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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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299/300

EP 4

王と復讐鬼の対話

【太郎国・王城 執務室】

眉間に突きつけられた、漆黒の巨大な銃口。

その奥で渦巻く赤黒い闘気は、瞬き一つで佐藤太郎の頭部を消し飛ばす臨界点に達していた。

しかし太郎は、冷や汗一つ流していなかった。

ただ静かに、深い哀しみと虚無を湛えた龍魔呂の瞳を、真っ直ぐに見つめ返している。

「……狂人か。それとも、よほどの阿呆か」

龍魔呂が地を這うような低い声で呟いた。

死の淵に立たされながらも全く動じない太郎の態度に、彼の中の『殺し屋』としての勘が微かな違和感を覚えていた。

「よく言われるよ。でも、阿呆なりに客の顔色くらいは分かるつもりだ。……お前、すごく疲れてるだろ。肩の力、抜きなよ」

「黙れ。俺に話しかけるな」

龍魔呂の指が、引き金に深く掛かる。

「ひぃぃん……っ! やだぁ……死にたくないですぅぅ……!」

「お、お家賃払ったばっかりなのにぃぃ……!」

その時、執務室の隅のデスクの下で身を寄せ合うリリスとリーザから、抑えきれない啜り泣きが漏れた。

マグローザ漁船への恐怖と、目の前の殺鬼への恐怖。少女たちの純粋な悲鳴が、室内に響く。

「…………ッ」

瞬間。

龍魔呂の鉄面皮のような顔が、微かに、しかし確かに歪んだ。

『子供(少女)の泣き声や悲鳴』。それこそが、冷酷な殺人鬼(DEATH4)である彼を苛む、唯一にして最大の弱点。

銃口が、ほんの数ミリだけ下がる。

龍魔呂が、忌まわしい過去のフラッシュバックを振り払うように目を細めた、その一瞬の隙。

「ほら、女の子たちを泣かせちゃダメだろ」

コトン、と。

太郎はいつの間にか、執務室のデスクの上に、二つの美しい切子グラスと、ポポロ村特産の高級酒『サケスキー』の瓶を置いていた。

「な……」

龍魔呂が、再び銃を構え直す。

「立ち話もなんだし、喉も渇いてるだろ。まずは一杯どうだ? 度数45度、米と麦の甘みがガツンとくる、うちの特産品だ」

太郎は一切の警戒心を見せず、トクトクと琥珀色の液体をグラスに注いだ。そして、片方のグラスを龍魔呂へとスッと差し出す。

「……毒でも入れたか?」

龍魔呂は銃を向けたまま、氷のような声で問う。

「コンビニ店員は、客に出す商品に毒なんて盛らないよ」

太郎はそう言って、自分のグラスのサケスキーを一口呷った。

「ぷはっ。……うん、やっぱ美味いな。それに、お前みたいに強い奴なら、毒盛られたくらいじゃ死なないだろ?」

「…………」

龍魔呂は、グラスを持つ太郎の無防備な姿と、その奥で泣きじゃくる少女たちを交互に見やった。

やがて、彼はゆっくりと、しかし警戒を解かずに、二丁の銃の撃鉄を戻し、レザージャケットの奥へと仕舞い込んだ。

「……俺は客じゃない」

龍魔呂はそう言い捨てると、デスクの前に歩み寄り、太郎が注いだサケスキーのグラスを無造作に掴み上げた。

「クッ……」

一息で煽る。

喉を焼く強烈なアルコールと、その後から来る深く芳醇な吟醸香。血の匂いと硝煙に塗れた龍魔呂の身体に、極上の酒が染み渡っていく。

「……悪くない」

龍魔呂が、短くそう呟いた。

「だろ? あ、タバコ吸うか? 俺はキャスターだけど」

太郎が自分の胸ポケットからタバコを取り出す。

「……マルボロの赤しか吸わん」

「お、ハードボイルドだね。ちょっと待ってな」

太郎が『100円ショップ(海外輸入タバコも可)』のスキルを発動し、空間からマルボロの赤箱を取り出してテーブルに投げた。

龍魔呂が真鍮製のオイルライターを取り出す。

カチッ。

硬質な音が鳴り、赤い火がタバコの先端を焦がす。紫煙がゆっくりと立ち昇り、執務室の異常な緊張感が、まるで嘘のように解れていった。

「……太郎、アンタ、マジで何者なのよ……」

壁際で腰を抜かしていたルチアナが、信じられないものを見る目で太郎を呆然と見上げていた。

世界を滅ぼすほどの殺意を纏った復讐鬼を、たった一杯の酒とタバコで、ただの『疲れた男』へと戻してしまったのだから。

「さて」

太郎はソファにどっかりと座り直し、対面のパイプ椅子を龍魔呂に勧めた。

「銃を下ろしてくれてありがとう。……それで? お前が世界すべてを壊してでも取り戻したい『ユウ』ってのは、誰なんだ?」

佐藤太郎の、王としての『器』が、復讐鬼の凍りついた心を静かに解きほぐそうとしていた。

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