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ラブ・レゾンデートル -幻想戦国恋物語-  作者: 由岐
現代編 1章 可愛い子供達
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15.心まで温まりました

 本当だったらあの二人に湯船で温まってもらいたかったんだけど、今からお湯を用意するには時間が掛かる。

 という訳で、私は今別の物で二人を温めてあげようと考えていた。


 重治くんに梵天丸くん──この字で良いのかな──と、かげつなお兄さん──どういう字なんだろうね──をお風呂に入れてもらっている間、私は佐吉くんと買って来たものを収納し終えた。


「また新しい人が来たんですね」

「これで今日から六人暮らしだよー。凄いよね、あっという間に大家族になってるよ」


 台所でそんな話をしながら、私は密かに焦っていた。

 布団がちょっと足りなさそうだなとか、今から夕飯作りを始めるべきだなとかも思いつつ、かなり切実な問題が見えてきたからだ。

 ……生活費、足りるかな?


 今お父さん達から貰っている諸々のお金は、私一人が生活するには十分すぎるほどに戴いている。多分今のままでもそんなに問題なく生活を続けられるだろう。

 だけど、意外とハイペースでショタっ子やお兄さん達が我が家にこんにちはしてるじゃない?

 もう何人か増えてきたら、皆の食費は勿論着替えとか食器類とか、子供が多いからおやつとか、ちょっとお出掛けする時の交通費なんかも色々足りるのかなって不安になってきたんだよ。


 それだけじゃない。私は何て言ったってオタクだ。

 ゲームも漫画もアニメもラノベも愛する、純粋な女オタだ!

 毎月本屋さんにだって買い物に行くし、新作のゲームやアニメグッズにお金を使うことも多々ある。オタ活の費用だって確保しておきたいんだよね。

 い、いや、何も全部自分の為だけに使うんじゃないからね!? 大勢で遊べるゲームだって皆で遊んだりするし、鎌之介くんはこの時代の文字を勉強する為に漫画やラノベを読み始めてたりするんだから!

 ほら、海外の人だって漫画が切っ掛けで日本語を覚え始めたって話を聞くじゃない。それよ、それ。

 だからね、この先やっぱり仕事を探さないとなー、なんて日々思ってたりもするんですよ。

 そこで不安になるのが今日みたいなパターンなんだけど。

 私が仕事で家を空けている間にまた別の子が来ちゃったらとか──私が知らない間に、皆が元の時代に帰っちゃってたりとかしてたら……さ。

 家事については鎌之介くんがウルトラハイスペック忍者だから全然心配してはいないんだけど、不安なのはさっき挙げた二つの理由なんだ。

 これはいくら悩んだところで私にはどうしようもないことなんだけどね。

 ちょっと気分が暗くなっちゃったけど、折角新しい子が二人も来てくれたんだ。頑張ろう、私!


「瑠璃ー、二人風呂に入らせ終わったけど後はどうするの?」


 ひょっこりと顔を覗かせた重治くん。

 佐吉くんも鎌之介くんもそうだけど、皆すっかり頼もしくなったなぁ。子供の成長って早いわ。


「鎌之介くんから着替えの服は貰ってる?」

「もう着せたよ。今はりびんぐで鎌之介が二人を見張ってるとこ」

「わかった。じゃあ重治くんもそっちで待ってて」

「はいはーい」


 さてと、早速買って来たアレの出番ですかな!

 さっき棚に仕舞った軽くて小さな箱を一つ手に取る。

 ぺりぺりと点線に沿って箱を開け、中から必要な数だけ小袋を出した。


「佐吉くん、お(わん)を二つ用意してくれるかな?」

「はい!」


 食器棚から朱色のお椀を出してもらって、私はそこに袋から出した例のアレを入れてポットのお湯を注ぐ。

 不思議そうにそれを眺める佐吉くんに微笑ましさを感じつつ、お箸を用意してトレーに乗せリビングへ。


「お待たせー」

「姫様、その椀は一体?」


 梵天丸くん達は大人しく正座していたので、私は安心して温かなそれを二つテーブルに置いた。


「インスタントのお味噌汁だよ」

「いん、すたん……?」


 聞きなれない単語に険しい一顔でそう言ったかげつなお兄さん。

 私より少し若く見えるけど、これぐらいの青年がたどたどしい口調になるのって、新たな扉を開いちゃいそうな予感がするよ! 可愛いねかげつなさんよ! 後で君のことも調べるね!


「うふふ、えっとね、あらかじめ下準備がされた食べ物のことをインスタント食品っていうんだ。手軽に作れる料理だから、ちょっとの時間で簡単にお味噌汁が用意出来るんだよ」

「左様ですか……。ですが、これが本当に味噌汁なのでしょうか? 俺には具の浮いた白湯(さゆ)にしか見えぬのですが……」


 まだ私達に警戒しているのか、遠目でしかそれを確認しないかげつなお兄さん。

 そこで私はニヤリと唇に弧を描きながら言う。


「そこでお箸の出番なんです! かげつなさんと梵天丸くん、ちょっとお箸で中身を混ぜてみて?」


 私の言葉通りお湯を掻き回していく二人。


「……あっ! おねーちゃんの言うとーりだ! おみそしるになったよかげつな!」

「何と、こんな作り方をするとは……」


 お椀の底で沈んでいた味噌が溶け、見る間にその姿を変えていくインスタント味噌汁に驚愕する二人。

 その近くで密かに驚く鎌之介くんや重治くん達。

 私にとっては何ら珍しいものではないけれど、戦国時代にはこんなインスタント食品なんて無いだろう。梵天丸くんのはしゃぎ様も当然だ。


「これでお腹の中からも暖まれると良いなと思ってね。ネギとわかめのお味噌汁にしてみました!」

「この具材は貴女がご用意を?」

「私はただあらかじめ切られた具材とお味噌をお椀に入れて、お湯を注いで運んできただけだよ。切ったのは私じゃないし、お味噌は小分けされた適量を入れるだけだからね。大した手間は掛かってないんだよ」

「おれ、それってかなりすごい気がする!」

「凄いという域を超えている……こんな発想、本当に未来の世界でもなければ……」


 うーん、流石にこの中で最年長であろうかげつなくんは悩んでるな。何ていうか、頭脳派って感じがする。


「とりあえず二人はゆっくりしててね。その間に私と鎌之介くんで晩ご飯の支度を始めるから、何か気になったこととか用事があったら重治くんや佐吉くんに言ってもらえれば大丈夫だよ」

「は、はあ……」

「はーい、おねーちゃん!」

「では早速料理に取り掛かりましょう、姫様」


 重治くん達に二人の面倒を見てもらって、台所へと向かう私と佐吉くん。

 すると背後で佐吉くんが得意げな様子でこう言っていて、私はにやけが止まらなくなってしまった。


「待ってください! 食事の前には、いただきますのごはんの儀式をしなくちゃいけないんですよ! いんす……いんす、たんと? のおみそ汁を簡単にしてくださった方と、これを用意してくださったるりおねえさんに感謝を伝えるんですっ!」

「ごはんのぎしき?」

「こうして両手を合わせて……ほら、お二人もご一緒にー?」


 ああもうっ、なんて可愛い子達なんだろう! ちらりと振り返ったらそこはまるでお花畑のようだった!

 今日はデザートにカップアイス付けちゃうんだからね! 可愛いは天下を獲れる!!



 

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