支店長の厚意
冒険者ギルドに着いた時は夕方に近い時間であった。
朝が遅いと一日が早く感じるのは、元の世界の休日があっという間に終わるのと同じ事なんだろうな。
受付で支店長を呼んで貰い、応接室で待つ。
最近なんか当たり前のようにアポなしで支店長を呼んでいるような気がする。
良く考えれば目上の人を呼び出すなんてたいへん失礼なことだ。今後は気をつけよう。
と思っていたタイミングで支店長が現れたので、突然呼び出してしまったことを謝罪した。
支店長は気にしていないから、これからも気軽に呼んで欲しいと謝罪を受けて貰えなかった。
アタシもそれ以上はそこに触れずに、昨夜の宴会で問題がなかったか確認した。
どうしようも無いくらいの大問題があった。
宴会自体に問題はなく、逆になさ過ぎたくらいであったと。
酒が入れば必ず暴れる事で有名な冒険者さえも一切暴れることなく、しみじみと満足気に酒を飲んでいたらしい。
冒険者達は不気味なくらい一様に静かであったらしく、守護騎士団の方が女性に声を掛けまくって居たためよっぽど騒がしかったそうだ。
あまりに静かな冒険者に調子に乗った守護騎士団がある冒険者パーティを煽ってきたが、そんな気分じゃねぇと相手にもしなかったそうだ。
そんな雰囲気に飲まれた守護騎士団は冒険者達から離れ女性の声掛けを続けることに終始したそうだ。
ならず者、荒くれ者の集まりと冒険者ギルドは、常に批判を受けていたが、
静かに酒と飯を楽しんでいた冒険者と、女性に声を掛けまくっていて騒がしかった守護騎士団とを比べられたらどちらが好印象だったか。
つい頬が緩んでしまうと支店長は言う。
冒険者の評価が一段と高まった事に喜んでいるようだ。
だが次の瞬間ため息をついてアタシを見る。
大問題とはアタシのした事であった。
演説が良くなかったのかと思ったが、それはすぐに否定された。
演説自体は素晴らしく、冒険者が感謝の心を持って依頼を受けているという事が分かったと、一般の住民や商人からたくさんの投書を頂いたと。
そこまでは良かったのだが倍以上の あの少女はどうやって浮いていたんだ と言う問合せや人物照会が朝から殺到していると言う。
ギルドとしては黙秘することは出来なく、名前、パーティ名、クラン名、ギルドランク、年齢、風魔法を公開していると言う。
ちょっと調べればすぐに分かる内容のみのようだ、この程度のことでアタシは文句を言うつもりはない。
が、アタシに確認もしないで公開した事を怒っていますよとポーズだけして貸しとすることで手を打った。
貴族や商人からより詳細な情報を求められているが、個人情報なのでそれには冒険者ギルドは対応しないが、
オーク討伐に参加した冒険者から情報が漏れるのは止めることが出来ないし、
守護騎士団は貴族との繋がりが深いので、そちらからも間違いなく漏れるだろうと言うことであった。
アタシが色々やらかしたからいけないのだが、内心感じていて準備し始めていたが本当に砦から離れるべき時期が来たようだ。
アタシはオークの脅威は無くなり気にしていた、一攫千金のフォローも出来たことで、
旅の続きを始める事を、早ければ明日にでも遅くとも明後日には出発することを告げた。
大騒ぎになっているアタシの事も、本人が居なければすぐに終息するだろう事も話した。
それを聞き残念そうな表情を浮かべていたが、何かを決めた様で、ギルドカードを出すように求められた。
カードを渡すと、暫し待てと支店長が退出して数分で戻ってきた。
アタシを起立させて、真面目な顔をした。
アタシはなんだろうと思っていたが、空気を読んで姿勢をただす。
「今回の演説により、冒険者ギルド自体の評価を飛躍的に上げる貢献をしてくれた事を評価し、ギルドランク星三個と叙する」
なんだか分からない展開であったが意味を考えずに「拝命致します」と返答した。
返却されたカードはギルドランク星三個となり、裏面には支店長の名前が刻まれていた。
星二個半以下と三個以上では、ギルドからの信頼度が格段に変わると言う。
二個半までなら強者なら誰でもすぐになることが出来るが、そこから三個までの道のりは長い。
本来なら長い期間昇級試験を課して全てをクリアする必要がある。
ただ強いだけではなく、冒険者ギルドの看板を背負える気質を試されるらしい。
アランさん達も地道に依頼をこなして一年掛けて三個になったと言う。
星三個となると発言権があり、先日のオーク討伐の際、撤退を上申。結果的には却下されたが議題にまで上げられたのは星三個のアランさんが上申したからだ。
他にはギルド関係の各店舗に立ち寄った際の扱いが変わるとかあるらしい。
いざという時に自分自身の命を守るためにも、権限は持っていた方が良いが責任も発生するから使いどころは慎重にせざるを得ない。
最後に「あまり変な事をされると、俺の首が飛ぶから気をつけてくれ ガッハッハ」
と笑って送り出してくれた。
なんだか久し振りにその笑いを聞いた気がする。
支店長の厚意を裏切らないように頑張ろう、そう心に誓うマッキーであった。




