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ラールノダ①

ラールシアの首都ラミドの都のすぐ東南の方角には小高い丘の頂上にスシュル湖と呼ばれている聖なる湖がある小さな森があった。


「お母様、シアフィスの森には魔物が住んでいるの?」


マルーシャは目を輝かせながら母の顔を覗き込んだ。


「どうしてそう思うのですかマルーシャ」


「あのね、この間お母様は行かなかったけれど、私、お父様とお隣の国のフィスノダ国へ行ったでしょう。その時、あの森の中で、誰かがお話しているような声を聞いたの。ほら、お母様が時々教えてくださるあの話し方によく似た言葉、だから私、馬車を止めてもらって、周りを見たのだけど誰もいなかったの。でもね、変なのよ、一緒の馬車に乗っていたグレナには何も聞こえなかったっていうのよ」


幼いマルーシャは母であるスーリア王妃の膝の上に座りながら、地平線の彼方に微かに見えている広大なシアフィスの森を指差しながらスーリア王妃にたずねた。


マルーシャは物心つく頃から、代々、ラールシア王国王家のロウェン家所有の、このスシュル湖に来るのが大好きだった。


ラミド城から程近い小さな森の頂上付近にあるこの湖周辺は木々が少なく、湖周辺にあるのは大きな大木一本だけであり、その付近には神のバラと呼ばれる虹色のバラの花がさきほこり、湖周辺は草のじゅうたんで覆われており、とても静かで穏やかな場所だった。


しかも小高い丘の森の頂上ということもあって、この場所からはラールシアが一望でき、遠く隣国のフィスノダ国の国境である南北に広がるシアフィスの森まで一望できた。  


まだ一人では馬に乗れないマルーシャだったが、暇さえあればスーリア王妃にせがんで幼馴染のランドやアルそれにルカ達と一緒に、このスシュル湖に来るのが日課のようになっていた。


「そうね…マルーシャにはまだシアフィスの森のことは話したことがなかったわね。あの森には昔からさまざまなうわさがあるのですですよ」


「うわさ?」


「たとえば、ただ木々が迷路のように茂り、大きな川が流れているだけで、そこは何もないただの森だという人もいれば、あの場所にはこの世で一番美しいと称えられていたラールノダ国の首都とキューラ城があったと信じている人もいるのですよ」


「キューラ城?」

スーリア王妃の言葉に繰り返すようにつぶやいたマルーシャにスーリア王妃は微笑みながら話を続けた。


「そうキューラ城ですよマルーシャ。ほら、あなたにいつも眠る前に読んであげているギュースの子守唄の絵本に出てくるあのお城のことですよ。あの本は、お母様の生まれ故郷に昔から語り継がれている伝説がもとになっているのですよ。遥か昔、ラールシアとフィスノダ国は一つのラールノダ王国だったという伝説。その王国の都があったとされている場所が、あそこにあるという言い伝えが残っているのですよ。だからあそこにはキューラ城がまだ実在していると信じている人が今もたくさんいるのです。あなたがあの森で聞いた声はもしかしたら、昔そこに住んでいた人々の思いがマルーシャに語りかけてきたのかもしれないわね」


「あの・・・王妃様、ラールノダ国の伝説はただの作り話ではないのですか? 誰も見た者がいないのなら、もともと存在してはいなかったのではないでしょうか? それに僕が調べた限りでは、ラミドの都にあるどの書籍にもそう言う歴史は書いてありませんでした。王妃様の故郷はどこなのですか? そこにいけば僕もラールノダのことをもっと知ることができるでしょうか?」


マルーシャの隣に座っていたランドがスーリア王妃の言葉に口を挟んできた。

そんなランドに少し驚いたような顔をしたスーリア王妃だったが、すぐもとの笑顔に戻って、ランドの方に視線を向け、真剣な表情で彼に向って語りだした。




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