1話 持つは最強の力
まあ、一話はこんなもんだよね
魔王軍との戦争から数十年。
その戦争で一番被害を受けたのはロタナス王国。
草木が焼かれ、農作物は焦げ、血が流れ、荒れた地になり、到底人が住めるようなところではなかった。
だが、今の辺り一帯が黄緑色の草でいっぱいで、風に流される草原を見て、誰も戦争があったとは思わないだろう
そんな中で花を摘む一人の少女。
摘んだ花を、小さな手で頑張って花冠を作る。
「おかぁ様!見て!ミー可愛い?」
そして、出来た花冠を自分の頭に乗せ、少女をお姉さん座りしながら見守っている女性に聴く。
「えぇ、可愛いわよ。お父様にも見せてきたら?」
「うん!行ってくる!」
そう元気よく言った少女は、草原を囲んでいる柵を越え、パラソルの下で座り、足を組んで、コーヒーカップを持っている男性にも同じように聴いた。
男性は持っているコーヒーカップを皿に置き、組んでいた足を戻した。
「あぁ、可愛いよ。世界で一番可愛い」
そして、前屈みになり、少女の頭を撫でた。
乱暴に撫でたというのに、母親譲りの綺麗な白い髪が、全然乱れていない。
その光景を同じくパラソルの下に居る執事のセヴァは見て微笑んだ。
かつて、そして今現在、王国最強と言われている男。
そして、世界に九人しかいない「神選者」の一人。
名門トレイア家初代当主が戦闘、特に剣に関することに関しては天才と言われたように、カランも戦闘の才能はもちろん、剣の才能が溢れていた。
それを皆、初代の生まれ変わりと期待し、国は「ディヴァインウォリアー」となることを期待した。
幼少期こそ楽しそうに修行をしていたが、十歳の頃は、皆の期待をプレッシャーと感じ始めてか、学園でも一人が多かったが、ある一人の少女と出会い、急に行き悩んでいた剣の実力が伸びた。
そして、学園を卒業し、王国騎士団に入り五年で団長まで上り詰めた。
それからは、魔王軍との戦いの中で神に選ばれディヴァインウォリアーとなり、勇者と他のディヴァインウォリアーと共に魔王軍との戦いに勝った。
その後は色々あって姿を消していたが、修行、戦うしかしなかった少年が、今は一人の子供の親となり、頭を撫でているこの光景。
カランを昔から見ているセヴァは、執事として感情抑制には自信を持っているが、無意識に口角が上がってしまう。
「セヴァ…もう慣れろって言ってるだろ」
「申し訳ありません。ですが、カラン様の「全て」を知っている身からすれば、この光景に慣れれないのですよ」
セヴァがそう言うと、カランは苦笑いをする
「過去は過去、今は今だ。過去のことはもう忘れてくれ」
カランの過去。それは、楽しくも辛いものだとセヴァは思う。それを忘れるなど、セヴァは出来ない。
「ふふっ」
セヴァはそう笑って、カランの空になったコーヒーカップにコーヒーを淹れた。
何の濁りもない澄んだ風で運ばれてくるコーヒーの香りは、少女の鼻にも届いてくる。そして、少女は苦い顔をした。
「おとぉ様!そんな飲み物がおいしいの?」
「あぁ、おいしいよ。まぁ、ミーは一生このおいしさが分かることはないだろうな」
カランの言葉にセヴァは笑い、少女は二人の反応を見て、皿に置いているコーヒーカップを手に取り、より近くに来て苦くなったコーヒーの香りを我慢して飲んだ。
そして、少女は先ほどした苦い顔よりも苦そうな顔をした。
「にがぁいぃ…」
そう言って、皿にコーヒーカップを戻した。
「どうしたら、おいしくなるの?」
「コーヒーの苦みよりも苦い思いをしたら、おいしく感じるんだ」
「ミーは苦い思いしないの?」
「あぁ、しない。…絶対にさせない」
一見、この草原の防壁は囲んでいる柵だけだが、その実、物理障壁と魔法障壁を交互に何重にも張っている。
カランは再びコーヒーを口に運んだ。
カランは拳に力が入る。この貰った力は、自分の力を誇示するためのものではない。護るための力だ。そう心に刻んで。
アイスは食えるけど、飲めません




