町にて(椿)
町にたどり着いたのは、もう日が傾いてからだった。
「宿を取らないとね」
明華がさっさと宿をとってくれて、わたしはただボーっとしているだけでよかった。
ありがたいと思いつつ、わたしも何かしなくてはという焦りに駆られた。
「お金は大丈夫なの?」
「うん。親がいないってことで補助が出ているから、普通に生活する分にはこまらないよ」
そうなのか……
でも、明華になにもかも助けてもらうわけにはいかない。私も頑張らないと。
「私は何をすればいい?」
明華は少しだけ考えてから思いついたと手をたたいた。
「戸籍を作ってきて」
「戸籍?私も作れるの?」
誰とも何もつながりのない私に戸籍が取得できるのだろうか。
「作っていない人が多いから、作ること自体は簡単だよ。持ってないなら作っといた方が便利だから」
そう言われて、おとなしく戸籍を作りに向かった。
「すみません、戸籍を作りたいのですけれど、」
「ああ、あっちだよ」
奥の部屋にあっさりと通された。
こんなにかんたんにいっていいものなのだろうか。
疑問に思いながら座っていると、担当してくれるひとがじろじろと眺めてきた。
「離人かい?」
「えっと、」
確かに見た目は離人だけど、人間というと玉の姫とばれてしまうからばれないようにしなければならない。
「はい、離人です」
「間があったようだけれど?」
ぎろりとにらまれて、恐ろしくなってしまった。
「すみません、離人と聞かれるとは思っていなくて」
担当の人は特にそれ以上言及してくることはなく、書類に字を書きつけていく。
何とかごまかせただろうか。
「はい、これが戸籍だよ。
これを見せればどこでも身分証明になるからね」
「国が違っても通り抜けることはできますか?」
たまに、大昔の故郷のように鎖国されている国があると聞いたことがある。
ここはそういう国なのだろうか。
「お嬢ちゃん、何を言っているんだ?」
担当の人に心底わからないという顔をされた。
「はい?」
「穢界じゃあるまいし、国に分かれているわけがないだろう?」
国に、わかれていない?
衝撃過ぎて固まっていると、会話の内容を聞きつけたのか周囲に人が集まってきた。
「すみません、変なことを聞きました」
「……お嬢ちゃん、」
ふと、手が伸びてきた。
周囲の異様な雰囲気に押されて、わたしは動くことができなかった。
そのまま肩を抑えられる。
「ほんとうに離人かい?」
響いた声はやけに冷たく、それでいて欲望に濡れた音がした。
しばし空きます。もう一この方描ききります




