新たなる誓い
太陽が真上に差し掛かろうとしていた頃、ようやくダボスがムンブラから寝台車用の大型の馬車で到着し、ジイールと、ゼルダをのせている時、マルーシャが突然叫んだ。
「ラデュル様、まだいらっしゃいますよね。私はあきらめませんから、いつかあなたを天へ帰してあげます。あなたを地に縛り付けているものから解放してあげます。だからジイールは私たちに返してもらいますからね」
「おいマルーシャ何いってんだよ、仮にも神って呼ばれている存在なんだぜ、神様を天に帰すなんて人間の俺達にできるわけないだろう?」
慌てて隣にいたルカがマルーシャに言った。他のみんなも同じように思っているようだった。
「あら、わからないじゃない、この世界で生を受けている私達にしかできないかもしれないじゃない。私達が無理でもいつか何千年後解明してくれるかもしれない。私達は未来をあきらめない。いつかフィシュス神様やイクーリア神様と共にラデュル様が天の国に行けるように。何度でも転生を繰り返せばいいじゃない。人に憑りつかなくても、自らが転生してご自分で天にいつか行けるように、私達があなた様の悲しみを探し出しますわ」
マルーシャは天に向かって再び叫んだ。
すると、ノアーヌがマルーシャの隣にくると、マルーシャの手を取ると、ノア―ヌも天に向かって声を張り上げた。
「ラデュル様、わっわたくしも探し出してみせますわ。あなた様がお探しだったフィシュス神様の証を、でっですから、お兄様をもうこれ以上傷付けるのはおよしになってくださいませ。わっわたくしはもう負けませんわ。逃げもいたしません」
「ノア・・・」
ノア―ヌの言葉に驚いた顔をしながらマルーシャはノアーヌを見た。
すると、ノアーヌは静かに語り出した。
「わっわたくし実は気付いておりましたの。お父様に憑りついていらしたラデュル様の存在を、そしてずっとバルデ城で何かを探されていたのを。だから今度は私が探し出しますわ。あなたがお探しの証を」
「ノアーヌ姫、あなた一人じゃない、俺も一緒に」
「ルカリオ様…」
「じゃあ、イクーリア神様がこの地に残したものは私達が探さなきゃ」
「なんだよそれ」
「なんとなくそう思ったのよ。キューラ城、バルデ城、ラミド城そして多分ギュース城この四つの城にラデュル神が探す何かがあるはずなのよ」
「マルーシャもう一つ忘れておるぞ」
マルーシャ達の会話に、馬車に乗り込もうとしていたアンルが言った。
「どこですのアンル先生?」
「ギロダ城だ」
「ええっ! ギロダですか?」
「そうじゃ、私達の一族はギロダにも存在しているんだよ。おそらく、ラデュル神の真実を秘めてね。さて、私も一言言っておこうかね」
アンルはそう言うと、空を見上げて大きく息を吸い込むと叫んだ。
「ラデュル神よ、私も約束しようじゃないか。あなた様の探し物をいつか必ずあなた様のもとに戻してあげますよ。今度こそ、離れ離れになってしまっているあなた様の子孫全員でね。。そうだねラムーダ」
「えっ? ラムーダがそこにいるの? ラデュル神様の子孫って?」
マルーシャが驚いてキョロキョロしていると、馬車の中からラムーダが顔を出した。
「お気づきでしたか・・・お迎えに参りましたアンル様」
「私を誰だと思っているんだい? お前さんの素性はお見通しだよ。ラムーダ・フォンデ・ギロダ、お前さんは十年前に死んだことになっているギロダ国第四王子だね。そして、お前さんもラデュル神の子孫だ」
「そこまでご存じでしたか、確かにその通りです。けれど王子はすでに死にましたよ。ここにいるのは抜け殻です。それに僕はギロダを裏切ってラールシアの味方をしてしまいましたから、もうギロダには戻るつもりはありませんので、これからもご指導よろしくお願いいたしますアンルフィア様」
そう言ってアンルの前でひざまずいて頭を下げた。アンルがラムーダの頭を撫でながら言った。
「ラムーダ、先の未来は誰にもわからないよ。ここにいる王女様の気まぐれ次第で未来はコロコロと変わっているしね。これからもこの年寄りのことよろしく頼むよ」
「ラムーダ、素敵だわ。あなたがギロダ国の王子なんて、それならギロダは大丈夫だわ。ラデュル様、ギロダもあなたの好きにはさせませんわ。いつかギロダも返していただきますわ。本当のあなた様を見つけるまで、私達はあきらめませんから」
マルーシャは目をキラキラさせながら叫んだ。
「そうだ、俺達人間をなめんなよ」
ルカはどこかにいるであろうラデュル神に向かって言った。その時突然突風が吹いて何かが囁いた
《 約束の地で待つ、われらが同志 》
「ラデュル様! 私決めたわ。あなたに私の体は上げられないけれど、あなた様がこの地に居続ける理由を必ず解き明かしてみせるわ。待っててね。私はあきらめないわ」
「マルーシャお前さんは無理だよ。ラールノダ再建っていう大仕事をしないといけないんだからね。今までのようには自由はないんだよ」
アンルがそういうと、マルーシャは顔を膨らせながら言い返した。
「あら、アンル先生、私はやると言ったらやる女よ、仲間がいるんだもの。だって、なんか悔しいじゃない。ラデュル神はこれからも永遠にこの地で存在し続けて私達の滅亡を狙ってくるんでしょ。なのに私達はラデュル神様のことを何も知らないなんて不公平だわ。ラールノダ再建もの事も私諦めないわ」
「まったくこの王女は、軽はずみにものをおいいでないよ。私達人間がどれだけ長い間苦しんだと思っているんだい。お前さんごとき小娘が簡単に見つけられるわけがなかろう」
「あら? ランナさんは知りたくありませんの?」
「は? そっそれは・・・」
「僕は知りたいです」
「そうだな、俺もなんでしつこく自分の子孫を滅ぼそうとしているのか、本当のところをしりたいよな」
「あっあのわたくし一つ知っておりますわ」
「そう知って…えっ? ノア今なんて言ったの?」
「私知っておりますのよ、ラデュル神様がこの地にとどまり続けている理由ですわ」
「なっなんだって!」
一同は一斉にノアーヌに注目した。中でも驚いた顔で立ち上がっているのはリルハーン姉妹だった。
「いい加減なことをおいいではないよ。どこで知ったって言うんだい」
「わたくしはずっとバルデ城でお父様の体を乗っ取ったラデュル神様と共におりましたでしょ。わたくし実はずいぶん昔からラデュル様の声を聴いていたんです。ただ、記憶から削除していただけで、聞こえないふりを本能がしていたのだと思います」
「ノア―ヌ女王、でっラデュルは、ラデュル神は何を探しているんだい?」
アンルはノア―ヌに向かって声を荒げた。
「ラデュル・フォンデ・アリューサ、あの方はイクーリア様とフィシュス様がこの地に残したご自身の象徴を探しているのです。そしておそらくご自分の象徴も、ただ天へと再び帰るために、あの方にとって子孫などご自分の目的のための器に過ぎないのです。ですから邪魔な物は消す。それだけですわ。全ては天に再び戻る為だけに存在しているのです」
「ちょっとまっておくれ、ラデュル・フォンデ・アリューサ?」
「象徴?」
「はいラデュル様の現世に生きていた頃の名前ですわ…わたくしもそれ以上はわかりませんが、イクーリア様の象徴はラールシアのどこにあるのかわからないらしいのですが、フィシュス神様の残された何かがバルデ城にあるのはわかっていたようですわ。ですから、それを探していらしたのですわ」
「ねえ…ノア、ラデュル神って、ラールノダ崩壊の後、バルデ城からでられなかったんじゃないんじゃなかったの?」
「はい、出られなかったのではなくてでなかったのですわ」
「なんと…」
「はあ…わしらは何をしていたんだろうね。私らが何十年もの時間を費やして苦労して探している答えをいとも簡単に解き明かしてしまうとは」
「まったくだね。だけどランナ、私らは幸せかもしれないよ」
「どうしてだい」
「私らはまだ生きてるってことだよ。私らの夢がかなうかもしれないじゃないか。お互いもう少ししぶとく生きながらえようじゃないか」
「そうだね。これからは気楽に好きなように生きるさ。じゃあ二人の女王に頼むとするかの。神様たちが天へと帰る方法とやらの解明をさ、せいぜい私たちが生きている間に見つけておくれ」
「了解しましたわ」
マルーシャとノアーヌの二人が同時に返事をした声を聞いて、アンルとランナは顔を見合わせて大きく頷くと、ラムーダとサミュ、それにギーダを馬車にのせるとムンブラへと向かって馬車に乗り行ってしまった。後に残ったマルーシャはノアーヌと共に、いったんはラミド城に行き、ノアーヌはそこで数日間体の疲れを癒すと、ルカの護衛のもとバルデ城へと戻って行った。
マルーシャやランド達は、それから城の修復や都の復興に忙しい毎日を過ごした。バルジ国からも大量の資材が連日のように運ばれてきており、復旧はめざましい速さで行われていった。
聖なる神が住むというスシュル湖に再び聖なる水が満たされた頃、ラールノダ王国の再建が全世界へと通達された。
そして五年後、ラールノダ王国に新たな女王が誕生した。
完
祈り
人が恐れしかの場所で
遥か彼方より祈りの唄声がこだまする
赤と緑の宝玉が揃いし時、我を聖なる場所に導きたまえ
我の手の内にある光と輪の絆と共に
我は見たり
己に課せられし運命の壁に立ち向かおうとする若者たちを
困難な状況下でもなお
友と肩を組んで笑う若者達を
今こそ立ち上がるのだ
希望の光を放つ光の子らよ
我が祖国の来世に変革の火を掲げよ
ラールノダの忌まわしき
呪いの炎が希望の炎に変わりし時
失われし絆が再びかの地で集うであろう
引き裂かれしルーフ・ラズレーンの名の元に
来世に光をもたらす四対の剣
いつかかの地で交わりし時
再び時が動き出すだろう
光と闇の歌声が彼方の来世で交わりし時
悲しき戦いが再び起こるであろう
終焉の鍵は来世で輝く四つの光と
全てを照らす大きな赤い宝玉
ルーフ・ラズレーンの歌声が遥か彼方の来世で奏でられし時
悲しき伝説に終止符が打たれるであろう




