまで考え付いた瞬間に森に飛び込んだ。


次の瞬間、これまた巨大な鳥が舞い降りてきた。


風圧により周囲の草木とアタシは押し流されそうになるがなんとか耐えきった。



巨大な鳥は元の世界での鷲をそのまま大きくしたような見た目である。


猛禽類特有のくちばしがこちらを向くが、草むらに隠れているアタシの姿は見失っているようで視線が覚束無い。


そして巨大バッタを足で掴み、大きく羽ばたき空に消えていった。


しつこく狙ってこないところを見ると、捕まえたバッタを巣まで運ぶ途中で落としてしまっただけだったようだ。


ちなみに羽ばたかれた時にも踏ん張って耐えていた事は言うまでもない。



取り合えず脅威は去ったが、アタシの振動感知は完璧では無いことを再認識出来たのは幸いであった。



始めの巨大バッタが、アタシの真上に降っていたら回避なぞ出来なかったし。


巨大鳥の接近反応を感じてから回避に入っていたとしたら、逃げ切れなかった可能性もある。


山の天辺で襲われたワイバーンとはスピードがまったく違う上に、ワイバーンは横からであったが、巨大鷲はほぼ真上からの強襲であったことも拍車を掛けている。


人間の目の位置は構造上、真上は見えない。


頭上をとられないように気を付けなければなるまい。


注意事項を頭に叩き込んでから気を取り直して先を進むことにした。



その後も歩き続けて、幾つかの村を通りすぎた。


その間は特に何事も起きていない。

村で食材を買い森で調理して食べる。

振動感知のせいで宿泊は出来ないので夜は蜘蛛糸警報装置のベッドで眠る。

の繰り返しである。


砦を離れて五日後に、唯一の立ち寄り予定地である大きい街にたどり着いた。


この街はマリアンヌさんの実家のある街である。


立ち寄りの理由は、あのおじいさんに会うこと。


いくらトラウマだと言っても、癇癪を起こした子供の様に飛び出してしまい心配を掛けてしまったことを謝るためと、マリアンヌさんとエリーさんから預かった手紙を渡すことであった。



砦ほどではないが、この街も周囲を壁でおおわれている。


門兵にギルドカードを見せて門を開けてもらう。


ついでに冒険者ギルドの場所を聞いた。



見慣れた冒険者ギルドのマークが描かれている店の中に入り受け付けにならぶ。


アタシの順番が来たので正面に座ると、初めて見る子供だったからなのか丁寧なのか良く分からない対応をされた。


「こんにちは、お嬢さん。ここは冒険者ギルドだけど、何か依頼でもあるのかな」


違った、まるっきり子供扱いだった。


年相応の見た目になるまで長い年月がかかると思うがしかたがない。


って言うか鍛えても見た目が変わらなかったけどアタシって成長するよね?


そんな思いを抑えつつ、ギルドカードを見せて、おじいさんの名前である、ドナルド・ジェンターさん家の住所を伝えて道を聞いた。


ギルドカードのランクを見て絶句していた受付さんは、すぐに街の地図を持ってきて場所を指し示した。


ギルドの配達の依頼を受けて場所を聞くのなら無料だが、今回はギルドを通していないから有料だ。




「ありがとうございます」


感謝の言葉と銅貨十枚を置いて、アタシはギルドを後にした。



その後も受付の人が慌てていたけど 我関せず である。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。