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アパート二階にトラックが降ってきて転生!ハズレスキル『100円ショップ』の日用品チートで建国王へ成り上がる   作者: 月神世一


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EP 4

【常連客】T-SWATの休息と、赤マルと缶コーヒー

午前3時。

太郎国・アルクス城下町の中心に位置する『タローソン』。

その白く無機質で、それでいてひどく安心感のあるLED照明の光は、暗闇を歩く者にとっての灯台だった。

『ウィーン……タラタラッタララン♪』

陽気な入店音と共に、自動ドアが開く。

全身を漆黒のタクティカルベストで包み、目深に被ったキャップの下に偏光サングラスを光らせた男――T-SWAT隊長の鮫島勇護は、店内に足を踏み入れた瞬間、深く息を吸い込んだ。

「(……ああ、この匂いだ。フライヤーの油の匂いと、微かな消毒液の匂い。ロス市警時代、深夜のパトロール中に立ち寄ったダイナーやガソリンスタンドを思い出すぜ)」

異世界アナステシアに転生し、魔法と剣が飛び交う世界で孤独な特殊部隊長を演じている鮫島にとって、ここは唯一「地球(故郷)」を感じられるオアシスだった。

「いらっしゃいませ。お疲れ様、鮫島くん」

レジカウンターの奥から、ストライプのエプロンを着た太郎が気さくに声をかける。

その横では、アルバイトのリーザが立ったまま白目を剥いて爆睡し、「むにゃむにゃ……廃棄のから揚げ弁当、いただきまーす……」と口から一筋のよだれを垂らしていた。

「……赤マル(マルボロ)を一つ。それと、微糖の缶コーヒーを頼む」

「はいよ。赤マル一箱と缶コーヒーで、銀貨一枚ね」

太郎が虚空に手をかざし、ユニークスキル『100円ショップ』の亜空間から、見慣れた赤い箱のタバコと、100均の缶コーヒーを取り出してコイントレイに置く。

鮫島は銀貨を無造作に弾き飛ばして支払い、その場で缶コーヒーのプルタブをプシュッと開けた。

「ふぅ……。五臓六腑に染み渡るぜ。やはり夜勤の休憩はこれに限る」

「いつも防衛任務ご苦労様。外の灰皿、使っていいからね」

「助かる」

鮫島がタバコを咥え、店の外の喫煙スペースへ向かおうと背を向けた、まさにその時だった。

ガシャァァァァンッ!!!

タローソンの自慢の自動ドア(強化ガラス製)が、外からの暴力的な蹴りによって木っ端微塵に砕け散った。

飛び散るガラス片を踏み躙り、店内に乱入してきたのは、薄汚い革鎧を着た三人のチンピラ冒険者たちだった。手には物騒な蛮刀やメイスを握りしめている。

「オラァッ! 動くな! 強盗だァ!!」

リーダー格の男が、泥のついたブーツで店内の陳列棚を蹴り飛ばしながら叫んだ。

「ヒャハハハ! なーにが『24時間営業のオアシス』だ! こんな夜中に煌々と明かりをつけて、金目のもん置いてますってアピールしてるようなもんじゃねぇか!」

「おい店長! レジの金を全部よこせ! ついでに、奥のバックヤードにある食いモンも全部袋に詰めろ!!」

深夜のコンビニ強盗。それは地球でも異世界でも変わらぬ、底辺の犯罪者たちのテンプレ行動であった。

「あーあ。ドアの修理代、高いんだぞ……」

太郎がやれやれと首を振る。彼自身が動けば一瞬で終わる騒動だが、今は「しがないコンビニ店長」のロールプレイ中だ。

しかし、太郎が動くより先に、二つの影が動いた。

「……おい」

低く、地を這うような冷たい声。

レジに向かおうとした強盗たちの前に、缶コーヒーを持った鮫島が立ち塞がった。サングラスの奥の瞳が、静かな怒りに燃えている。

「ここは俺のオアシスだ。……俺の『休憩時間』を邪魔する奴は、どこのどいつだろうが容赦しねぇぞ」

鮫島が腰のホルスターから、愛銃であるKorth(NXS/Ranger)を滑らかな動作で抜き放った。

しかし、鮫島のハードボイルドな見せ場を、さらに凄まじい『殺気』が上書きした。

「……今、なんとおっしゃいましたの?」

レジカウンターの横。

先ほどまでよだれを垂らして爆睡していたリーザが、首をゴキッとあり得ない角度で曲げ、血走った目で強盗たちを睨みつけていた。

「レジの金をよこせ……? バックヤードの食料(私の明日のまかない)を奪う……?」

「あ、ああ!? なんだこの芋ジャージの女は! 痛い目見たくなかったらサッサと――」

「Love & Money(命より重いお金)と、私の食料に手を出す輩は――」

ドンッ!!!

リーザの足元のフローリングが爆発したかのように陥没した。

人魚姫特有の尋常ではない脚力と、アイドルとしての謎のバネ。そして何より「極貧生活による食と金への異常な執着」が、彼女の身体能力をリミッター限界まで引き上げていた。

「――万死に値しますわァァァァッ!!」

「なっ!?」

強盗の一人が反応する間もなく、リーザの履いていた『タローマン特売・健康サンダル』が、男の顎を真下から完璧な軌道で蹴り上げた。

バキィッ! という快音と共に、男の身体は天井までカチ上げられ、蛍光灯に激突して白目を剥いて落下した。

「て、てめェ! やっちまえ!!」

残る二人の強盗が逆上し、リーザに向けて蛮刀を振り下ろそうとする。

「チッ、危なっかしい女だ」

バァァァンッ!! バァァァンッ!!

鮫島の手元で、閃光が二度瞬いた。

放たれた魔導弾丸は、強盗たちが振り下ろそうとした蛮刀の刀身と、メイスの柄を正確に撃ち抜き、彼らの手から武器を弾き飛ばした。

左手に缶コーヒーを持ったままの、完璧な片手撃ち(ワンハンド・シュート)だ。

「ヒィィッ!? 武器が!」

「隙ありですわァァァ!」

武器を失い硬直した二人に対し、リーザがレジ横にあった『バーコードリーダー(魔導スキャナー)』をヌンチャクのように振り回し、ピッ! ピッ! と奇妙な電子音を鳴らしながら彼らの脳天に連続で叩き込んだ。

「へぶっ!」「あべしっ!」

「ピピッ! ピピッ! お会計は『地獄行き』になりますわーっ!!」

わずか十秒。

強盗たちは床に伸び、リーザが彼らの上に馬乗りになって「慰謝料! 迷惑料! 払えですわ!」とポケットを漁るという、どちらが強盗か分からない惨状が完成していた。

「……ふぅ。全く、治安の悪い街だ」

鮫島は呆れたように息を吐き、銃をホルスターに納めると、残っていたコーヒーを一気に飲み干した。

「助かったよ、鮫島くん。リーザも、店(と廃棄弁当)を守ってくれてありがとう」

太郎が笑いながら、100均の『結束バンド(極太)』を取り出し、気絶した強盗たちをサクサクと縛り上げていく。

「隊員を呼んで引き取らせる。……俺は外で一服させてもらうぜ。ドアがないから、すきま風が冷たいな」

鮫島は空き缶をゴミ箱に捨て、赤マルを咥えながら、粉々になった自動ドアの跡を抜けて店の外へ出た。

太郎が用意してくれた灰皿の前に立ち、ジッポライターで火をつける。

紫煙を深く吸い込み、夜空に向かって吐き出した、その時。

「……ん?」

鮫島の鋭い視線が、タローソンの真向かいにある広大な空き地を捉えた。

昨日まではただの更地だったはずのそこに、いつの間にか巨大な建築用の足場が組まれ、夜間作業の魔導ランプが煌々と照らされている。

そして、その足場の中央にデカデカと掲げられた、派手でけばけばしい看板の文字。

『徹底的な価格破壊! 地域最安値! 巨大スーパー【ニャングルマート】、近日ド派手にオープンやで!!』

「……太郎。どうやら、お前のオアシスに『厄介な宣戦布告』が来たらしいぞ」

タバコの煙越しに看板を見据え、鮫島が呟く。

背後から出てきた太郎もその看板を見上げ、コンビニ店長の顔から、一国の王としての静かなる闘志の顔へと変わった。

異世界における「仁義なき流通戦(資本主義の激突)」の幕が、静かに開かれようとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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