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一人で待つ深夜のお相手

翌日。と言ってもまだ暗い時間帯。


アタシは大広場の中心にに一人立っている。


この街から去る前に一つやっておきたいことがあり、その為に待つことにしている。


相手は焦らしを狙っているのか、中々現れない。



深夜などとっくに過ぎて、日の出の方が早いくらいだ、そんな時間まで女を待たせるとは

「偉くなったものだ」


アタシの呟きが聞こえたのか相手がようやく姿を現し始めた。



振動感知が警告を発するレベルになった時。


「さぁヤろうか」


アタシは妖艶な笑みを浮かべながら。


飛び込んでいった。






今日は大漁だ。


アタシの目の前にはネズミとゴミが大量に積まれている。


宴会後には食べかすが散乱している、自由に食べられる食料がこんなにもあるのだから、現れないはずはないと思っていた。


宴会中であっても、周囲の物陰に隠れているネズミは振動感知で拾っていた。


その時間でさえもかなりの数であったが、人がいなくなり始めるに合わせて、ネズミも増え出していた。


人間の気配が完全に無くなるのを待っていたらしい。先程、巡回の兵隊さんが行ってしまったばかりだ。


そのタイミングで侵入してくるとは、ネズミも頭がいい。だが今夜来てしまったのは運が悪かったな。包帯蜘蛛悪女のアタシが待ち伏せていたのだから。


逃げる術なぞない。



なんて格好つけているが、振動感知と夜目が効くので黙視とで人がいないことを確認してから。


ベタベタ糸を放射状に長く出して走り回っただけである。


ベタベタ糸に絡まったネズミには逃げる術は無く暴れれば暴れるほど絡まるという地獄。

ついでに食べ散らかしたゴミまで絡み取れて一石二鳥。


粘着力が無くなれば、切り外して新しい糸を出す、元の世界でのコロコロの様な利便さ。


まとめたネズミとゴミは焼却処分。自家製の『炎』の魔道具に魔力を通して一瞬で灰にした。


えっ 灰になった?


すごい火力だと思っていたが、ネズミ千匹近くとゴミが一瞬で灰になるなんて何ていう火力だ。


思いもかけない火力に、人前では使用禁止を心に決めた。



チマチマやっていたネズミ駆除の最後の締めとすれば最高のファナーレだろう。



ネズミさん迷わず成仏してください。



明るくなる前にアタシは宿に戻ることが出来た。



翌日、といってもネズミ駆除フィナーレを飾った日の朝ではなく昼前に、アタシは目を覚ました。


さすがに魔力と蜘蛛糸を大量に使った日は良く眠れる。


この時間では宿屋の朝食は終わっているので、もともと腹持ちが良いので飯は食べず。氷水だけ飲んで商人ギルドに行った。


商人だから問題ないとは思いつつ、予算が足りなくてあとから追加請求したらアタシは居なくなっていた、だなんて事にならないか気になったからだ。


ピエールさんを呼び、珈琲を堪能していると。


あまり待たされずにピエールさんが現れた。


開口一番「昨日の演説を聞いて久し振りに血肉が震えてしまったよ……」


ピエールさんも若い頃は冒険者をやっていたが、父親が病気になり、母親一人にさせるわけにもいかず冒険者の夢は諦めて商人になることを目指したと。

今では一端の商人になれたが、当時は一攫千金の夢が忘れられずにいた。

父親が亡くなったことがショックだったのか母親も病気がちになってしまい。

薬を買うためにがむしゃらに働いたと、母親も元気になった頃に嫁を貰って子供が出来て、商人になった事は間違いではなかったと思っているが、若い頃の夢は心の中で燻っていたと。


商人が取り扱う金額は若い頃の夢の金額を遥かに上回っていたから感覚が麻痺していたらしい。


アタシ達が一攫千金の夢を達成した金額。金貨百二十枚と聞いても何とも思わなかったが、

演説の中でアタシが強調していた「商人が食材や武器、装備を準備してくれたから」と言う言葉を聞いて。

若い頃の夢を実現した気分になれたらしい。


間接的であっても自分も一攫千金を夢を得る為の力として一緒に協力出来たことに「ありがとう」と言われてしまった。


なんか微妙に違うような気がしたけど、とても幸せそうなピエールさんを見て受け取ることにした。


初っぱなから脱線してしまったけど用件を伝えて確認したら。


やっぱり問題なく浴びるように飲まれた酒は途中から廃棄処分間近の酒に変えていたらしくお陰で損をしなくて済んだとのこと。


さすがは商人ギルド、金勘定に抜かりはないみたいだ。


もし余っていたのなら、それは返却不要ですのでと前打って、追加請求はしないことを念書として貰い受けた。


これにはピエールさんも驚いていたが、若いのにしっかりしていますねと笑いながら書いてくれた。


その後雑談中に『氷』の間道具は売れていますよ、来月末を楽しみにして下さいねと言っていた。


どうやら一月遅れで毎月月末に振り込まれるらしい。


振り込まれる金額は『氷』の魔道具も、宿屋のジャムモドキも、どちらも使用料なので純粋な利益である。


年間で金貨二枚以上の利益は見込められるので、初めから十パーセントを引いた金額で振り込んでくれるように依頼して書類を作成した。



アタシは手間がギルドは年会費が早い段階で手に入るのでお互いに得する契約である。


「それでは、またの御訪問をお待ちしております」

深々と頭を下げるピエールさんに見送られてアタシは商人ギルドから冒険者ギルドに向かった。



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