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ルアボ村④

「ランド! たっ大変よ!」

マルーシャはランドたちがいたルアボ村の外れまで戻ってくると急いでランドの姿を捜し息を切らせながら言った。


「遅い! ピクニックに来てるんじゃないんだぞ!」

マル―シャが戻ってくると、いつの間にか、陸側からここを目指していた仲間の兵士たちが合流していて、太陽は西に傾きかけてはいたが沈むには速い時間帯だったが体を休めている者や、食事当番らしいき兵士数人は今夜の夜食の準備を始めていた。


テントは張っていなかったが、どうやらすでにある家の中で今夜は一夜を過ごすようだなと兵士たちの行動で瞬時判断した。


ランドはアルとルカそれにいつの間にか合流したティ―チと雪をかき分けどこから探してきたのかテーブルが置かれた場所に地図を広げて話しあいをしていた。


ランドは林の中からマル―シャの顔を見るなり怒鳴りつけた。

マル―シャはランドを気にする様子もなく仁王立ちして睨んでいるランドの胸に飛び込んだ。

マルーシャは息を切らせながら両手でランドの服を掴み、息を整えつつ彼を見上げて早口で話した。


「そっそれどころじゃないのよ! たっ大変なのよ。話声を聞いたのよ。この近くに誰かいるわ。てっ敵かも知れないわ」


マルーシャの話を聞くなりサミュにも視線を移し、真実だと悟ったランドはマルーシャを林の方角とは反対の方へおしやり、マルーシャ達が走ってきた方角を睨みながら剣に手をかけた。

他の兵士達もいっせいに剣をさやから取り出し身構えた。


その時、ランドのすぐ腕の横を黒い物が飛んできてテーブルの上に置かれた地図の真ん中につきささった。

「出て来い!」


ランドは飛んできた方角を一喝し叫んだ。

すると林の向こうから薄黒い色の布で顔を隠した怪しい男が姿を現した。顔は布で覆われている為見えなかったが鋭い眼光だけはみてとれた。


その後ろにも同じような姿をした数人の男達がいるようだった。

その異様な集団のリーダーらしき男は別段剣をかざすわけでもなく、ラールシア兵が剣で構えている横を平然とすり抜け、ゆっくりとランドのところまで歩きながら近づいてきた。


ランドは警戒しながらもじっと睨み返していると、男はゆっくり口を開いた。

「またあったな」


リーダーらしき男はランドの目の前で立ち止まると、低い声が聞こえてきた。その声を聞いた途端すごい形相で睨み返し、剣を鞘から抜いてその男に向けた。


「何のようだ。お前はたいがい暇らしいな」


「ふん! そこで聞き覚えのある王女様の声が耳に入ってきたんで、ようやく城襲撃に現れたお前にちょっとあいさつに来てやったまでのこと」


平然とした様子で剣を構えるでもない男に対し、ランドはさらに鋭い視線で睨み返した。

その時ふと、ランドの視界にその男の腰にある剣が目に入った。その剣をみたランドの表情がさらに険しくなった。


「貴様がそれをどこで」


「フッ! その様子じゃあ、こいつが何かお前にもわかるようだな。ようやく俺の一部になったんでな。まっ、もう一つ別のものは奪い損ねたが、今はこれだけで十分だ」


その言葉を聞いたランドが剣をその男に向かって振りかざしながら叫んだ。


「なぜあんなことをした! お前の真の目的はあの方の命ではなかったはずだ!」


男はランドの剣を難なくかわしながらも視線をマルーシャに向けた。その視線に気付いたマルーシャだったが、なぜか今日は怒りも不思議と恐怖も感じなかった。


(この人シアフィスの森であった人だわ。でもどうしてかしら、あの瞳、どこかであったことがある気がするのよね。どこだったかしら)


マル―シャはそんなことを頭の中で考えていたその時、ランドが微かに震えているのに気付いた。マルーシャは怒りに肩を震わせて再び剣を構え男に向かって振りかざそうとしていたランドの腕をとっさに掴んで叫んでいた。


「ランド! この人を殺しちゃ駄目よ!」

ランドはマルーシャの声に我に返り、剣を男に向けるのを止めた。


マル―シャ自身もどうしてそんな行動をしたのかわからなかった。ただ、体が勝手に動いたのだ。


マル―シャの言葉と行動に一瞬動揺したかに見えた黒ずくめの男だったが、その様子をあざ笑うかのように男は突然笑いだした。


「フッハハハ、ここは神聖な場所だ。お前と今この場でやりあうつもりはない。どうしてもというのなら場所を変えて一戦交えてやってもいいがな。まっ、ここまでたどり着いたお前にもう一ついいことを教えてやろうとわざわざこっちから姿をみせにきてやったんだ。ラールシアが勝利するのは面白くないが、フッの奴のやられるのを高み見物するのも悪くないからな…さあどうする」


男はランドの前で剣を構えるでもなく、あざ笑うかのように見返した。ランドはマルーシャの静止で我に返り、今のラールシア軍の現状を見据え、国の為にも今は一刻も早く戦いを終わらせなくてはならないことを思い出し、怒りを心の奥へ押さえ込みながら返事の代わりに剣を鞘に戻した。


「それがお前の答えか」

そう言うとテーブルの上の地図の上に突き刺さっていた短剣を抜きとりながらランドに付け足した。


「なら一言忠告しておいてやろう。今のフィスノダは兵士を集めるのに苦労しているようだが、城の周りには盾替わりの人間が腐るほどいるからな。あいつは手に入れた体を守る為なら人間の命などなんとも思っていない。正規ルートでの侵入はありえないと思え、まっ城からの出入り口は一つじゃない。お前がそれを知っているかは俺には関係ないことだがな。せいぜい頑張るんだな」


「なぜそんなことをお前が…」

「理由を知りたいか? ならお前の後ろの王女様に礼でもいっとくんだな。親子そろって不愉快極まりない。忘れていた古傷を思いださせやがる。いいか覚えておけ、次に会った時は容赦しない。剣の継承者は一人で十分だからな。クックック」

男は不気味な笑いを林中に響かせながら林の中へ姿を消して行った。



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