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スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


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EP 14

恐怖と勇気、そして最初の依頼

小鳥のさえずりと共に、アルクスの朝が来た。

昨夜のシャンプーのおかげで、三人の髪は艶やかで、すれ違う人々が振り返るほど良い香りを漂わせている。

しかし、太郎の顔色は優れなかった。

冒険者ギルドへの道すがら、彼の足取りは鉛のように重い。

(……これから、本当の戦闘をするんだ)

昨日のゴブリン戦は、馬車を守るために無我夢中だった。だが、今日は違う。自分から魔物の住処へ乗り込み、命のやり取りをするのだ。

ギルドの巨大な扉を前にして、太郎の足がピタリと止まった。

「……怖いですか? 太郎さん」

隣を歩いていたライザが、静かに声をかけた。彼女は太郎の震える指先を見逃さなかったようだ。

「……うん。正直に言うと、怖い」

太郎は隠さずに吐露した。強がっても、彼女には見透かされる気がしたからだ。

「僕はこの前まで、ただの学生とアルバイトだったんだ。喧嘩もしたことないし、怪我をさせたこともない。なのに、武器を持って殺し合いに行くなんて……足がすくむよ」

情けないと思われるかもしれない。そう覚悟してうつむく太郎に、ライザは意外な言葉を返した。

「実は……私も怖いんです」

「えっ? ライザも?」

太郎は驚いて顔を上げた。

ギルド長が認める腕利きで、クールな女剣士。恐怖など無縁の存在だと思っていた。

「はい。戦うのはいつだって怖いです。刃は痛いですし、死ぬのは恐ろしい。その感情は、何度戦場に立っても消えません」

ライザは腰の剣に手を添え、少し遠くを見た。

「けど……私が戦わないと、もっと怖い思いをする人が居る。守るべき家族や、無力な人々が傷つくと思うと……自然と身体が動くんです。恐怖よりも『守りたい』が勝った時、それが勇気になるのだと、父に教わりました」

「守りたい気持ち、か……」

太郎はライザの横顔を見つめた。

ただ強いだけじゃない。恐怖を知っているからこそ、彼女の強さは優しいのだ。

「そうなんだ……。勇気、か。偉いな、ライザは」

「そんな事はありません。私だって、まだまだ未熟者ですから」

ライザが照れくさそうに微笑み、二人の間に温かな空気が流れた――その時だった。

「はい! そこ! イチャイチャしない! 依頼を探す!」

二人の間に、サリーが割って入った。

頬を膨らませ、ジト目で二人を交互に見ている。

「もう! 昨日の夜もそうだったけど、二人だけの世界に入らないで下さい! 私もパーティーメンバーなんですからね!」

「わ、分かってるよサリー! ごめんごめん」

「ふふ、ごめんなさいサリー。行きましょうか」

三人は気を取り直して、依頼掲示板の前へと立った。

初心者向けの依頼が並ぶ「Fランク・Eランク」のボードを見る。

「薬草採取、ドブ掃除、迷い猫探し……色々ありますね」

「そうね。でも、私たちの目的は『素材の確保』と『連携の確認』よ」

ライザが冷静に分析し、一枚の依頼書を剥がした。

「パーティー最初の依頼、連携パーティープレイの確認を兼ねて、ゴブリン退治が無難でしょう。アルクス郊外の森に巣食う群れの間引き依頼です」

「ゴブリン……昨日の奴らか」

「はい。個々は弱いですが、群れると厄介です。でも、今の私たちなら決して勝てない相手ではありません」

「よし、それにしよう」

三人は受付カウンターへと向かった。

「ゴブリン討伐ですね。承りました。くれぐれも油断なさらぬよう」

受付嬢が事務的に、しかし心配そうにスタンプを押した依頼書を渡してくれた。

それを受け取った瞬間、太郎の手の中で紙が重く感じられた。これが、命を懸ける契約書だ。

ギルドを出て、太陽の光を浴びる。

太郎は深く深呼吸をして、自分の頬をパンッ! と叩いた。

「よし!」

昨日の自分とは違う。

装備もある。頼れる仲間もいる。そして、守るべき理由も分かった気がする。

この異世界で生きていくために。そして、自分を信じてついてきてくれたサリーやライザを守るために。

「勇気……か。よし! やるぞ!」

「はい! 行きましょう、太郎さん!」

「ご指示を、リーダー」

佐藤太郎と二人の少女。

新米冒険者パーティーの、最初の挑戦が始まった。

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