第三十五話 精霊祭
朝から…太鼓が鳴る。
村全体に、村の外にまで、太鼓の音は響き渡る。
フィーシは目を覚ました。ティアから魔法の話を聞き、話し、考え、疲れて眠ってからどのくらい経ったのか。
レオ君と別れてからの記憶が曖昧だ。ご飯も食べたし、身体も拭いた。お母さんが何か言っていた気がするが、記憶に残っていない。
この音はうるさかったが、同時に心が躍る、ワクワクする。今日は精霊祭なんだ!早く行きたいと思って自分の部屋を飛び出し、食卓に向かった。
母親は忙しそうに何かを作っていた。朝ご飯は食卓に並んでいたのに。
僕はご飯を食べながらお母さんに尋ねた。何を作っているの?と。
お母さん:「今日の精霊祭の為にご馳走を作っているの、各家庭が持ち寄って皆で食べる為のね」
お母さんは続けて言った。
お母さん:「昨日上の空だったからもう一度言うけど、お父さん今日帰って来るから一緒に精霊祭行けるわよ。」
僕はご飯を食べる手が止まり、立って大喜びした。お母さんに叱られて、座ってご飯を食べた。
お母さんの顔はいつもより嬉しそうだった。僕は食べ終わった後お手伝いをして、待ちきれないお昼を待った。
村に向かう一団が居た。フィーシの父親と、護衛をする冒険者達。彼等にも太鼓の音が聞こえ始めていた。
皆知らず知らずのうちに足が早まっていく。家族に会えるから急く者と、腹一杯のご馳走を求めて急く者達。今日は精霊祭なのだ。
レオの家では、父の姿は無かった。どうやら夕方まで村の柵の監視の様だ。
少しの寂しさを感じながらレオは母親を手伝っていた。
家族と、フィーシと精霊祭を回るのは楽しみだ。ウルススも居たら、どんなに…。
涙を堪えて、僕は手を動かした。
お昼になり、村の中央に置かれたいくつも長机にご馳走が並んでいく。保存が効く、冷めても美味しいものは夜の分として倉庫に集められていく。
食事の準備が整い、柵を守っている者以外が集まってから、村長は精霊祭の開始を宣言した。
ご馳走様を食べる事に集中する人、挨拶をして笑顔を話す人、そんな人達を見て幸せそうな人。色々な人が居る中で、僕はお父さんとお母さんに囲まれた幸せな時間を過ごしていた。
お父さんは、外に行って街で交流したり、村の状況の報告といった役目をしている。
街の発展の様子を聞きに沢山の人が集まってくる。
その中でお父さんは地の大陸から船が来た事を皆に伝えた。
興奮に包まれる。皆の顔が更に明るくなる。不安だったのだ、皆の無事が。不安だったのだ、忘れられていないかが。
難しい話は分からなかったが、水の大陸周辺が死霊達の魔力により、海の生物も怪物も近寄らない安全な航海ルートになっているらしい。
地の大陸も色々あったが、好転してきているらしい。
全員を迎えに来る事は出来ないが、少しずつなら帰る事が出来るみたいだった。
ひと通り話し終わったお父さんと僕は祭を見て回った。途中でレオ君を見掛けた。
お父さんにお願いして肩車をしてもらい、レオ君とレオ君のお父さんに挨拶をする。
レオ君のお父さんは何かに気付いてレオ君を肩車した。恥ずかしがっていたレオ君も、すぐに笑顔になったのだ。
幸せな時間は過ぎて行く。平和を享受しながら。
幸せな時間は過ぎて行く。平穏を願って。
お祈りの時間になると。精霊達もだいぶ増えていた。
お祈りの後に、僕はお父さんとレオ君と手を繋いで一緒に空を見上げた。星空に混ざって、様々な色の光が見えて綺麗だった。




