番外編 マロンの日常
「トカゲちゃーん!」
朝から元気な声が村に響く。
「あ、おばちゃんたち。」
「悪いねぇ、この荷物運んでくれない?」
「もちろん。」
俺――じゃなくて、トカゲちゃんは笑顔で荷車を持ち上げる。
「よいしょっと。」
「相変わらず力持ちだねぇ。」
「修行のおかげですよ。」
「ガルドに鍛えられてるんだもんねぇ。」
おばちゃんたちはケラケラ笑う。
最初に村へ来た頃は、みんな少し怖がっていた。
リザード。
つまり魔物だから。でも今は違う。
畑仕事を手伝って。
木を運んで。
壊れた柵を直して。
子どもと遊んで。
困っている人がいれば真っ先に走っていく。
そんな毎日を繰り返していたら、いつの間にか村のみんなが受け入れてくれていた。
「ありがとうね、トカゲちゃん。」
「またお願いするよ!」
「おう、トカゲ!」
「あとで丸太運ぶの手伝ってくれ!」
「いいですよ!」
男たちからもすっかり頼られている。
トカゲさんは、すごく不思議。
最初は少し怖かった。
大きな牙もあるし、見た目は立派な魔物。
でも、トカゲさんはおばあちゃんが重い荷物を持っていたら、何も言わず運んであげる。
子どもが転べば、一番最初に駆け寄る。
誰かが困っていたら、ガルドおじさんとの修行を後回しにしてでも助ける。
「やっぱりトカゲさんはいい人だよ!」
そういうとトカゲさんは変な顔をしたが、
私は思わず笑ってしまう。
だけど一つだけ。
ずっと気になっていることがあった。
「そういえば……。」
「トカゲさんって、名前ないよね?」
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