表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル『100円ショップ』で異世界暮らし。素材回収でポイント貯めて、美味しいご飯と便利グッズで美少女たちとスローライフを目指します  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/168

EP 1

天井から降ってきた理不尽と、ジャージ姿の女神様

コンビニの夜勤明け。深夜2時。

佐藤太郎(20歳・経済学部生)にとって、この時間は至福のひとときだった。

廃棄寸前でもらってきた白米と、冷蔵庫の余り野菜で作った「特製・野菜炒め」をちゃぶ台に並べる。アパートの壁は薄いが、この静寂と自炊の香りが、一日の疲れを癒やしてくれる。

「いただきまー……ん?」

箸を割ろうとしたその時だった。

ズゥゥゥン……と、重低音が響いてくる。

雷ではない。地震でもない。

(なんだ? トラックのアイドリング音……? 近いな……っていうか、上?)

音は急速に近づいてくる。頭上から。

いや、ありえない。ここは木造アパートの二階だ。屋根の上にトラックがいるはずがない。

バリバリバリッ! ドゴォォォォォン!!

「何だとぉぉ!?」

天井板が爆ぜ、巨大な鉄の塊が、太郎の視界を埋め尽くした。

ヘッドライトの光。そして、迫りくるタイヤ。

「う、嘘だろ……!」

グシャッ。

佐藤太郎の20年の人生は、天井を突き破ってきた4トントラックによって、あっけなく幕を閉じた。

「あ~、もしもし? 生きてますかー?」

頭の中に、間の抜けた声が響く。

「……あ、死んでるからここに居るんですよね。めんごめんご」

「う……ん……」

太郎が重いまぶたを開けると、そこは真っ白な空間だった。

足元には雲のようなモヤが広がり、目の前には一人の女性が胡座あぐらをかいて座っている。

輝くような金髪に、透き通るような白い肌。整った顔立ちは、まさしく「女神」と呼ぶにふさわしい。

……ただし、着ている服が、首元がヨレヨレになった芋ジャージでなければ。

「ここは……?」

「はい、ここは『審判の場』。私は女神ルチアナと申します」

ルチアナと名乗った女神は、ポテトチップスの袋に手を突っ込みながら、面倒くさそうに言った。

「残念ながら貴方は……そう、**『猫を助けようとしてトラックに轢かれた』**という尊い犠牲によって命を落としました」

太郎の脳裏に、最期の光景がフラッシュバックする。

自室。ちゃぶ台。野菜炒め。そして、天井から降ってきたタイヤ。

「はぁ? 猫なんて助けてねぇよ!?」

太郎は思わず立ち上がってツッコミを入れた。

「トラックに轢かれたんじゃない! アパートの天井を突き破って、上から降ってきたトラックに押し潰されたんだよ! どう考えても事故だろ!?」

「あー、はいはい。細かいことはいいじゃないですか」

ルチアナはポリポリとポテチを齧りながら、ヒラヒラと手を振った。

「とにかく、私は貴方のその……『善行』? に感動しました。よって、特別措置として異世界『アナステシア』に転生する機会を与えちゃいます」

「い、異世界転生って奴かよ……ってか、話が噛み合ってない! おい! 僕が死んだの、絶対にあんたらの手違いだろ!? 上からトラックが降ってくるなんて物理的におかしいだろ!」

「はいはい、転生おめでとうございまーす」

ルチアナは太郎の抗議を完全にスルーした。

彼女の背後に、ゲームのウィンドウのような半透明のボードが浮かび上がる。

「異世界転生するにあたって、『言語理解』のスキルと……あとこれ、ユニークスキル『100円ショップ』を授けます」

「……は?」

太郎は怒りを忘れて呆然とした。

「何だよ? 100円ショップって。もっとこう、『剣聖』とか『全属性魔法』とか、そういうチート能力じゃないのか?」

「はい。その名の通り、地球の100円ショップの商品を取り出せる優れ物です」

ルチアナはドヤ顔で説明を続ける。

「使用には『交換ポイント』が必要ですけど、まぁ利用すれば分かることです。これは使い方次第で、勇者や英雄になれる可能性を秘めているんですよ? 多分」

「『多分』って言ったぞ今! それだけ? 僕は喧嘩なんてした事ないんだぞ!? 魔法とか魔物がいる世界に、雑貨だけで放り出されるのかよ!」

「あー、もううるさいなぁ……」

ルチアナはため息をつくと、空になったポテチの袋をポイ捨てした(袋は光の粒子になって消えた)。

「わかりましたよ。可哀想だから(笑)、異世界転生特典として1000ポイント、ボーナスしときますよ、佐藤太郎さん」

その口元は、明らかに小馬鹿にしたように歪んでいた。

「では、良い異世界転生を~」

女神が指をパチンと鳴らす。

太郎の足元がいきなり抜け、真っ逆さまに落下する感覚が襲った。

「何を笑ってんだよ! ふざけんなよ、テメェェェ!!」

「はいはい、いってら~」

遠ざかる太郎の絶叫と、女神の気の抜けた声が交差する。

こうして、佐藤太郎の異世界アナステシアでの第二の人生は、理不尽と怒り、そして「100円ショップ」という謎の能力と共に幕を開けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ