ついでと休暇と3回目と
短くなってしまった。
サンドワーム討伐から5日。
俺達は休暇の申請を終えて家にいた。
やつれた顔で休暇申請書を出すリリアナを、おっさんがとても哀れなものを見るような目で見ていたのが印象的だった。
………悪いのは巻き込んだ俺なんだけど。
リビングのソファーに寝転んで思い返すのはこの5日間のこと。
「というわけでリリアナ。お前も探索兵になれ」
「どういうわけですか!?嫌ですよ、私戦えませんし」
「大丈夫だって、鉱石採取だけだから、な」
「な、じゃありません!!お断りです!!!」
「リリアナちゃんの登録してきたよ~」
「何やってるんですか?!というか本人確認必要ですよね!?」
「ちょっと採取したリリアナちゃんの血をステータスプレートに、ね?」
「ね?、じゃありません!なんなんですかホントに!もういいですよ。行けばいいんでしょう!やれば!!何の依頼なんですか!」
「バジリスクの番とオーガの討伐」
「鉱石採取とは!?」
「ついでにやっててくれ」
「なんなんですかホントにもう!」
「二人とも~早く行くよ~?」
「うにゃああああああぁぁぁ!!!」
「オラオラどうした!!怯んでないでかかって来いよクソ蜥蜴!!!」
「なんで私も迷宮に……………ううぅ、こんなはずじゃなかったのに…………」
「アッハハハハハハハハハハッ!!ほらほら避けないと死んじゃうよ!」
「遅い弱い軟らかい!貧弱貧弱ぅ!!!」
「お二人とも落ち着いて下さふにゃああ!?しっぽの毛があああ!?」
「「死いいねええぇぇ!!」」
「………なんで私ここにいるんでしょう。分からなくなってきました」
(荷物持ち要因として)リリアナを巻き込んだ5日間で、大金貨8枚という大金を手にした俺達は休暇を満喫していた。
夕暮れ時の陽光が差し込む窓辺。
ハンモックに寝転ぶ俺を照らす柔らかな光。
微睡みの中聞こえてくる、剣呑な叫び声。
「ですから、お味噌汁に砂糖は入れませんって!」
「キノコと根菜の味噌汁を作ろうと」
「じゃあなんで、どす黒くなってるんですか!というか緑と紫の斑点のキノコって明らかにまずいやつですよね!?どこで買って来たんですかそんなもの!」
「迷宮でちょっと採取してきた」
「せめて買ってください!この根菜も真っ黒じゃないですか!どこで拾って来たんですか、こんなもの!!」
「薬師堂のアンナさんがくれたの。薬味が欲しいって言ったらこれをくれて」
「…………薬味になる根菜、ですか。珍しいですね。なんていう名前のお野菜なんですか?」
「クマコロリだったかな。難呼吸性の劇薬の素材らしいんだけど、量を間違えなければ麻酔とか痛み止めにも使えるらしいよ」
……………クマコロリ、クマコロリねぇ。
明らかにヤバいやつだな。
薬師堂のアンナさん。
まさかアビスウォーカーじゃないよな。
「もうすぐ出来上がるからお兄ちゃん起こしてきて」
「………はぁ、もういいです。呼んできますね」
近づいてくる足音。
どうする?
寝たふりでもしてごまかすか?
寧ろそれしか生き残る術がない気がする。
1回目のミートボールも、2回目の雑炊も運が良かっただけだ。
次も生きていられるとは限らない。
「レンさん。起きてください。レンさん?」
リリアナの呼び声が聞こえるが無視。
悪いがまだ死にたくないんだ。
「……………お二人の無茶に1週間も付き合わされ、挙句の果てに、たった一人で毒だと分かっている物を食えと?そうおっしゃるのですか?」
責めるようなリリアナの声。
実際俺も加担していただけに、罪悪感がえぐい。
………仕方ないか。
「分かった。俺もちゃんと食うから」
仕方なく、ほんっとうに仕方なく起き上がる。
漂ってくるえげつない臭い。
食卓に並べられた料理とは言えない何か。
通夜のような顔の二人と、何やら嬉しそうな一人。
「さぁ二人とも、たっぷり食べてね♫」
嬉しそうに言うアヤメ。
涙目を通り越して泣き出したリリアナ。
意を決して箸を手に取り………
クマコロリ………‥クマが一瞬でコロリと逝くからクマコロリ。難呼吸性の毒素を含み、取り扱いには細心の注意が必要。冬になると真っ赤な実と薄紫の花をつける。甘酸っぱいその実は嗜好品としても栄養食としても人気が高いが、多量に摂取すると心肺機能に支障をきたすことも…………。
花言葉は『悪辣』




