story No.9 *愛美side*
カバンを持って走って部屋を出た。
エレベーターの中で涙が溢れ出た。
一番の友達にあんなこと言っちゃった…
もう戻れないかもしれない…
涙を拭いながら、マンションのロータリーを歩いていると誰かにぶつかった。
「ごめんなさいっ」
「ごめん。って、酔っ払いの付き人じゃん!」
藤崎君の部屋に向かう優さまだった。
「優さま~!」
「泣いてんのか?どうした?俺に会えてそんなに嬉しいか?」
首を横にふって、縦にふった。
「どっちだよ!?
何で泣いてんの?」
「…ケンカしたの」
「誰と?」
「梨子…」
「そっか。話聞こうか?」
首を縦にふると、近くの喫茶店に入った。
事情を全て話した
「あたしね、昔から頭悪くて、要領も悪くて、ドジで良いところ一つもなくて…。
いつも、何でも適度にこなしてセンスが良い梨子に憧れてたの。それが最近、嫉妬になって、そんな自分に自己嫌悪して、さっきついに言っちゃったの…」
優さまはうんうんとうなずきながら聞いてくれた。
「あたし、梨子といると自分がもっと劣って見えて、孤独感を感じるの…」
「俺も同じ…」
「えっ?」
「恭介、リーダーシップがあって、ダンスも歌もkiss-jの中で一番の上手いんだ。練習時間は俺の方が長くても、褒められるのはいつも恭介。最近ソロも出して、嫉妬と劣等感ばっか感じてた。」
「優さまも…?」
「芸能界はとくに激しいよ。仕事取ったもん勝ちだからね。恭介が大っ嫌いで無視してよくケンカしたよ」
優さまは力なく笑った。
「それで、俺仕事が嫌になって、バラエティー番組のリハサボったんだ」
「えっ?そんなことしたら…」
「プロデューサー激怒!でも言われたんだ『優さまがいなくちゃ、番組成り立たないよ!一番笑いとれるの優さまなんだから』って」
「…」
「それで思ったんだ。恭介の得意分野で勝負したって勝ち目なんてないって。自分の得意なこと見つけて、もっと磨く!そしたら恭介に勝てるとこってけっこうあると思う。」
「得意なこと…」
「だから、俺は今kiss-jの中でバラエティとCMの仕事、一番が多いんだぜ?忙しいよ、全く。それに…」
優さまは付け加えた。
「愛美ちゃん、可愛いよ?」
照れ臭そうに髪をいじりながら言った。
「えっ?」
「俺はそう思うよ。
事務員だっていいじゃん。これだけの仕事を毎日こなしてるんだって、あの高飛車な酔っ払い女に胸張って言ってやれ!」
「優さま…」
「こんな俺の話、参考にならないかもしれないけど。っま、元気出せよ!」
「…とう」
「ん?何て言った?」
「ありがとう!優さま!!」
「だから泣くなよ~。子どもかっ。てか、お前今日どうすんだよ?俺んち泊まるか?」
「あっ、どうしよう…そんな泊まるなんて出来ません!」
財布の中身を確認しようとして、カバンの中を探した。
が、財布が見当たらない。
「あっ、財布忘れた…」
「バカだなー!」
「だって、急いでたし。どうしよう…」
「有無言わず、俺んち来いよ。どーせ帰れねぇだろ?」
「でも、男の人の部屋じゃ…」
「心配すんな!俺、姉ちゃんと住んでるから」
「そういうことなら、お言葉に甘えて。」
優さまも家に泊まることにした。




