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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 19

給料日と、脱げない着ぐるみ

【太郎国・観光ショップ裏口(休憩スペース)】

「……ゼェ……ヒュゥ……誰か……酸素を……」

観光客の波がようやく引いた夕暮れ時。

ショップの裏口のコンクリートの地面に、ピンク色の巨大な妖精(ラッキ君)が、仰向けのままピクピクと痙攣していた。

「おう、ラッキ君。お疲れさんやで。今日は特にええ動きしとったわ。あの『斧の素振り三連発』、客がえらい喜んどったで」

デュアダロスが、分厚い札束をペチペチと掌に叩きつけながら、上機嫌なエセ関西弁で歩み寄ってきた。

「ム、ムリッス……」

着ぐるみの口の隙間から、イグニスの掠れた野太い声が漏れる。

「もう3日……俺様、3日連続でこの着ぐるみを脱いでないッス……! 汗で中がサウナ越えて『地獄の釜』状態ッス……! 一回脱がせて……おねがい、します……」

「アホ言うな。お前が着ぐるみを脱いだとこを客に見られたら、夢(という名の霊感商法)がぶち壊しやろが! もうちょっとの辛抱や。ほれ、水分補給や」

デュアダロスは、着ぐるみの口の隙間に、ストローを挿したペットボトルの水を強引に突っ込んだ。

「ズズッ……! ゴクッ……プハァ……! 生き返るッス……!」

そこへ、太郎がポテトチップスをかじりながらフラリとやってきた。

「デュアダロスさん、あんまりイグニスをこき使わないでよ。労働基準法に引っかかるからね」

「大将、この世界にそんな甘っちょろい法律おまへん。それに……見ておくんなはれ」

デュアダロスは、ドンッ! と重そうな麻袋をイグニスの横に置いた。

中からは、ジャラジャラと眩い黄金の輝きがこぼれ落ちる。

「なんやかんや言うても、こいつの頑張りのおかげで、太郎国の復興予算が完全に潤ったんや。……これは、お前の今月分の給料と、特別ボーナスや。金貨100枚(100万円相当)入っとるで」

「え……?」

イグニスは、着ぐるみの中で目を丸くした。

「ほ、本当に……俺様が、こんなに貰っていいんスか……?」

「おう。お前は立派に、自分の月収シノギのために客を守り抜いたんや。胸張って受け取れや」

「デュアダロスさん……太郎……ッ!」

エリート竜人としてのプライドを捨てて、ピンクの妖精として泥水(汗)をすする日々。その全てが報われた瞬間だった。

イグニスは着ぐるみの短い腕で麻袋を抱きしめ、中から咽び泣くような野太い声を上げた。

「うおぉぉぉん!! これで……これで明日は『豚神屋』で、全マシマシのチャーシュー麺が食えるッスぅぅ!!」

「おう、腹いっぱい食うてこい。……ただし、明日も朝6時から着ぐるみ着て出勤やからな。ニチャァ」

「鬼ッスかアンタは!!」

【太郎国・市街地復興 土木工事現場のプレハブ小屋】

一方その頃。

夕日に照らされた工事現場のプレハブ小屋の前で、一人の少女が泥だらけの顔を手ぬぐいで拭っていた。

ヘルメットを小脇に抱えた極貧人魚アイドル、リーザである。

「よく頑張ったな、リーザちゃん。細腕なのに、根性あるよ。ほれ、今月の給料だ」

現場監督のオークが、分厚い封筒をリーザに差し出した。

「あ、ありがとうございますぅ……!」

リーザは震える両手で封筒を受け取り、そっと中を覗き込んだ。

キラリ。

そこには、金貨が3枚(3万円相当)と、銀貨や銅貨が数枚入っていた。

「あ、ああ……! あああぁぁぁ……ッ!!」

リーザの瞳から、大粒の涙が滝のようにこぼれ落ちた。

「や、やりましたぁ……! 私の臓器を……腎臓を売らずに済みましたぁぁぁ!!」

「いや、基準が怖いわ!」

横で安全靴の土を落としていたキャルルがツッコミを入れる。

「だって、だって! これで、これでお家賃も払えますし……! 何より、タローマートで『パンの耳』じゃなくて……!! 『特売の食パン(白い部分)』が買えますぅぅぅ!!」

リーザは封筒を胸に抱きしめ、天を仰いで号泣した。

「目標が低すぎるよリーザちゃん!! 初任給なんだから、もっと良いもの食べなよ! お肉とか!」

キャルルが呆れながらも、優しくリーザの泥だらけの背中を撫でた。

「キュア〜!」

足元では、始祖竜トカゲも「よくやった!」と言わんばかりにリーザの足にすり寄っている。

「いいんですぅ……! 食パンのフワフワした白いところを、そのままかじりつくの……ずっと、ずっと私の夢だったんですからぁ……!!」

アイドルとしての虚栄心などとうに捨て去り、一人の「自立した労働者」として、リーザは逞しく(?)成長を遂げていた。

「さぁリーザちゃん、給料も出たことだし! 労働の汗を流しに行こう!」

「はいっ! 行きましょう!」

重労働から解放されたピンクの妖精と、泥だらけのドカタ人魚。

彼らが手にした初任給の重みと、疲労困憊の肉体が求める場所は、ただ一つしかなかった。

太郎国が誇る究極の癒やし空間(神々がいない時限定)。

スーパー銭湯『極楽の湯』である。

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