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ラブ・レゾンデートル -幻想戦国恋物語-  作者: 由岐
現代編 1章 可愛い子供達
9/18

8.姫様と呼ばれてしまいました

 玄関の鍵を開けてすぐ、重治くんがこんな事を呟いた。


「……誰か居る」

「え……?」


 誰かって、誰が?

 ここには私と重治くん、そして佐吉くんしか居ないはずなのに。

 まさか……泥棒?


「瑠璃はここで待ってなよ。ボクが見てきてあげるから」

「ぼ、ぼくも行きます……!」

「お前はいいよ。足手まといになるだけでしょ」

「で、ですが……」

「いいから。じゃ、行って来る」


 買い物袋を置いた重治くんは、慎重にリビングへのドアを開ける。

 私と佐吉くんは不安な気持ちを抱えながらその背中を見守った。

 私には人の気配なんて感じられない。やはり戦国時代の人間とは感覚が違うのだろう。

 重治くんはそっとリビングに足を踏み入れる。今のところ大きな変化は感じられない。その時だった。

 ドアの隙間から風が吹き込んできた。そして、金属がカチャリとぶつかり合う音。


「なっ……!」


 重治くんの背後を取り、喉元に当てられたのは大きな刃だった。

 鎌……なのかな。長い(くさり)が風に揺れている。鎖鎌ってやつかも。忍者とかが使うやつだよね。

 ということは、あの子ももしかして……!


「……お前達は何者だ。ここはどこだ。私に一体何をした」


 すらりとした細身の男の子が、物騒な武器を突き付けてそう言った。

 危険かもしれないけれど、私は彼に数歩近付いた。

 ちらりとこちらに目を向けた男の子は、肩より伸びた癖のある黒髪が美しい、これまた綺麗な美少年だった。


「あの……と、とりあえず武器をおろして頂けませんか? 落ち着いて話し合いましょう」

「……貴女からは敵意を感じない。話し合いに応じましょう」

「良かった……!」

「その前に……」


 何とか平和的に分かり合えるかと思ったら、瞬きをしたほんの一瞬の内に彼が姿を消していた。


「その二人がどう出るかわからないので、魔力を封じ込める道具を使わせて頂きました」


 後ろから声がしたから振り返っても、また居ない。かと思いきや、風が吹いた方を見ると元居た場所に彼が居る。


「おい! 何なんだよこれ!」

「腕輪……ですね」

「それはわかってるよ! 何でボクらにこんな物勝手につけてるのかってきいてんの!」


 ぷりぷり怒っている重治くんと、困り顔で腕につけられたそれを眺める佐吉くん。

 そんな二人を放っておいて、謎の美少年くんは私を見上げた。


「えっと……佐吉くん達につけたあの腕輪は何なんですか?」


 状況が状況だったから、年下の子だと思うんだけど何となく敬語を使ってしまう。


「先程述べた通り、あの腕輪は取り付けた相手の魔力を封じる封魔の腕輪という道具です。元はとある忍びの一族が開発した特殊な術式を用いて使用する忍道具の一種で……」

「いや、そういう説明じゃなくて……何でそんな道具を二人に使ったのか、教えてもらえますか?」

「……そちらの二人からは強力な魔力を感じました。ですので、攻撃を警戒して腕輪を取り付けました。この状況でなら落ち着いて話し合いに応じることが出来ます」


 うーん。この子がどんな生活をしてきたのかわからないけど、ちょっと困った子かもしれないなぁ。

 佐吉くんと重治くんは突然魔法で攻撃してくるような危ない子達じゃないのに。


「君が言いたいことはわかりました。とりあえず、自己紹介から始めますね。私はこの家の主、松山瑠璃です」

「瑠璃姫様ですね。私は鎌之介(かまのすけ)と申します。一流の忍びとなるべく日々師のもとで修行に励む身にございます。以後お見知り置きを」


 何故私がお姫様? そして何故そこで片膝をついて跪くの?

 絶対勘違いしてるよこの子。そしてやっぱりこの子も戦国時代の子だ。


「ぼ、ぼくは佐吉と言います。こちらはしげはるさんです!」

「おい! 勝手に紹介するな!」


 自己紹介を済ませて、鎌之介くんに詳しい事情を説明してあげた。

 ここが数百年後の未来の日本であること。そして、今のところ皆が帰る方法が見つかっていないこと。いつか帰る方法が見つけられるまで、良かったらここで一緒に暮らさないかということ。

 それを話し終えると、鎌之介くんは跪いたポーズのままこう言った。


「……時を渡り、こうして貴女様と巡り会えたことは運命に違いありません。私、由利(ゆり)鎌之介。これより瑠璃姫様の忍びとして仕えさせて頂きとうございます。どうか、この鎌之介を姫様のお側に……!」

「え、ええぇっ!?」


 買い物から帰ったら、美少年忍者くんが我が家にやって来た。

 後から調べたら、なんと由利鎌之介ってあの真田幸村に仕えていた真田十勇士の一人なんだって。

 どんどんすごい子が集まってくる。ああ、また竹原さんに報告しないと。



 

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