戦場から帰宅したい
「おいゴラァ!! 桜木ぃぃ!!」
「……はい?」
突然響いた怒声に、現実へ引き戻される。
やばい。
血管が切れそうな勢いで名前を呼ばれている。
「テメェの範囲内だろうが! このクソ怪物の動き止めろ! 殺す気か俺を!!」
「口悪……」
思わず呟く。
まぁ、言いたいことは分かる。
目の前では大型の怪物が暴れ回り、前衛が押され始めていた。
「あー……帰りたい」
本日何度目か分からない本音が漏れる。
俺はため息を吐きながら、その場にしゃがみ込んだ。
そして地面へ手を触れる。
《伸びろ―拘束》
次の瞬間。
足元の草がざわめいた。
まるで意思を持ったように伸び、絡み合い、巨大な蔦へ変化する。
数本の蔦が怪物の足へ巻き付き、その動きを完全に止めた。
「野郎ども!! 今だ!!」
リーダーの声が響く。
前衛たちが一斉に飛び込み――
一撃で怪物を仕留めた。
「帰りたい」
今日だけで何回目だろう。
「まぁまぁ、あと少しですから頑張りましょうよ」
隣で笑う男が、いつものように怪物の残骸を片付ける。
「それにしても、桜くんって本当に便利」
「……それ褒めてる?」
「もちろん。範囲も広いし、拘束力も強い。おかげで僕たちはかなり楽できますから」
……他人事だと思って。
視線を向けると、少し離れた場所では別の男が雄叫びをあげながら大剣を振り回しながら怪物を真っ二つにしていた。
元気だなぁ。
俺はその光景を眺めながら、また一つため息を吐いた。
――全ての始まりは、1ヶ月前。




