騒動の翌朝
昨日色々あって疲れていたせいか、私は翌朝までグッスリと眠り、外から聞こえて来るチュンチュンという鳥のさえずり声で目を覚ます。
普段の休日であれば昼前まで寝ている事が多い私にしては早起きだった。
ベットから起き上がり、伸びをしたところで体中に激痛がはしる。
「ぐっ、いた、いたたたたっ・・・」
全身に筋肉痛のような痛みが襲ってきた。
いくら昨日走り回ったとはいえ、全身筋肉痛になる程では無かったはず。
他に思い当たるのは、魔王関連ぐらいなので直接本人?に聞いてみることにした。
「この全身の筋肉痛について、何か知らない?」
いつのまにか机から落ちていた魔導書兼魔王が答える。
『知らねえよそんなこと・・・とおもったが、それは急速回復の代償だな。憑依時に魔力を無理やり回復させたからな。おそらく今日一日はその痛みでまともに動けないと思うぞ』
と意外にもあっさり答えてくれた。
「えっ、今日一日このままなの。今日は魔導具についてさらに調べようと思ってたのに・・・」
そう答えたところで、ぐ〜とお腹が鳴る。
体中が痛くて動くのが億劫だけど、食事を取らないわけにもいかない。
動くたびに痛む体を無理やり動かし朝食を用意する、とは言っても体が痛すぎて簡単にパンを焼く程度だけど。
ついでに落ちていた魔導書も机の上に戻しておく。
『そのパンを取り出した箱は何なんだ?』
朝食の準備をしていると、そう魔王が質問をしてきた。
「箱?この『冷蔵庫』の事?」
『冷蔵庫というのかその箱。それ含め、この部屋にあるいくつかの物から魔法の反応を感じるが、昔は無かっただろう?何なんだ?』
その言葉に、私は知っている知識をフル活用して魔王に説明を始める。
「フッフッフ、よくぞ聞いてくれました!これらこそ、この街ゼールカラの偉大な発明品、一般向け魔導具の数々!魔導石に魔法陣を記録させ、魔力をエネルギーとして動く機械。これまでわざわざ魔術師に頼まないといけなかった事も、魔導石に魔力を込めるだけで使えるようになる優れ物。これまで魔術師が使っていた魔導具を、魔法陣で制御出来る事がわかってからここ20年ぐらいで急速に発展してきた物で…」
とまあそんな感じで私がゼールカラに来てから、書店で購入し読み漁った本の知識と、授業で学んだこと(まだ1ケ月ぐらいだけど)を余すことなく話していく。
『わかった、分かった。もういい』
「基本的には、魔法陣に消費魔力軽減が組み込まれていて将来的には一般人の魔力でも十分動作する予定で、そのテストの一環として寮で無料で使える代わりに問題点の報告とかを色々…」
『だいたいわかったから、説明はもういい!』
私の説明を魔王の呆れた声が遮った。
「えー、まだまだ話せるのに」
正直な話、まだ全然話し足りなかった。
『全くどれだけ話す気だ。もう昼前だぞ。サッサと飯を食え』
その言葉で朝食の準備をしていたことを思い出す。いつの間にかだいぶ話し込んでしまったようだ。
だいぶ遅くなってしまったため、パンだけの手抜きメニューにいくつかのおかずを加え、朝食兼昼食を食べる。
食事を終えても結局、体の痛みは変わらないので大人しく本でも読もうかと思っていた所で、昨日先生に言われていたことを思い出した。
「そうだった。魔王、封印について他に知ってる事はないの?あるいは関係ありそうな事とか」
『ないな』と素っ気ない返事。
「その魔導書に付いている鍵のありそうな場所とかも思い当たらないの?」
『残念だが、それもわからないな。封印されてからはずっとあの部屋にいたからな。まあ、昨日の話にも出た通り、俺様を封印したアイツらは、今では勇者と呼ばれているんだろう。その末裔がそれぞれ1本ずつ管理していると考えるのが自然じゃないのか?」
「でも、それだと1本余るよね?誰か2本管理しているのかな?」
『お前…そこまでバカだったのか。6本の鍵と6人の勇者なら、一人1本ずつ管理してるだろう」
なんとなく疲れた感じで魔王が答える。
「なっ、失礼な!ていうか勇者は5人じゃないの?先生にはそう聞いたけど」
5人の勇者と魔王ってタイトルだし、あらすじ聞いた時にも6人目は出てこなかったはず。
『うん?どうやら齟齬があるな。少なくとも俺を封印したのは、6人だったぞ。俺様以外に魔王を名乗る奴はいないだろうし、誰かいなかった事にされているのか。そのお伽話とやらを一度しっかり調べた方が良さそうだな』
「うーん、街中の書店ではあんまり古い本は無いから、調べるなら、学校の図書室か、学校地下の書庫かな。でも今日と明日はお休みで学校は開いてないし、とりあえず今現在のお伽話だけでも書店で買ってこようかな」
もしかしたら、先生に頼まれて地下の書庫で探した本の中に、関係する物があったかもしれないけれど、さすがに内容までは覚えていない。
『それがいいだろう。日中であれば、襲われる可能性は低いし、最悪俺様が憑依すればいいからな』
「できればそんな状態になりたくないけどね」
そんなことを答えながら、私服に着替えて出掛ける準備を整えた。
体中の痛みに耐えながら普通に着替えるだけでもかなりの時間を要したけれど。
「よし、準備完了ー」
そういって部屋から出ようとした。
『待て!俺様を忘れているぞ』
その声で魔導書を持っていくのを忘れていることに気が付いた。
「危ない危ない。忘れるとこだった」
『完全に忘れていただろう』とそんな魔王の呆れ声が聞こえる。
多少の危険はあっても、出来るだけ早く元の状態に戻りたい私は、今できることとしてお伽話を探しに書店へ向かうのであった。
ヨゾラは魔導具オタクなので、話し始めると長い。友達にも落ち着けと窘められているとかいないとか・・・
次は9月10日投稿予定




