story No.9
「あの梨子がねぇ~」
ニヤニヤしながら愛美は言った。
夕飯のカルボナーラを食べ終わり、
企画書に目を通しながら
藤崎君とのことを愛美に話した。
『あのって何よ?』
「いや、そんなに付き合うとか恋愛とかに興味なかったじゃない?ほら、この家くれた人が初カレでしょ?で、二番目が天下のkiss-jなんて、ビックリしちゃう!」
愛美はわざとらしく目を見開いた。
『アイドルなんて分かんないけどね。たくさんのキレイな女優とかモデルとか見てるわけだから、私への気持ちも気まぐれかも…』
「恭ピーはそんな人じゃない!」
『はいはい、そう信じてるけどね…
お風呂入る』
風呂からあがると愛美が何やらゴソゴソしていた。
『風呂いいよ。何してるの?』
「なっ、何も?あっ、コーヒー入れたの」
『ふーん、ありがと』
「じゃ、入ってくる」
『うん…』
テレビをつけて20分くらい経つと、何だかさっきの愛美の行動が気になった。
何か怪しい。
キッチンへ行き何となくテーブルクロスをめくると、そこにはたくさんの紙が並べてあった。
『これ、私の企画書じゃない!』
それは紛れもなく、さっきまで私が目を通していた企画書だった。
しかも、その企画書には大きなコーヒーの染みがついていた。
『これ企画リーダー、私なのに…』
するとちょうど愛美が風呂から出てきた。
企画書を手にしている私を見て
「違うの!」愛美は言った。
「隠そうとしたわけじゃないんだけど、その…乾かそうと思って…わざとじゃないの!」
『わざとじゃない?所詮、事務員の愛美には企画書の大切さなんて分からないわよね?』
「それくらい分かる!企画書が大切なことくらい」
『分かってない!この企画書、コピーして上司にも部下にも回るのよ?これじゃあコピー出来ないし、企画自体がダメになるかもしれないのよ!?』
「…ごめんなさい」
『だいたい、愛美はいつもそう。そそっかしくて失敗して…』
「何よ!謝ったじゃない!梨子はあたしより頭も良いしキレイだし仕事も出来てアイドルと恋愛までして…
そんな言い方ないよ!
いつもあたしを見下して、企画書の大切さくらい分かってる。梨子といると、あたし、劣等感しか感じないの!」
『じゃあ、出て行けばいいじゃない!?』
「言われなくてもそうする!梨子のバカ!」
梨子はカバンを持って部屋を出ていった。
すぐに、ひどいこと言ったと後悔した。
追いかけようと思ったが、梨子が言った言葉を思い出し、足がすくんだ。
『そんな風に思ってたんだ…』
涙が頬をつたった。
静まりかえった部屋で一人たたずんでいた。




